小川フミオのモーターカー

英国を代表するロングセラースポーツカー ロータス・エスプリ

1970年代はスポーツカーが花開いた時代だった。各国で、すばらしいスポーツカーが作られた。少なくともデザインは、今も輝きを失っていないモデルが多い。かつてスポーツカー王国だった英国代表は、「ロータス・エスプリ」だろう。

(TOP写真:あえて曲線を排したスタイリングだが美しい)

フォーミュラワンで華々しい活躍をみせたロータスは、1960年代にライトウェイトスポーツ(軽量スポーツカー)を手がけ、「エラン」や「ユーロッパ(※)」などで、世界中のクルマ好きから注目されるようになった。

※日本では「ヨーロッパ」と書かれることが多いが、本連載ではユーロッパと記載する

当時では斬新だったとても低くて幅が広いプロポーション

当時では斬新だったとても低くて幅が広いプロポーション

マツダによる「ユーノス・ロードスター」(89年)だって、ロータスがなかったら、存在していないかもしれない。少なくとも、ああいうキュートさを感じさせるスタイリングにはならなかったのではないかなと思うほどだ。

70年代半ばから、ロータスはレース資金を稼ぐ必要もあり、モデルのコンセプトにおいて方針変更をおこなった。米国などお金のあるマーケットで売れる、いってみれば、わかりやすいクルマ作りへと方向転換。今までより高性能で豪華でスタイリッシュになった。そのうちの1台が1976年のエスプリなのだ。

わかりやすいという言葉が悪ければ、万人ウケする魅力をもったクルマとしよう。伊イタルデザインが手がけた、クサビ形のシルエットはいかにも速そうだった。さらに、パワフルで軽量。スポーツカーにもっとも大事な三つの要素はきちんと満たしていたのだ。

バックボーンフレームというロータス独特のレースカーのようなシャシーを採用。メリットはボディーを軽くできるところにある。スキンとも呼ばれるボディーパネルは、プラスチック製だった。

クサビ形のシルエットがとてもスタイリッシュ

クサビ形のシルエットがとてもスタイリッシュ

当時としてはパワフルな160馬力の2リッターエンジンを、後車軸前に配置するミドシップ。同時期に発表されたフェラーリ308GTB(75年)もミドシップスポーツであるものの、対照的な存在だ。

フェラーリは、伝統的なスポーツカーに見られる曲線美を特徴としていたのに対して、エスプリは機能主義的。ほとんど平面のウィンドシールドのデザインなんて、本当にモダンだ。ロータスではこれを「紙を折って作ったようなデザイン」としている。これによって、スポーツカーの新しい魅力を教えてくれたのがエスプリなのだ。

このころのミドルサイズのスポーツカーは、デザイン的にも個性にあふれていた。フェラーリやロータスに加え、アルファロメオのクーペをさらに平べったくしたようなベルトーネによるマセラティ・カムジン(72年)や、デザイナーのガンディーニがスポーツカーの新しい美をさぐったランボルギーニ・シルエット(76年)……。今でも欲しくなるモデルばかりだ。

エスプリは日本でもっとも知られているロータスだろう。「007 私を愛したスパイ」(77年)にボンドカーとして登場し、劇中では、潜水艇に変わるなど、すばらしい“高性能”ぶりを発揮したからだ。当時のロータスのイメージそのまま。おもしろいスポーツカーを作ってくれる技術力の高いメーカーととらえられていた。

エスプリは、87年まで作られただけに、モデルライフのうちに、競合との競争に勝つべくパワーアップが図られた。80年3月にターボ版が登場し、同年5月に2リッターエンジンは2.2リッターエンジンへと拡大し、出力も163馬力へ、という具合だ。

サッチャー元英首相がエスプリターボの運転席にっている写真

サッチャー元英首相がエスプリターボの運転席に座っている写真

87年には、外観に変更が加えられ、基本デザインはそのままに、ボディーパネルが一新。バンパーがボディー同色になったりして、従来より高級感が出た。出力はさらに向上。210馬力だったターボは215馬力に上がった。

ただし、このころフェラーリは270馬力の「328GTB」(85年)から300馬力の3.4リッターV8エンジン搭載の「348tb」(89年)に移行する準備を進めていたりと、エスプリの時代は過去のものになりつつあった。

乗るとシャープな操縦感覚がとてもよかっただけに、大きなエンジンを開発できない、ロータスの資金力不足などを勝手に推し量って、ファンとしてははがゆい思いをしたものだ。

エスプリはいろいろと手を加えられながら、なんと2004年まで生産された。87年に外観の一部が変更されたのをもってモデルチェンジとするひともいるものの、基本設計はずっと引き継がれていたのだ。96年には350馬力以上の3.5リッターV8エンジンモデルまで発表された。

私は上記87年のいわゆる「S3」までしか知らない。シャシーやサスペンションまわりに補強を加えながら、パワフルなエンジンを載せるという、ちょっとパッチワーク的な後期のエスプリにも、しかしながら、興味を惹(ひ)かれる。クルマ好きにとっていつまでも気になるモデルだった。

(写真=Lotus Cars)

【スペックス】
車名 ロータス・エスプリ(1979年モデル)
全長×全幅×全高 4191×1860×1111mm
1969cc 直列4気筒 ミドシップ後輪駆動
最高出力 160ps@6200rpm
最大トルク 19.4kgm@4200rpm

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

運転感覚はまさにレースカー トヨタGRヤリスに試乗

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