小川フミオのモーターカー

“これは欲しい”と思えた電気自動車 アウディe-tronスポーツバックに試乗

電気自動車がいよいよ現実的になってきた。アウディジャパンが2020年9月に発売開始した「アウディe-tronスポーツバック」に乗って、その出来のよさに、電気自動車は特別な存在でなくなったのだなあと、感心させられたのだ。

(TOP写真:アウディe-tronスポーツバック。ホイールベースは2930ミリもある)

車名のe-tron(イートロン)はアウディがBEV(バッテリー駆動の電気自動車)に用いる名称。今回のモデルは前後に1基ずつモーターを搭載して、95kWhのバッテリーはフル充電すると、405キロの航続距離を誇る。

インバーター冷却のために空気の導入は欠かせないものの、高速などでは空気抵抗を考えてシャッターが閉まるグリル

インバーター冷却のために空気の導入は欠かせないものの、高速などでは空気抵抗を考えてシャッターが閉まるグリル

BEVはこれまでに様々なモデルが日本市場に登場していて、選ぶ楽しみもある。そのなかで、最近私が感心しているのは、「日産リーフ」「Honda e」「ジャガーI-PACE」「テスラ・モデルS」といったモデルだ。どれもナチュラルな操縦感覚に加えて、BEVならではのシャープな加速感と、インフォテイメントシステムの充実ぶりが特徴的である。

そこに加わったe-tronスポーツバック。スポーツバックとは、リアにハッチゲートを備えるいわゆるファストバックスタイルのアウディ流の呼び名である。車体の大きさは全長4900ミリ、車重は2560キロ。結構重厚だ。

【動画】で見る「アウディe-tronスポーツバック」

アウディe-tronとして最初に登場したのはSUV(Sport Utility Vehicle)だ。私はそのモデルに海外で試乗したことがある。正直いうと、そのときは、あまり感心しなかった。速い。だがあまりにも速度感がないので、コーナーに自分が思っている以上の速度で突っ込んでしまい、アンダーステアといって、曲がっていくときに車体が外側にふくらみがちになってしまう。これに慣れるまでに時間がかかったものだ。

最新のQ3スポーツバックなどと共通するイメージでまとめられたスタイリング

最新のQ3スポーツバックなどと共通するイメージでまとめられたスタイリング

なので白状すると、今回、e-tronスポーツバックでも、乗る前は“あんな感じかあ”とタカをくくっていた。試乗前の技術者の説明で、“軽快に走ります”と聞いても、疑問に思っていたのだ。

このクルマがまことに気持ちよく、軽快に加速したまでは予想の範囲であるものの、たとえ小さなカーブでもすいすい曲がるのには、本当にびっくりした。目からウロコとはこのことだと、あらためて思ったのである。300キロワットと高出力のバッテリーのパワーを堪能できる。

走り方に応じて前輪と後輪の駆動力の適切な制御(通常は後輪駆動)や、アクティブエアサスペンションによる車体のコントロールも、高い操縦性に貢献しているはずだ。

クオリティー感の高いインテリア

クオリティー感の高いインテリア

しかもBEVなので、小さなコーナーの手前でアクセラレーターに載せた足の力をゆるめたとしても、次に踏み込んだときにすかさず加速する。エンジン車のように、必要以上に回転が落ちないよう、ギアを落とすなどして気を使う必要がまったくない。

“こんなにいいペースでカーブをこなしているクルマが電気自動車だなんて誰も思わないだろうなあ”とひとりごちながら、私は箱根の山道で、e-tronスポーツバックのドライブを楽しんだのだった。

かつての海外試乗では、おそらくまだ熟成が足りなかったのだろう。21年にはそのSUVタイプも日本導入されるとのことなので、あらためての試乗を楽しみにしよう。

シートの中央部は人工スエードのアルカンターラ使用で体は滑らず安定

シートの中央部は人工スエードのアルカンターラ使用で体は滑らず安定

室内は広々としている。頭上のスペースはこんな広くてどうすんの?というぐらい余裕ある。後席も乗降性がよいうえに、足元も頭上も広い空間が広がっている。

すぐに“これは欲しい”と思えたBEVだ。日本仕様は装備も豊富。アコースティックサイドガラス、プライバシーガラス、バング&オルフセン 3Dサウンドシステム、パワークロージングドアからなる「サイレンスパッケージ」、21インチアルミホイール、「カラードブレーキキャリパーオレンジ」といったオプションがある。

カメラがリアの様子を室内のモニターに映すバーチャルエクステリアミラー

カメラがリアの様子を室内のモニターに映すバーチャルエクステリアミラー

さらに、従来の物理的なミラーに代えて、カメラを使って、車両後方の様子を室内モニターに映し出す「バーチャルエクステリアミラー」もオプションで用意される。上記の装備に加え、こちらを装備した「1st edition」は1346万円だ。価格からすると、電気自動車はまだまだ特別な存在といえる(涙)。

試乗したモデルは「e-tronスポーツバック55クワトロ」。このあと、ひょっとしたら日本にも、出力は少し落ちるものの、価格的に買いやすくなる「45」(数字は出力の目安)も導入されるかもしれない。

使い勝手のいい設計のギアセレクター

使い勝手のいい設計のギアセレクター

「購入に際しては、約40万円の減税メリットを受けられ、これに加えて一般社団法人次世代自動車振興センターが交付する『クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金』の該当車両のため、40万円の補助金を受け取ることができます」

アウディジャパンはそう説明しつつ、加えて、「家庭での普通充電器の設置費用をサポートするほか、自然電力株式会社との提携により、購入者には、自然エネルギー実質100パーセントによる電力を提供するプランを用意しています」とのことである。

広々とした後席空間

広々とした後席空間

アウディはこのあとも、様々なBEVの計画を発表している。代表的なものは、3つのモーターを持つパワフルな「e-tron S」と、ポルシェのBEV「タイカン」と「J1」なるプラットフォームを共用する「e-tron GT」だ。さらに小型BEV「Q4 e-tron」もまもなく発表される。

最近のニュースで、ブガッティやランボルギーニや二輪のドゥカティを売却してまで、電気自動車路線を貫く覚悟という親会社フォルクスワーゲンの動向が報道されて、私も(手放しで喜べないなあと思いつつ)感慨深かった。時代は変わっているのである。

左のエネルギーメーターにどうしても目がいってしまう

左のエネルギーメーターにどうしても目がいってしまう

【スペックス】
車名 アウディe-tronスポーツバック55 クワトロ「1stエディション」
全長×全幅×全高 4900×1935×1615mm
電気モーター×2 全輪駆動
最高出力 300kW
最大トルク 664Nm@4500rpm
価格 1346万円

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

スポーツカーのような操縦性のモデルも スバル・インプレッサ・スポーツワゴン

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