THE ONE I LOVE

「“みんなが求める自分”から解放された」山本彩が選ぶ愛の5曲

こんな時代だからこそ、愛を聴きませんか、語りませんか──。実力派アーティストが“愛”にまつわる楽曲を紹介する連載「THE ONE I LOVE」。

今回は、10月28日にニューシングル『ゼロ ユニバース』をリリースしたシンガー・ソングライターの山本彩が5曲をセレクト。国民的アイドルグループの中心メンバーだった彼女の音楽のルーツを追うように、幼少期・思春期・NMB48在籍期・ソロ期に大切に聴いてきたという楽曲が選ばれている。&Mでは山本にインタビューを行い、各楽曲にまつわるエピソードと、それらが“アーティスト・山本彩”にもたらしたものを聞いた。

セレクト曲

01. 宇多田ヒカル「Automatic」
02. Avril Lavigne「Sk8er Boi」
03. ELLEGARDEN「ジターバグ」
04. 雨のパレード「Ahead Ahead」
05. 山本彩「愛なんていらない」

■宇多田ヒカル「Automatic」

初めて買ったCDがこの曲でした。小学校1年生か2年生の頃に音楽スクールに通い始めたんですけど、そこで課題曲に指定されたのが、小さい子には難しいこの曲で(笑)。歌の練習のために買って聴いていました。宇多田ヒカルさんの曲ってリズム的にもあまり日本人にはなじみがない感じですし、英語の歌詞も当時の私には難しかった。意味はわかっていなかったです(笑)。当時は自分がうまいとかヘタとかもわからないまま精いっぱいやってたのに、のちに両親から「めちゃくちゃヘタやった」と言われた思い出がありますね(笑)。

これをわけもわからず練習していた幼少期があるおかげで、鍛えられた部分はあるかもしれないです。ボーカルレッスンの先生から「ビブラートのかけ方が宇多田さんと同じだね」って言われたことがあるんですけど、自分ではまったく意識していなくて。自然と身についたものだと思います。今改めて「Automatic」を聴くと、もちろん思い出があるので懐かしさはあるんですけど、すごく最近っぽさも感じます。色あせることがない曲ですね。

 

■Avril Lavigne「Sk8er Boi」

小学校5年生のときにギターを始めたんですけど、それは完全にアヴリルの影響でした。なのでアコースティックギターではなく、最初からエレキギターだったんです。バンドスコア(楽譜)も買ってもらって、最初に練習した曲がこの「Sk8er Boi」。そんなに難しくはないので、これからギターを始める初心者の方にもオススメしたい曲ですね。でも歌は難しくて、まず全部が英語なので(笑)。お母さんに歌詞をカタカナに起こしてもらって、それを歌っていました。ただ、この曲に触れていたおかげかヒアリングは得意になりましたし、英語の授業も好きでしたね。

エレキギターをかき鳴らして歌う女性アーティストが当時はほとんどいなかったですし、かわいいのにカッコいいところや、ファッションアイコン的な存在だったりするところなど全部が新しかったし、全部をマネしてました(笑)。今でもエレキギターを使う女性アーティストはアコギに比べると少ないと思いますし、私はレスポールをメインギターにしているんですけど、そんな楽器を使っている人はもっといない(笑)。そこは自分らしさなのかなと思ってやっています。

 

■ELLEGARDEN「ジターバグ」

グループ時代に一番心に響いた曲です。もともとオーディションを受けたときから「将来はシンガー・ソングライターになりたい」という思いがあったので、グループとして活動する中で将来のことを考えるようになってくると、“卒業”というものが常に頭の中にありました。でもなかなか決心がつかなかったときに、この曲の歌詞が「まさに今の私だな」と。「たった一つのことが今を迷わせてるんだ/数え切れないほど無くしてまた拾い集めりゃいいさ」という部分が卒業のことで迷っている自分と重なって、「グループを辞めていろいろ失ったとしても、そこで終わりじゃない。またつかみ取っていきたい」と思えるようになったんです。そんなふうに生き方をストレートに歌ってくれる、代弁してくれるようなところには、ソングライターとしても大きな影響を受けていると思います。

私はけっこう「みんなが求める自分でいなきゃいけない」と思ってしまうところがあったんです。自分を飾ってきたというか、そもそもアイドルとはそういう仕事だという面もありますし。ELLEGARDENにはそういうところがまったく見えなくて、飾らずにそのままを見せるし、歌いますよね。そんな自分とは正反対なところに憧れがありました。今は私もだいぶ解放されてきて、最近は自分の好きなようにやっていることを「いい」と言ってもらえるので、すごくうれしいなと思っています。もっと好き勝手に作った変な曲とかを出しても、今だったら受け入れてもらえそうな気はしますね(笑)。

 

■雨のパレード「Ahead Ahead」

ソロになってからめちゃくちゃ聴いていた曲です。それまではロックロックしたものばかりを好んで聴いてきたので、そうではないアーティストさんでここまでいいなと思ったのは本当に久しぶりで。以前一緒にお仕事させていただいたLUCKY TAPESさんとの対バンライブを見に行ったのが最初で、そのときまで1曲も聴いたことがなかったんですよ。でも、ステージを見たら全部が刺さって。とくに音の部分ですね。打ち込みっぽいのに生っぽさもあったり、音源では抜いた感じで歌っているように聴こえるのにライブではすり切れるような歌い方をされていたり。MCのときの脱力感とか(笑)、カッコいい演奏との高低差もよかったんです。

そのライブから帰ってすぐに作品を買って、聴きまくっていました。「ここでこういう打ち込みを使うんだ?」とか、「この音、どうやって出してるのかな?」とか、作る側の視点でも気になることがすごく多いアーティストだなって。雨のパレードさんを聴くようになってから、生バンド以外のよさもわかるようになったと思います。自分の作品でも最近はエレクトロ寄りの曲をやっていたりするんですけど、「そういうのもありだな」って思ったきっかけのひとつではありますね。

 

■山本彩「愛なんていらない」

ニューシングル『ゼロ ユニバース』のカップリング曲です。選曲テーマが“愛の曲”ということなので、表題曲ではなくこちらを選びました。けっこう愛を否定してしまっている曲なんですけど(笑)。グループでデビューしてから約10年間、私はこの仕事が本当に好きで楽しくて、いつも最優先してきました。世の中には幸せな恋愛をしている人がたくさんいて、それをうらやましく思うところもありつつ、「私はそういうんじゃない」とも思っていて。仕事にすべてを捧げている自分だからこそ好きになってもらえているんだろうし、「誰もいなくてもなんとかやれているから、私は大丈夫です」みたいな思いをずっと歌いたかったんです。もともと恋愛が禁止される特殊な仕事をしていたこともあって、それをどこまで言っていいのかわからなかったんですけど、もういいかなって思えるようになって。とても素直な気持ちを歌えたと思います。

私はもともとそんなに恋愛ソングをめちゃくちゃ聴くタイプではなかったですし、あまり“恋愛”に限定せず、いろんな形の「愛」を歌っていきたいですね。自分にとっては、むしろ恋愛の歌を書くことのほうが背伸びをしている感覚がまだあって。無理して書くのも違うと思いますし、書きたいと思ったときに書ければいいかなと思っています。ちなみにですが、この「愛なんていらない」のアレンジがめっちゃOasisの「Whatever」っぽいのは、狙ったものではありますが私が言い出したことではありません(笑)。

 

(企画制作/たしざん、取材・文/ナカニシキュウ)

■山本彩セレクト「THE ONE I LOVE」プレイリスト

■山本彩『ゼロ ユニバース』

 

「“みんなが求める自分”から解放された」山本彩が選ぶ愛の5曲

 

■Profile

山本彩やまもとさやか

1993年生まれのシンガー・ソングライター。2010年にアイドルグループ・NMB48に1期生として加入し、グループのキャプテンを務めるかたわら、AKB48の選抜メンバーとしても「365日の紙飛行機」でセンターポジションを務めるなど中心的存在として活躍。グループ在籍中の2016年に1stアルバム『Rainbow』でソロデビューを果たし、2018年にグループを卒業すると、2019年より本格的にソロアーティストとしての活動を開始した。強い意志の込められたシリアスで繊細な歌世界とダイナミックなバンドサウンドを武器に、J-Popシーンにおける存在感を拡大させている。

【関連リンク】

山本彩 公式サイト Yamamoto Sayaka Official Site
http://yamamotosayaka.jp/

山本彩 (@SayakaNeon) · Twitter
https://twitter.com/SayakaNeon

「奇をてらったわけではない」平成生まれの昭和歌謡マニア・町あかりが選ぶ“愛の歌”5曲

一覧へ戻る

ビリー・アイリッシュ、くるり……etc. 羊文学が選ぶ“愛”を感じる5曲

RECOMMENDおすすめの記事