小川フミオのモーターカー

大きくコンセプトを変えた5代目 トヨタカローラ・スプリンター

クルマの基本といえばセダンだった時代があり、セダンの基本がカローラの時代があった。トヨタ自動車が1983年に発売した「カローラ」は、トヨタの自信を象徴するようなモデルだ。

(TOP写真:クリーンなスタイリングの4ドア1500SEサルーン)

特徴は、4代目から4年半ぶりのフルモデルチェンジで、後輪駆動から前輪駆動方式へと変わったこと。もう一つは、「スプリンター」だ。販売系列の対策で設定された同車が、単なる名前だけでなく、まったく異なる専用ボディーを持って登場したのである。

内装は機能的であっても美的ではないのが残念

内装は機能的であっても美的ではないのが残念

5代目カローラは、アカ抜けたスタイルだ。ハイデッキといって、高さがある一方、前後長をやや短めに抑えたトランクを持つスタイルは、フォルクスワーゲン(81年のダービー)やアルファロメオ(77年のジュリエッタ)をはじめとする欧州セダンの向こうを張るものともいえた。バランスもよい。

ホイールベースは30ミリ伸びただけとはいえ、駆動方式の変更によりパッケージングが向上。室内空間には余裕が生まれた。これもセダンとして王道のモデルチェンジといっていいだろう。

前輪駆動化で室内空間が広々とした

前輪駆動化で室内空間が広々とした

一方、スプリンターは、同じセダンボディーでも、カローラとは異なるデザインが採用された。セダンと比べると、カローラは後席用ドアの後ろのリアクオーターピラーにウィンドーを持たない“4ライト”スタイルなのに対して、スプリンターはそこにガラスをはめこんだ“6ライト”だ。

これは結構衝撃的だった。4ライトか6ライトかは、通常、メーカーが確固たるポリシーの下に決めると思っていたからだ。一般的に4ライトはドライバーズカー、自分で運転するクルマのデザインというのが通例だった。

カローラ5ドア1600ZX

カローラ5ドア1600ZX

例えば、メルセデス・ベンツ、BMW、アルファロメオ、プジョーなどは4ライトにこだわってきた。運転して楽しめるクルマを作っているという自負があるからだ。

一方、アウディやルノーはウィンドーグラフィックス(サイドウィンドーのかたち)が美しくなることもあり6ライト派。どっちつかずが、このカローラとスプリンターだったのだ(笑)。

このモデルチェンジで印象的だったのは、「5ドアハッチバック」と呼ばれるファストバックの設定である。大きなテールゲートを持つ車体は、これもまた、実用性を重んじる欧州のセダンによくあるスタイルといえる。

5ドアでは灯火類をバンパーぎりぎりまで下げてハッチゲートの開口部を大きくするなど使い勝手を追求

5ドアでは灯火類をバンパーぎりぎりまで下げてハッチゲートの開口部を大きくするなど使い勝手を追求

4代目まではクーペ的な車体バリエーションだったのに対して、カローラシリーズは大きくコンセプトを変えたのだなあと感慨深かった。

内装は外観のイメージと合わなかった。定規で描いたような直線基調で、スイッチ類のベース盤は決まって黒。車種間での流用が多いので、こうなってしまうのだけれど、ここも外観のイメージに合わせた専用デザインだったら、と残念に思ったものである。

この5代目のカローラ・シリーズで、さらに特筆すべきは、車種バリエーションが多かったことだ。

エンジン横置きの前輪駆動でスペース効率がよくなることをアピール

エンジン横置きの前輪駆動でスペース効率がよくなることをアピール

ここで触れたとおり、カローラとスプリンターのデザインを変えたことに加えて、ハッチバックのカローラFX、RVと当時は呼ばれたステーションワゴンの変形のスプリンターカリブ、スポーツ志向の後輪駆動のカローラレビンおよびスプリンタートレノといった具合である。

バリエーションが多様化したのは、消費者の好みが多様化しはじめていたからだ。クルマといえばカローラ、車型といえばセダン、という時代はこのころ終わりつつあり、自動車メーカーは新しい時代を迎えようとしていたのである。

(写真=トヨタ自動車提供)

【スペックス】
車名 トヨタ・カローラ4ドア1500SEサルーン
全長×全幅×全高 4135×1635×1385mm
1452cc 4気筒 前輪駆動
最高出力 83ps@5600rpm
最大トルク 12.0kgm@3600rpm

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

優雅なスタイル、時速343キロのスポーツカー ジャガーXJ220

一覧へ戻る

目を見張ったスタイリングと動力性能 3代目三菱ギャランΣ(シグマ)

RECOMMENDおすすめの記事