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「サイバーパンク × 昭和レトロ」オリジナルTVアニメ『アクダマドライブ』美術監督・谷岡善王が表す世界のこだわり

アニメーション作品の世界観を構築する上で欠かせない重要な要素の一つであり、アニメで唯一“動かない”要素である「美術(背景)」。「キャラクター」がアニメの主役であるとすれば、「美術」はステージといったところだろうか。

10月より毎週木曜放送中のオリジナルTVアニメ『アクダマドライブ』は、「美術」がひときわ印象深い。「全・員・悪・玉」のキャッチフレーズ通り、“アクダマ”と呼ばれる犯罪者たちが繰り広げるクライムアクション作品だ。

本作の監督は、『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』や劇場版『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』を手がけた田口智久さん。ストーリー原案とキャラクター原案は、大人気ゲーム『ダンガンロンパ』シリーズのシナリオライター・小高和剛さんとキャラクターデザイナー・小松崎類さん。そして、アニメ制作は『おそ松さん』や『東京喰種トーキョーグール』シリーズを制作し、設立40周年を迎えたstudioぴえろが担当する。

本作の独特な世界を「美術」で表現するのは、アニメ美術背景に定評のある株式会社美峰に所属し本作の美術監督を担当する谷岡善王さんだ。美術監督とは、背景・風景などの方向性を示し、スタッフが描いた画のクオリティを管理する役割を担う。これまで劇場作品『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』を代表作に数々のアニメ作品で美術監督を務めてきた谷岡さんだが、『アクダマドライブ』は“初”の試みが多かったという。

「サイバーパンク × 昭和レトロ」オリジナルTVアニメ『アクダマドライブ』美術監督・谷岡善王が表す世界のこだわり

 

アニメの美術担当は、作品世界の方向性がある程度決まった状態から参加する場合が多い。しかし、『アクダマドライブ』では企画の段階から谷岡さんも参加し、監督や副監督とともに作品世界をつくり上げた。

「初めての経験であり、貴重な体験でした。取り組んでみたかったことでもあったので、参加できてとてもうれしかったです」

“90年代”“サイバーパンク”“ポップ”を反映させた世界観

『アクダマドライブ』の舞台は“カンサイ”。予告映像には大阪の電波塔や道頓堀らしき街並みが映っている。近未来でありながら、どこか寂れた印象を受ける世界観が特徴的だ。そんな本作の企画書には、“90年代” “サイバーパンク” “ポップ”がキーワードとして書かれていた。この企画書を見たとき、「どんな作品ができるのだろうと思った」と谷岡さん。田口監督やスタッフたちと打ち合わせを重ね、出てきたワードを拾い上げてイメージを膨らませた。さらに、大阪へ一泊二日のロケハンを決行。実際に大阪の街を一日かけて歩いて街並みの移り変わりを体感し、世界観のイメージづくりに落とし込んでいったそう。

谷岡さんは大阪の街並みを地図に起こし、そこから世界観をつくり込んでいったという。

「通常のアニメ作品は、イメージボード(ラフ)、告知映像で世界観の精度を高めるのですが、『アクダマドライブ』では、テスト映像をつくったり美術ボード(背景のサンプルイラスト)を何点もつくったりと潤沢に時間をいただけました。通常のアニメ作品以上に世界観をつくり込んでいけたと思います」

そうして完成した一番初めのイメージボードは、現在の世界観と少し異なり“レトロ”な雰囲気が強調されている。

最初のイメージボード

最初のイメージボード

「監督と話していく中で“昭和テイスト”といったワードが出てきたため、最初は古めかしい・懐かしいイメージでつくりました。ですが、これだとあまりも昭和のテイストが強すぎて、ビジュアルとしては落ち着いた印象になってしまった。オリジナルアニメなのに、これだとインパクトが薄いだろうと。そこで、田口監督から出たアイデアが劇中のシンボル的な建物として描かれている『カンサイ中央ハンコセンター』でした」

「サイバーパンク × 昭和レトロ」オリジナルTVアニメ『アクダマドライブ』美術監督・谷岡善王が表す世界のこだわり

「僕は美術監督の立場だったため、背景として描きやすい方向で進めていました。しかし、監督や副監督の笹原(嘉文)さんからぶっ飛んだアイデアをいただいて(笑)、ここまで振り切っていいんだと刺激を受けた。オリジナルアニメでタイトルも『アクダマドライブ』、あまり保守的になってもおもしろくないなと。どんな背景なら作品の世界観に相応しいかを考え、徐々に現在の方向性へと変化させていきました」

“近未来の世界”に“昭和のトレンド”を取り入れる

“サイバーパンク”といえば、映画『ブレードランナー』やアニメ『攻殻機動隊』を連想する人も少なくないだろう。谷岡さんも“サイバーパンク”と聞いたとき、一番に思い浮かんだのが『ブレードランナー』だったそう。そして、そのイメージから「いかに外れるか」を考えたという。

「みなさんが見てきた“サイバーパンク”のイメージを活かしながらも、似て非なる世界観にどう持っていくか。昭和のテイストを強く出し過ぎたせいで“サイバーパンク”が損なわれてしまった反省を活かし、“近未来の世界で昭和がトレンドになっている”という捉え方で世界観を描いていこうと決めました。これまで同じような世界観を描いた作品はなかったように思います」

”サイバーパンク”の雰囲気を感じる街並みの中には、80~90年代に使われていたような小物が多く登場する。「多少雑多でも画的にまとめていくことができれば、『アクダマドライブ』の世界観として成功だと思った」と谷岡さんは話す。近未来の中に昭和が感じられるよう、当時のトレンドを貪欲に取り入れたそうだ。

「いろんな思想をもったキャラクターが『アクダマドライブ』の世界観をつくっていきます。なので、監督や副監督、色彩設計の合田(沙織)さんの意見を取り入れたり、Cindy(H. Yamauchi)さんのキャラクターデザインを見たりして、背景に反映させていくことが美術監督の役割だなと」

「田口監督の大胆な発想はとてもおもしろい。『カンサイ中央ハンコセンター』だけでなく、大阪城を駅にするなんて……。また、最初に監督から『いろんな光の色を入れたい』とアイデアをいただいたのですが、画への落とし込み方に悩んでいたんです。そのとき、色彩設計の合田さんがつくられた色見本を見せていただいて、ヒントを得ました。色を繋げてグラデーションで表現するのではなく、色を置いてブレンドさせる手法を使って画面をつくると綺麗にまとまり、鮮やかな印象にできるなと。表現を広げるキッカケをもらいました」

これらの意見を汲み取り完成したのがカンサイを象徴する「ミナミ道頓堀」の美術ボードだ。『アクダマドライブ』の世界観の方向性を示す背景となった。そして、谷岡さんが一番気に入っている背景でもあった。

「サイバーパンク × 昭和レトロ」オリジナルTVアニメ『アクダマドライブ』美術監督・谷岡善王が表す世界のこだわり

「美術の仕事はキャラクターが芝居をしやすい環境をつくること」

さまざまな人の意見を取り入れ、試行錯誤の末に完成された『アクダマドライブ』の世界観。その中で、谷岡さん自身の持つこだわりも反映されている。それは「キャラクターが芝居をしやすい環境をつくる」ことだ。

「アニメの主人公はあくまでもキャラクターです。そんなキャラクターの邪魔をしない背景であるのが一番だと思います。どの作品でも一貫して意識している部分ですね」

 

「サイバーパンク × 昭和レトロ」オリジナルTVアニメ『アクダマドライブ』美術監督・谷岡善王が表す世界のこだわり

「とはいえ、美術として主張できる部分は主張します(笑)。キャラクターが目立ちつつ、どんなシチュエーションなのか伝わる背景が一番いいものです。バランスをいかに上手く取れるかが美術の見せ場であると思っています」

キャラクターの頭身やキャラクターが身に着ける小物、キャラクターの感情などに合わせ、背景の密度・テイスト・色味を決めていく。『アクダマドライブ』では、カンサイの“中”と“外”、大きく二つの舞台が描かれるため、話が進むにつれキャラクターたちが芝居をする環境も移り変わる。これから、どんな場所が出てくるのか今から待ち遠しい。

「カンサイの中だけでもミナミとキタでは街の雰囲気を変えています。大阪は一筋違うだけで、街の雰囲気が変わります。住宅街や高層ビルが多い街など、大阪のロケハンで実際に歩いて感じた街並みも背景に反映させています」

「サイバーパンク × 昭和レトロ」オリジナルTVアニメ『アクダマドライブ』美術監督・谷岡善王が表す世界のこだわり

オリジナルアニメならではのおもしろさ

サイバーパンクなカンサイの街並み。その中にある少しの昭和感。前述した『カンサイ中央ハンコセンター』だけでなく、『カンサイステーション(大阪城)』『カンサイ警察署(通天閣)』など、常識はずれな建物が数多く登場する。谷岡さんも「見ものだと思います」と話す。

「『アクダマドライブ』の世界は、戦争後に荒廃し植物が育たない設定です。なので、基本的に木材がない。昭和のテイストでありながら木製の建物や道具がほとんど登場しません。そんな世界の中で、木材が使われているのは、神格化された場所や権威の象徴となる場所だけ。神格化された新幹線が通る『カンサイステーション』や『カンサイ警察署』の中にある権力を持った警察署長の部屋には贅沢に木材が使われています」

副監督の笹原さんが描いた「カンサイステーション」のラフ画

副監督の笹原さんが描いた「カンサイステーション」のラフ画

「貧富の差を表現する要素として木材が使われているため、労働者階級が利用する店のテーブルは樹脂製、敷居の高いホテルのテーブルは木製といった違いもある。木製の美術は物語の中で重要な意味を持っています」

細かいポイントにも注目しながら見てみると思わぬ発見がありそうだ。最後に「『アクダマドライブ』には、オリジナルアニメだからこそのおもしろさがある」と谷岡さんは話す。

「美術だけでなく、キャラクターの持つ物語や行動が、本作の世界観を生かしています。かなり痛快なエンターテインメント作品なので、純粋に楽しんでいただけたらと思いますね」

(取材・文=阿部裕華 写真=かさこ)

プロフィール

谷岡善王(たにおか・よしお)

「サイバーパンク × 昭和レトロ」オリジナルTVアニメ『アクダマドライブ』美術監督・谷岡善王が表す世界のこだわり

美術監督。株式会社美峰所属。代表作にテレビアニメ『ダンボール戦機』『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』『アクダマドライブ』『憂国のモリアーティ』、劇場アニメ『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』など。

作品情報

「サイバーパンク × 昭和レトロ」オリジナルTVアニメ『アクダマドライブ』美術監督・谷岡善王が表す世界のこだわり

『アクダマドライブ』
<放送スケジュール>

毎週木曜 BS日テレ・サンテレビ・TOKYO MX・KBS京都・AT-Xほかにて放送中
FODにて独占配信!
BS日テレ 毎週木曜23:30~
サンテレビ 毎週木曜24:00~
TOKYO MX 毎週木曜24:30~
KBS京都 毎週木曜25:00~
AT-X 毎週木曜21:30~
*リピート放送 毎週土曜13:30/毎週火曜29:30
J:テレ「アニおび」 毎週火曜25:00~

FOD 毎週木曜23:30配信 ※#01常時無料配信中

<キャスト>
一般人:黒沢ともよ
運び屋:梅原裕一郎
喧嘩屋:武内駿輔
ハッカー:堀江瞬
医者:緒方恵美
チンピラ:木村昴
殺人鬼:櫻井孝宏
処刑課師匠:大塚明夫
処刑課弟子:花守ゆみり
ボス:榊原良子
黒猫:内田真礼

<スタッフ>
原作:ぴえろ・TooKyoGames
ストーリー原案:小高和剛
キャラクター原案:小松崎類
監督:田口智久
シリーズ構成:海法紀光、田口智久
キャラクターデザイン:Cindy H. Yamauchi
副監督:笹原嘉文
メカニックデザイン:山本翔、宮川治雄、常木志伸
美術監督:谷岡善王
美術設定:青木 薫
色彩設計:合田沙織
編集:三嶋章紀
撮影監督:山田和弘
CG 監督:藤谷秀法
音響監督:長崎行男
音響制作:デルファイサウンド
音楽:會田茂一、井内舞子
アニメーション制作:studio ぴえろ

<主題歌>
OP:「STEAL!!」SPARK!!SOUND!!SHOW!!
ED:「Ready」浦島坂田船

(C)ぴえろ・TooKyoGames/アクダマドライブ製作委員会
HP:akudama-drive.com
Twitter:@akudamadrive
Instagram:@akudamadrive_anime

 

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PROFILE

阿部裕華

1992年生まれ、神奈川県出身。 WEBメディアのライター/編集/ディレクター/マーケターを約2年間経験。2018年12月からフリーランスとして活動開始。ビジネスからエンタメまで幅広いジャンルでインタビュー中心に記事を執筆中。アニメ/映画/音楽/コンテンツビジネス/クリエーターにお熱。

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