THE ONE I LOVE

「奇をてらったわけではない」平成生まれの昭和歌謡マニア・町あかりが選ぶ“愛の歌”5曲

「奇をてらったわけではない」平成生まれの昭和歌謡マニア・町あかりが選ぶ“愛の歌”5曲

こんな時代だからこそ、愛を聴きませんか、語りませんか──。実力派アーティストが“愛”にまつわる楽曲を紹介する連載「THE ONE I LOVE」。

今回は、10月21日に昭和の流行歌カバーアルバム『それゆけ!電撃流行歌』をリリースしたシンガー・ソングライターの町あかりが5曲をセレクト。時代もジャンルもバラバラの選曲となっているが、「奇をてらわずに今すごく好きだなと感じる曲を選んだら、自然とこうなった」という。&Mでは彼女にインタビューを行い、選曲に込めた思いを聞いた。

セレクト曲

1.野口五郎「ダイヤル177」
2.岡崎体育「割る!」
3.AKB48「チームB推し(TeamB)」
4.小鳩くるみ「めんこい仔馬」
5.町あかり「とんがり帽子」

 

■野口五郎「ダイヤル177」

最近知った曲です。新宿のゴールデン街で飲んでいたときにたまたま流れてきて初めて聴いたんですけど、「“ダイヤル177”って何?」となって、その場にいたみんなで検索しました(笑)。それで、「どうやら電話で天気予報が聞けるNTTのサービスらしい」と。歌詞では、別れる間際の恋人の前で別の女性と電話しているふうを装って177に掛ける男性の姿が描かれています。「そんなんだからフラれるんだよ!」「そういうとこだぞ!」っていう感じがおかしくて。滑稽でもあり、切なくもあり。ほかにないテーマだし、曲自体もすごくよくて感動しました。

“新御三家”では、郷ひろみさんと西城秀樹さんの曲はよく聴いていたんですけど、なぜか野口五郎さんだけはあまり触れてこなくて。最近興味を持って聴くようになりまして、「ダイヤル177」以外では「オレンジの雨」もお気に入りです。すごく個性的だし、聴いたら一発で「五郎だ!」ってわかる。こういうロッカバラード的な楽曲をコブシ全開で演歌っぽく歌っちゃうあたりとか、いい意味で違和感がすごいですよね。

■岡崎体育「割る!」

私、べつに昭和歌謡しか聴かないような断絶状態ではないんですよ(笑)。意識的に最近の音楽を聴くことはあまりないですが、自然と聴こえてくるものの中に気になるものがあれば聴きます。この曲は、たしかYouTubeをさまよっていて出会ったのかな。めっちゃいい曲だし、ダサカッコいい感じもある。JINROのCMソングということもあって、“お酒愛”がすごい曲ですね。「みんなで集まって飲むよ!」みたいな歌じゃないですか。私もお酒がとても好きなので、いいなと思いました。

こんなに小気味いいリリックをあまり聴いたことがなかったので、すごく新鮮でした。これまであまりラップ系の歌い回しに耳が反応したことはなかったんですけど、これはなぜか刺さったんですよね。なんでなのかはよくわからないんですけど。この手の音楽に疎い人間からすると、「よくこんなふうに歌詞が書けるなあ」ってびっくりしちゃいます。なんか、言ってることがおばあさんみたいですね(笑)。

■AKB48「チームB推し(TeamB)」

ファンとアイドル間の愛ともいえる関係性(推し)を歌った自己紹介ソングで、歌詞がすごくいいです。キャッチーだし、ちょっとダサい感じもいい。メンバー紹介的な曲になっていて、「コンサートでこの曲が始まったら超アガるな!」って思いました。AKB48さんのコンサートには行ったことないんですけど(笑)。これもYouTubeでたまたま見つけた曲で、歌詞に「グダグダMC どうですか?」とか出てきて、「いいんだ、それで?」っていう。みんなで仲良しな感じもいいなと思いました。

私は楽曲提供のお仕事もさせていただいていて、こんなふうに複数人で歌うアイドルグループに曲を作ったこともあるんです。歌割り(歌唱パートの担当分け)がある場合は息継ぎとかを考えなくていいので、歌詞を詰め込めるんですよ。そういうところがすごく面白いなと思っていたんですけど、メンバーが辞めたりして人数が減ると歌割りが大変なことになっちゃうんですね。だからアイドルさんは途中で辞めないでほしいです。完全に制作側の都合で言ってますけど(笑)。

■小鳩くるみ「めんこい仔馬」

昭和16年(1941年)の曲ですが、最近知った私にとっては最新曲です(笑)。とにかく「馬がかわいい!」という歌で、馬への愛がすごい。私も動物好きですし、「これを書いた人はよほど馬が好きなんだなあ」というのが伝わってきてキュンとなります。私、戦時中とかその前後のことを調べるのが好きなんですよ。政治的なことではなく、人が戦時下に何を思ってどう生活していたのかみたいなことに興味があって、映画『この世界の片隅に』(片渕須直監督/2016年)とかもすごく好きで。そんな中で、「軍馬について歌った歌があるのか」みたいなことで見つけた曲だったかもしれないです。

もともとは家族のように一緒に暮らしていた馬が軍馬として徴用されていく歌なんですけど、この小鳩さんのバージョンは歌詞が変えられていて、戦争とは全然関係ないお話になっているんです。そうやって時代に応じて形を変えながら残っていく歌というのも面白いなあと思いますね。私も去年『あかりおねえさんのニコニコへんなうた』という童謡のアルバムを出したんですけど、「どんぐりころころ」とかをめちゃくちゃ替え歌にしていまして。お池にハマったかと思ったらお風呂だったみたいな……ちょっと私のは意味が違うかもしれませんが(笑)。

■町あかり「とんがり帽子」

この歌も、今回カバーアルバムを作ることになるまで知りませんでした。戦災孤児たちを描いたラジオドラマ『鐘の鳴る丘』の主題歌として作られた昭和22年(1947年)の曲で、とにかく歌詞がいいんです。「昨日にまさる今日よりも/明日はもっと倖せに」とか、悲しい思いをたくさんしてきたであろう人がそういう言葉を歌うところにグッときますね。人間愛の詰まった曲だなと思います。今回のカバーは、マーチのように始まって「聖者の行進」を挟むという謎のアレンジがされていますが、完全にアレンジャーさんにお任せだったので、なぜこうなったのかはわかりません(笑)。

そもそも昭和初期の流行歌のカバーアルバムを作ることになったのは、去年ライブで「上海帰りのリル」や「港が見える丘」などを歌ってみる企画をやったことがきっかけです。年末に参加したクラブイベントでも、「青い山脈」をめちゃくちゃ真剣に歌ってみたりとか。それらを面白がってくれたスタッフさんが「カバーアルバムを作りましょう」と言ってくれて、候補曲も100曲くらい挙げてくれました(笑)。そこから直感的に選んだり、「こういう歌も入ってたら面白いな」とか「こんな歌は歌ったことがないけどチャレンジしてみたいな」とか考えたりして決めていった感じです。

レコーディングは大変でした。こんなに頭を使って歌ったのは初めてです(笑)。自分で作った曲を自分で歌う場合は、音域もメロディーも歌い方も自分の好きにできるから自然に歌えるんですけど、今回の曲はそうじゃないので。どの曲もすごく難しくて、前もってスタジオに入っていろいろ歌い方を研究したりもしましたね。歌についてすごくがんばったアルバムではあるんですけど、「私って、うまいでしょ!」みたいな感じで歌うのは恥ずかしいことだと思っているので、そうならないようにセーブするクセがけっこう出ちゃっているとも思います(笑)。

■町あかりとは何者なのか

「奇をてらったわけではない」平成生まれの昭和歌謡マニア・町あかりが選ぶ“愛の歌”5曲

「ミュージシャン」とか「作曲家」とか、皆さんそういったカテゴリーにハメたがるんですけど、そうではない人になりたいですね。実際そうなっている気もしますけど(笑)。もともと高校生くらいの頃に歌手デビューを目指していろんなところへデモテープを送ったりしていたのですが、その際に添えるプロフィールにも「絵を描くことも好きだし、古い歌謡曲や映画『男はつらいよ』シリーズなども好きで、いろんなことに興味があるのでマルチに活動していきたい」みたいなことをすでに書いていました。その姿勢は今も変わらずですね。おかげさまで充実していますし、毎日面白くて楽しいです。現状に不満もないし、将来への不安もないです。

(企画制作/たしざん、取材・文/ナカニシキュウ)

■町あかりセレクト「THE ONE I LOVE」プレイリスト

■町あかり『それゆけ!電撃流行歌』

■イベント情報

「奇をてらったわけではない」平成生まれの昭和歌謡マニア・町あかりが選ぶ“愛の歌”5曲

町あかり 『それゆけ!電撃流行歌』発売記念
電波的流行歌放談 町あかりの歌謡曲研究所inキャラアニ

『それゆけ!電撃流行歌』の発売を記念し、無観客の配信イベントを開催。新アルバムの予約者にプレゼントされる特典ポスターにサイン&名前を入れるネットサイン会のほか、ミニライブや歌謡曲のトーク企画も。

▼日時
10月23日(金)20時~
▼出演
町あかり(秘書)、鈴木啓之(所長)、長井英治(広報部長)
▼URL
https://www.chara-ani.com/fair.aspx?id=273

「奇をてらったわけではない」平成生まれの昭和歌謡マニア・町あかりが選ぶ“愛の歌”5曲

町あかりの昭和歌謡曲ガイド
著者:町あかり
出版社:青土社
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4791772970/?tag=koshokojitsu-22

■Profile

町あかりまちあかり

1991年生まれのシンガー・ソングライター。2013年に音楽情報番組『musicるTV』(テレビ朝日系)にて綾小路翔(氣志團)とヒャダインから高評価を受けたことを契機に注目度を上げ、15年にアルバム『ア、町あかり』でメジャーデビュー。以後、コンスタントにアルバムを発表しながら独自のスタンスでユニークな活動を続ける。寺嶋由芙や姫乃たまらへの楽曲提供や、20年9月に放送終了した子供向けバラエティー番組『じゃじゃじゃじゃーン!』(フジテレビ系)で担当した童謡コーナー「あかりおねえさんのニコニコへんなうた」でも知られる。親しみやすいキャラクターと確かな歌唱スキル、不思議なワードセンスを兼ね備えた独特な楽曲で音楽シーンに異彩を放っている。

【関連リンク】

町あかり Official website
https://mcakr.com/

町 あかり (@mcakr) · Twitter
https://twitter.com/mcakr

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