小川フミオのモーターカー

人間の目のように二つのカメラで事故を回避する、SUBARUアイサイトが進化

まもなくアイサイトが進化しそうだ。アイサイトとは、人間の目のように、二つのカメラを備えたSUBARUの安全技術である。その新型を体験する機会があった。結論をいうと、大変よくできている。

(TOP写真:横断者は広角カメラで検知する)

簡単に操作できて、安い(スバル車の多くに標準装備)。なのでこれまでに、スバル車ユーザーを中心に認知がだいぶ広まってきた感がある。実車で未体験の人でも、テレビドラマ「半沢直樹」でコマーシャルがよく流れていたので、既におなじみかもしれない。

ウィンドシールド上端に据え付けられたステレオカメラを使ったアイサイト

ウィンドシールド上端に据え付けられたステレオカメラを使ったアイサイト

カメラを使った安全装置というコンセプトは、1999年にレガシィシリーズのランカスターに採用された「ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)」にさかのぼる。「アイサイト」と呼ばれるようになったのは2008年だ。

「2基のCCDカメラから得た、大量の動画像データを高速処理することにより、前方の車線と複数の物体を同時に3次元認識し、ドライバーに必要な警報や、車両の制御を行うことを可能にするシステムである」

当時「ADA」搭載にあたって、SUBARU(当時は富士重工業)が発表したプレスリリースでは、上記の説明がなされている。

側方からの車両との出合い頭の衝突を避けるため新型レヴォーグではレーダーセンサーを使う

側方からの車両との出合い頭の衝突を避けるため新型レヴォーグではレーダーセンサーを使う

私は(幸い)事故回避のためにアイサイトのお世話になったことはない。ただし、テストコースで、障害物衝突回避や歩行者保護など、機能の一端を実体験したことは数回。よく働くのに感心する。220万円からの「XV」でも全車に標準装備というのが、まさに(ちょっとホメれば)SUBARUの良心だと感心させられる。

新しいアイサイトは、2020年10月に発表予定の新型「レヴォーグ」全車種に標準装備として搭載されるという。新型アイサイトの特徴は、ステレオカメラの画素数が約2倍に。センサーの画素数が、現行の「バージョン3」の1.2メガピクセルから2.30メガピクセルに増えている。

【動画】電子制御ダンパーや新しいステアリング機構などをそなえた新型レヴォーグSTI Sportプロトタイプの走行シーン

「そのため、認識する対象物の範囲が拡大します」。私がこのアイサイトを搭載した新型レヴォーグ・プロトタイプに試乗したテストコースで出会った開発技術者はそう説明してくれた。

「システムで使うカメラなどのハードウェアは外注ですが、ソフトウェアのアルゴリズムは社内で。認識ユニットも独自開発です。それによって、システムの性能を限界まで引き出しています」

システムをほぼ完全に外注するメーカーもあるなかで、アイサイトで安全に大きく寄与してきたと自負するSUBARUならではのこだわりだ。

新型レヴォーグは、新開発の1.8リッターエンジン搭載という

新型レヴォーグは、新開発の1.8リッターエンジン搭載という

新型の特徴としてあげたいのは、右前側方レーダーと左前側方レーダーがそなわる点。カメラは、自転車、対向車、横断者を検知して衝突回避のためにブレーキをかける(プリクラッシュブレーキ)機能を有する。レーダーの働きは、カメラではとらえられない前側方から現れる車両との出合い頭の衝突回避の働きをするのだ。

新型レヴォーグは11.6インチのセンター液晶ディスプレーを備える

新型レヴォーグは11.6インチのセンター液晶ディスプレーを備える

これら検知機能に加えて、ブレーキやステアリング支援システムが搭載されている。前方車両への追突回避が困難とコンピューターが判断した場合、操舵(そうだ)支援(ステアリングホイールを自動操舵して、たとえば隣のレーンに移る)を行う緊急時プリクラッシュステアリングがその一つ。

さらに、車線変更時に後方からの車両があるのに、うっかり車線変更しようとした際の衝突回避を操舵支援で行うエマージェンシーレーンキープアシストも。より強力な制動力を発揮する電動ブレーキブースターも頼りになる新メカニズムだ。

アイサイトXでは渋滞時にハンズオフアシスト機能が使える

アイサイトXでは渋滞時にハンズオフアシスト機能が使える

実際にテストコース上で、衝突回避の疑似体験をさせてもらうと、その精度に感心する。見通しがきかない四つ角で左からいきなり車両が出てきた場合、アイサイトによって車両は制動をかけ、しっかり止まる。

交差点で前方に歩行者が現れた場合も、やはり、ドライバーより早く、システムは歩行者の存在を感知。しっかり確実に車両を制動させるのだった。

ウィンカーレバーの操作のみで車線変更するアクティブレーンチェンジアシストはアイサイトXの機能の一つ

ウィンカーレバーの操作のみで車線変更するアクティブレーンチェンジアシストはアイサイトXの機能の一つ

実は、新型レヴォーグにはもう一つのアイサイトが用意される。「アイサイトX(エックス)」と名付けられた運転支援システムだ(オプションの予定)。アイサイトに加えて、高速道路走行時などにドライバーの負担を軽減することを目的としている。

アイサイトXは料金所前速度制御機能も持つ

アイサイトXは料金所前速度制御機能も持つ

センサーはアイサイトと同様、前方はステレオカメラと二つのレーダー、後方は二つのレーダーとリアソナーをそなえる。これに「3D高精度地図ユニット」が組み合わされる。

例えば、カーブ。システムが作動していると、車両が自動的に減速し、仮にステアリングホイールから手を離していたとしても、きれいなラインでコーナリングするのだ。驚くほどナチュラルな感覚といってもいい。

いわゆる「レベル2」の自動運転に相当するアイサイトXでは一定時間ハンズオフ走行をするとアラートが出る

いわゆる「レベル2」の自動運転に相当するアイサイトXでは一定時間ハンズオフ走行をするとアラートが出る

システム作動中に、高速道路でウィンカーを出すだけで、車両が隣のレーンへと移るよう、車載コンピューターがステアリングホイールをアシストする機能も、新型レヴォーグでスバル車として初めて採用される予定だそう。

「2030年に死亡交通事故ゼロ」を謳(うた)うSUBARU。操縦安定性や、車体の衝突安全性、また、大きな交通事故の際、コールセンターに通報がいく「先進事故自動通報」など、様々な取り組みを行っていることも強調された。で、新型レヴォーグの試乗記は、またの機会に(運転が楽しいクルマなのだ)。

新世代のアイサイトの基本機能の一つとして、隣の車線の死角に車両がいるのに車線変更しようとするとアラートとともにステアリングホイールの操作制御が働く

新世代のアイサイトの基本機能の一つとして、隣の車線の死角に車両がいるのに車線変更しようとするとアラートとともにステアリングホイールの操作制御が働く

(写真・動画=SUBARU提供)

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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