小川フミオのモーターカー

軽量、操縦性優先のピュアスポーツカー ロータス・ユーロッパ

英国の自動車人の才気煥発(さいきかんぱつ)ぶりを象徴するモデルが、「ロータス・ユーロッパ Europa」(※)だ。1966年に、欧州大陸専用に発売されたユーロッパは、世界初の量産ミドシップスポーツカーである。

(TOP写真:グランプリマシンとのつながりを感じさせる車体色のユーロッパスペシャル)

独自のシャシーフレームに合成樹脂製のボディー。スポーツカーはなにより軽量であれという、ロータスのオーナーでありエンジニアであった故コリン・チャプマンの信念にしたがって、車重をそぎおとしていた。

スポーツカーを市販して、それでレースの資金をかせぐため、英国より大きな欧州の市場を相手にしようと、まず左ハンドルが生産された。追って米国向けのモデルも作られる。当初はコストの点から後回しになっていた、自国用の右ハンドル仕様が作られたのは69年だった。

もうひとつの“割り切り”はエンジン。初期のモデルに搭載されていたのは、ルノーの量産車用の1.5リッター。欧州製の部品を使うことで関税を回避する目的も大きかったようである。

※日本では「ヨーロッパ」と書かれることが多いが、本連載ではユーロッパと記載する

エンジンフード左右のフィンはオリジナルデザインより少し削られて斜め後方の視界をよくしている

エンジンフード左右のフィンはオリジナルデザインより少し削られて斜め後方の視界をよくしている

ユーロッパ発売当時、英国は欧州経済共同体(EEC)への加盟を望んでいたものの、仏のドゴール大統領(当時)は英国の加盟に乗り気でなく、なかなか認められなかったのだ(欧州共同体(EC)になってから73年に加盟)。

たとえルノーのエンジンでも、車体が軽くて、かつシャシーの設計がよければ、エンジンが多少非力だろうが、立派なスポーツカーは作れる。軽量、操縦性、そしてエンジン……これがロータスによる優先順位だ。

はたして、出来上がったのは、狙い通りのスポーツカーだった。66年のシリーズ1では、シートの位置は変えられない、サイドウィンドーも開かないという徹底ぶり(すべて軽量化のため)。

ユーロッパの面白さは、中身からデザインされたことだ。車高は1090ミリとかなり低いものの、フツウのエンジンはそこまで低く搭載できない。そこでキャビン背後のエンジンルームは盛り上がり、まるで四角い弁当箱を背負っているように見える。

シャシーを作って、その後、ボディー外板をかぶせたため、通常なら、かなりカッコ悪いクルマになっても不思議ではない。しかし、ユーロッパはご覧の通り、機能的であってもスタイリッシュで、全長は4メートルに満たないのに存在感がある。デザイナーであるロン・ヒックマンの手腕が発揮されたのだ。

ただし、ルノーの78馬力エンジンでは、サーキットの直線を含めて、非力感があるのは否めない。軽量化を推し進めたシャシーを含めて、当時の競合であったイタリアのアバルトのエンジニアからは“(ユーロッパは)設計はよくても非力でガラス細工みたいだ”などと揶揄(やゆ)されていたようだ。

というわけで、米国を含めて世界市場でより大きな成功を収めるためにも、パワフルなエンジンが必要とロータスでは悟る。71年に、フォードの部品を使いながら自社開発のDOHCヘッドを搭載した105馬力の1.6リッターユニットに置き換えられた。

ユーロッパは75年まで生産された

ユーロッパは75年まで生産された

翌72年にはさらに126馬力へとパワーアップ。最終型の「ユーロッパスペシャル」はフォーミュラワンのチーム・ロータスと同じJPSカラー(黒字にゴールドのピンストライプ)を持っていた。

ユーロッパ(ドイツなど一部の国では商標登録の関係で「ユーロップ Europe」)は当時、クルマ好きの憧れだった。開発者のコリン・チャプマンを人格化したような存在感も大きなアピールポイントである。学生時代は、ガールフレンドの家の裏庭でレースカーを組み立てていたというチャプマンは、さまざまなアイデアを持ったエンジニアであった。

ユーロッパを手がけたロータスカーズと並行して、レースを行うチーム・ロータスの活躍ぶりは、チャプマンの面目躍如である。モノコックボディーやウィングカー、さらにグラウンドエフェクトカーなど、レースで勝つために新しいアイデアをどんどん投入。ティームロータスは、1963年、65年、68年、70年、72年、73年、78年とF1でコンストラクター選手権を獲得した。

ユーロッパは後方視界が悪いなど、日常の使い勝手には多少難がある。でも、レーシングカーの知見をそこかしこに生かしたピュアなスポーツカーなのだ。同時に、グランプリで強かったロータスというブランド力が、所有欲をくすぐってくれたのである。

(写真=Lotus Cars提供)

【スペックス】
車名 ロータス・ユーロッパスペシャル
全長×全幅×全高 3980×1650×1090mm
1558cc 4気筒 ミドシップ/後輪駆動
最高出力 126ps@6500rpm
最大トルク 15.6kgm@5500rpm

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

“ひと皮むけた”ハッチバック 国内外で人気を得たトヨタ・カローラFX

一覧へ戻る

奇をてらわない、まっとうなスポーティーセダン 日産プリメーラ

RECOMMENDおすすめの記事