口福のカレー

素材に徹底的にこだわるヘルシーなミールス「南印度料理 タミルナドゥ」(東京・目黒)

昨年3月に目黒にオープンした「南印度料理 タミルナドゥ」は、とってもこだわりの強いオーナーの佐藤直輝さんの思いが詰まった店だ。

例えば、平日のランチメニューは、ライス&カレーセット1100円、マサラドーサセット1600円、ビリヤニセット1500円、オーガニックランチミールス2800円など、ランチにしては、少々奮発のメニューも多いが、材料にこだわるとぎりぎりの価格だそうだ。もちろん化学調味料は一切使わない。スパイス類は南インドから直送されたものを使っているが、品質も価格もピンキリで、良いものを手に入れようとするとどうしても原価が上がってしまう。しかし香りや味わいが全くと言っていいほど異なるため、妥協はできないという。

肉や魚を使わないベジタリアンメニューでもある「オーガニックランチミールス」

肉や魚を使わないベジタリアンメニューでもある「オーガニックランチミールス」

スパイス以外の食材も、可能な限り自然農法や減農薬のものを契約農家から直接仕入れている。そのため鮮度も味も抜群だ。20年以上前に、佐藤さん自身も化学物質に対するアレルギーになった経験があり、食材がいかに重要かを実感したという。

そんなこだわりの強いタミルナドゥで腕を振るうのは、本場の有名レストランで研鑽(けんさん)を積んだインド人シェフだ。

しっかりとカレーを食べたい場合はキーマや野菜など単品のカレーのセットを

しっかりとカレーを食べたい場合はキーマや野菜など単品のカレーのセットを

店名が示すように南インドのタミルナドゥ州の食文化を忠実に再現した料理は、どれも体も心もほっとするような優しい味わいだ。刺激的なスパイス使いはない。ミールスは、バスマティライスに、ラッサム、サンバルと複数の副菜、ワダと呼ばれるインドのスナックというラインアップで、いわゆるカレーは付かない。カレー好きの筆者は少々拍子抜けしたが、これが食べてみると目からうろこだった。

まずラッサムとサンバルを味わったら、それをバスマティライスにたっぷりとかける。少し経つとパラパラだったライスが汁気を吸って、香りや旨(うま)みが染み込む。そこに副菜を投入して、混ぜ合わせて食べると、それぞれの香りと食感に、旨み、甘味、辛味、塩味、酸味が合わさった複雑な味わいが口に広がってくる。

食後にはシェフ自らチャイをカップに注ぐパフォーマンスも

食後にはシェフ自らチャイをカップに注ぐパフォーマンスも

今回特に印象的だったのが、インゲンと豆のプリイェルだ。小さく切った、たっぷりのインゲンと数種類の小さな豆をスパイスで和えた副菜だが、食感がいろいろで飽きがこない。そのままでもおいしいが、それをラッサムやサンバルの旨みを吸ったライスに混ぜると、絶妙な味のバランスが生まれる。この“味変”こそがミールスの醍醐(だいご)味だ。カレーを単品で注文することも可能だが、ここに来たらヘルシーなミールスをぜひ楽しんでほしい。

カレーらしいカレーをしっかりと食べたいのなら、チキンやキーマ、野菜などをお好みで。こちらも優しい味わいだが、奥底に秘めたスパイスの風味が感じられ、すこぶる満足度は高い。スパイスの刺激を売り物にする店とは一線を画す、舌と体が喜ぶ独自の南インド料理店だ。

目黒川に近い静かな一画の真新しいビルの2階にある

目黒川に近い静かな一画の真新しいビルの2階にある

    ◇
南印度料理 タミルナドゥ
東京都目黒区下目黒2-23-2 エストラルゴ目黒2F
03-6417-4459
https://www.tamilnadu.tokyo/

PROFILE

熊野由佳

ライター&エディター。徳島県出身。外資系ジュエリーブランドのPRを10年以上経験した後にフリーエディターに。雑誌やWebを中心に、旅、食、ファッションなどをテーマに執筆中。無類の食べもの好きでもあり、おいしい店を探し当てる超(?)能力に恵まれている。自分の納得した店だけを紹介すべく、「実食主義」を貫く。酒好きが高じて「唎酒師(ききさけし)」を取得したが、おいしいワインの探索にも余念がない。

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