LONG LIFE DESIGN

もはや「もうかる」は重要ではない 閉じた仕事のすすめ

2021年になりました。今年も「長く続く素晴らしいこと」をテーマに色々と気づいたことを書いていきます。どうぞよろしくお願いします。

コロナとの共生はまだまだ続きそうですが、暮らしていく中で大切なことも、この機会に見えてきたと思いますので、そこを丁寧に取り入れていく年にしたいです。

今回の3話。初めは「東京を離れる」という話です。具体的に離れる計画はないのですが、東京の価値についての意識がだんだん変わってきたという、僕の気持ちの話です。

2話目はその続きのようなことですが、グローバル化が逆にローカルへの関心を生み出したように、本格的なネット社会は、その広がりとは逆の「閉じていく」ことも作り出している。誰でも利用できることが進めば進むほど、今度は「あなたしか」利用できないということも勢いが増してくる。そんなお話。

最後はこれも時代の話になりますが、叱られるよりも、褒められた方が人って成長するなぁと、感じたことがありました。そんなお話を書きました。それではしばしお付き合いよろしくお願いします。今年も頑張りましょうね。

 

2020年は自分の故郷に自分の店を作るというプロジェクトを進めるため、クラウドファンディングを使って資金を集め、達成したことが大きなことでした。2021年はこの資金を使い、実際に自分の町のためになる場所作りをスタートしたいと思っています。ただ、僕の夢の実現という前に、町の、地域の皆さんが「そういう場所なら、町に欲しい」と思い、実際に自分たちが参加してアクションを起こしたものが出来上がる――そういう「町の機能になる場所を町の人たちが自ら作る」という感じが、とてもいいと思うのです

2020年は自分の故郷に自分の店を作るというプロジェクトを進めるため、クラウドファンディングを使って資金を集め、達成したことが大きなことでした。2021年はこの資金を使い、実際に自分の町のためになる場所作りをスタートしたいと思っています。ただ、僕の夢の実現という前に、町の、地域の皆さんが「そういう場所なら、町に欲しい」と思い、実際に自分たちが参加してアクションを起こしたものができ上がる――そういう「町の機能になる場所を町の人たちが自ら作る」という感じが、とてもいいと思うのです

東京を離れる

今、借りている賃貸のスペースの家賃が「高い」と感じるようになったのは、このコロナの影響もあるのですが、やはり時代の変わり目、もっと言うと「東京の価値」についてそれほど重要に思わなくなってきたということが言えるんじゃないかと思います。

今から30年以上前の1980年代の東京はとにかくイケイケでした。当時の日本は、海外への様々な憧れにより、自分らしく生きるということがどこか背伸びしすぎていて、今から思うと笑えるくらい着飾ってマスメディアを意識していた人もいたように思います。

もちろん「東京」という場所はそんな頂点。世界に飛び出す人たちもいましたが、日本では東京にいないとクリエーションの先端にいることにならない。なんだか「東京にいる」というだけで、優越感がありました。その代わりの高い家賃、交際費や贈り物などなど、感度の高い場所に集まってくる人たちとの交流も、お金のかかるものでした。

さて、時代は大きく変わりましたね。特にテクノロジーの進化による「物流」にそれを感じます。簡単にいうと「どこでも」というキーワードなのでしょう。どこでも働けて、どこでも最新のものが検索できて、そして、送ったり送られたり……。コロナの時代がそれに追い打ちをかけて、出社しなくても、遠隔でも働けるスタイルを得て、私たちは「自分の居場所」についてのある意味の「自由」を得たところがあります。つまり「どこでも」生きていける、働ける、というわけです。

今、東京の本社として使っている賃貸スペースは500坪。借りた2000年当時は「坪単価が倉庫級に安い」と、みんなに言われましたが、今はそれすら払い続けることが困難になってきました。

広いスペースで人を雇い、来るか来ないかわからない「お客様」を待つ。昔、大きな家具や自動車などをネットで買うなんてことは考えられなかったのですが、完全にネットの時代となった今、「路面店」のあり方を考え直さなくてはならなくなってきました。ネットでできるようなことを路面店でしていては勝ち目はないわけです。そしていつしか、「東京」にいなくてもいいのではないか、と、思うようになっていました。

今、僕は静岡に自宅を建て、沖縄に部屋を借り、東京の会社に週に3日ほど出勤する生活。これも昔なら考えられないスタイルでしょう。その「東京」の1カ月の家賃で、1年間、いや、もしかしたら土地ごと購入できる場所はある。さあ、どうなるのでしょう。僕は着々と、それでもいいと考えられるようになっています。

写真は栃木県益子町にできた「ヒジノワ」というレンタルキッチンのついたコミュニティースペース。こうした場所が町にできると、まず、町の人たちが利用し、その様子を地元の人が見にきて、また、その様子を県外の人が見にきたり、利用しにきたりします。意識を持って生まれた場所には、そうした吸引力がある。こうした数々の全国の手本を見て、僕もいつかそういう場所を作ってみたいと思ったわけです。場所が持つ影響力って素敵だと思うのです

写真は栃木県益子町にできた「ヒジノワ」というレンタルキッチンのついたコミュニティースペース。こうした場所が町にできると、まず、町の人たちが利用し、その様子を地元の人が見にきて、また、その様子を県外の人が見にきたり、利用しにきたりします。意識を持って生まれた場所には、そうした吸引力がある。こうした数々の全国の手本を見て、僕もいつかそういう場所を作ってみたいと思ったわけです。場所が持つ影響力って素敵だと思うのです

思い切り閉じていく

僕は仕事で企業のブランディングもやりますが、その会社の中に「文化的意識」を感じないと受けません。それなりに時間も体力も使いますし、もっと言うと、その企業の成長がより良い日本に、世界につながっていかないなら、その仕事はやっても意味がないと思うのです。どんなに素晴らしいデザインをしても、もともとある企業意識は変わりません。よく、「CI(コーポレート・アイデンティティー)を導入して会社をよみがえらせる」と、勘違いした発言を目にしますが、企業改革があり、その象徴にCIがないと意味がありません。

マークを使って改革はできません。まず、意識がしっかりしていること。そして、どういう改革をしていくか。そこに時間をかける。それからCIでしょう。

僕らD&DESIGNはまず、D&DEPARTMENTという自分の店でその企業の商品を販売し、それを通じて存分にその企業のものづくりの姿勢、未来へのビジョン、本音などを体感します。それがあって「この会社、素敵だから、もっともっと応援して、日本のものづくりに良い影響を与えてほしい」と思う気持ちが芽生えさえすれば、予算に関係なく、「あの会社のために」という純真な気持ちで創作ができます。

デザイン事務所としてこんな考えでやっていますので、これまで社会にあったような「広がっていく」「仕事はどんどん取っていく」という開いた発想ではなく、「こういう人とだけ」とか「関係性を作ってから」など、今後はどんどん閉じていく発想でやっていきたいと思っています。冒頭に書いたクラウドファンディングで開業を目指すプロジェクトも、購入してくださった方だけが、店内に入れます。購入してくださった方が連れてこられた方も。

店をやっていて思うのですが、いい店ほど「お客さん」を区別します。えこひいきします。それでいいのです。ものはネットで安く、早く買えばいいと思います。しかし、店頭で接客を受けながら買いたい人は、お客さんとしての自分も磨いてきてほしいのです。店側も知っている人だから、一生懸命になれる。店で働くスタッフも、そこがあれば仕事という枠を忘れ、あなたのために可能な限りの誠意で楽しい時間を作れます。もはや、お金がもうかるとか、そこが最重要ではないのです。

クラウドファンディングで作っていく「d news」の拠点とする愛知県知多郡阿久比町にも、意識あるパン屋さん「あゆま堂」さんがいます。注文を受け、おいしいパンを焼き、取りに来てもらう。「買いに来るパン屋ではなく、取りに来るパン屋さん」です。誰かのために焼くのではなく、注文をくれたあの人のために焼く。誰かのために作ったパンは、誰も買ってくれないかもしれないことを背負い、おいしく食べてもらえずに捨てられるかもしれない。そうではなくて、あの人が来てくれるから店を開ける。誰もこないのに、店は開けて待っている時代ではなくなってきました。

お金をもらえるからデザインをする時代から、あの人のためにデザインを作ってあげたいと思える仕事へ。どんどん閉じていくように思います。

集落の奥まった場所の自宅を改装して作った「あゆま堂」。ネットを駆使して常連客とつながることで、来店客の有無や利便性などは関係なくなり、わかりにくい場所ですが、繁盛していました。お客さんと直接つながることで、無駄にパンを焼くこともないという、これからのスタイル

集落の奥まった場所の自宅を改装して作った「あゆま堂」。ネットを駆使して常連客とつながることで、来店客の有無や利便性などは関係なくなり、わかりにくい場所ですが、繁盛していました。お客さんと直接つながることで、無駄にパンを焼くこともないという、これからのスタイル

褒められて、指導されると楽しくなる

人生で初の書道教室に先日から通っています。きっかけは台東区のSyuRoの宇南山加子さんの紹介というか、宇南山さんが素敵すぎて、話をしていた中に出てきた、通っている書道教室に、僕も行きたいと思ったのでした。

とても単純なきっかけですが、僕は、僕らしいきっかけだと思っています。自分らしいきっかけや縁って、とっても大事にしています。

話は変わるのですが、哲学者で思想家の柳宗悦の民藝運動の本を読んでいて、その中に出てくる「心が美しくないと、美しいものは生み出せないし、気づくこともできない」という内容のことがグサッときていて、とにかく「心をきれいに」しなくてはと思っての最近。そこからの書道なのでした。

いやー、書道って面白いです。そして、大きな気づき。先生の宮城宣子さんの教え方、指導の仕方がとても良くて「楽しい!!」と思ったことについて、本当に感動しました。

僕は何かを教えたり、指示したりする時、まあまあキツく伝えます。それを繰り返していくと、相手はそれが「嫌い」になってしまうなぁと、今回の先生の指導で反省をしました。褒めて伸ばす、ということが、僕は本当にデザインなどをスタッフに指示したり、修正してもらったりする時の言い方が下手ですが、そうした僕との関わりによって、もしかしたらデザインが「嫌い」になられると、悲しいなぁ……と思ったのでした。

書道の先生が「書道」に愛を持っているように、自分ももっとデザインに対して、楽しく、愛を持って接していかないとなぁと、猛烈に反省……。今さら何にも変わらないかもしれませんが、とにかく、書道教室に通いながら、実は、自分を変えていけたらと、思っています。宣子先生、よろしくお願いします。

叱られて、落ち込んではい上がっていく人もいると思いますが、今や「楽しくない」と、そもそも続きません。いいところをとにかく褒める。そうすると、褒めた自分も気持ちよくなります。怒っても、よほど上手じゃないと、怒った本人も気持ちが落ち込んでしまうこともあります。現代人はみんなが様々にこれまでにないストレスを感じ毎日生きています。だから、指導する側も、される側も「楽しく、気持ちよく」ありたいですね。

だめなところよりも、いいところを褒めてくれる宣子先生の教室に通う僕です。ここに通うまで、そんなことを考えたことがありませんでした。褒められるって気持ちいいし、もっと頑張って褒められたいって思う。何よりこの教室がある場所に家から「通いたい」と思うことの大切さ、重要さを感じました。注意ばかり、叱られてばかりだと、通いたいとなかなか思わないでしょうしね

だめなところよりも、いいところを褒めてくれる宣子先生の教室に通う僕です。ここに通うまで、そんなことを考えたことがありませんでした。褒められるって気持ちいいし、もっと頑張って褒められたいって思う。何よりこの教室がある場所に家から「通いたい」と思うことの大切さ、重要さを感じました。注意ばかり、叱られてばかりだと、通いたいとなかなか思わないでしょうしね

PROFILE

ナガオカケンメイ

デザイン活動家・D&DEPARTMENTディレクター
その土地に長く続くもの、ことを紹介するストア「D&DEPARTMENT」(北海道・埼玉・東京・富山・山梨・静岡・京都・鹿児島・沖縄・韓国ソウル・中国黄山)、常に47都道府県をテーマとする日本初の日本物産MUSEUM「d47MUSEUM」(渋谷ヒカリエ8F)、その土地らしさを持つ場所だけを2カ月住んで取材していく文化観光誌「d design travel」など、すでに世の中に生まれ、長く愛されているものを「デザイン」と位置づけていく活動をしています。’13年毎日デザイン賞受賞。毎週火曜夜にはメールマガジン「ナガオカケンメイのメール」www.nagaokakenmei.comを配信中。

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