或る旅と写真

ストーブ列車に乗って雪景色を進む 青森・津軽の旅

フォトグラファーの高橋伸哉さんが、「或る旅」の記憶をつづるフォトダイアリーです。

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今回は青森県西部の津軽地方の旅。私はこれまで何度か青森県に撮影で行っているが、それはそれは毎回楽しく、個人の撮影旅行でもまた訪れてしまう場所だ。

青森といえば、海の幸、イカ焼き、しじみラーメン、リンゴなど食だけでなく、観光名所も存分にある。たとえば五所川原市にある、文豪・太宰治の生家である「斜陽館」。そこで育った太宰の面影を感じながら、5度も自ら命を絶とうとした文豪が生きた津軽を旅するのもまた味わい深いものとなるだろう。

青森ねぶた祭

大きく、迫力あるねぶたが通る【もっと写真を見る】

夏は東北の短い夏の一大イベント、青森ねぶた祭があり、青森市内は活気に満ちる。今年は残念ながらコロナで中止になったが、地元の人や観光客が跳人(はねと)の衣装に身を包み「ラッセラー、ラッセラー」と大きな掛け声をあげながら一同に歩く様は圧巻であり、身震いしてしまう。祭りは楽しい。私は仕事で撮る側だったが、あまりの迫力に興奮し、写真を撮りながら「ラッセラー!」と叫んでしまった(笑)。他にもたくさんの名所があるので、ぜひ回ってほしい。

「ラッセラー」と掛け声をあげながら歩く跳人

「ラッセラー」と掛け声をあげながら歩く跳人【もっと写真を見る】

ストーブ列車に乗って雪景色を進む 青森・津軽の旅

五所川原市、十三湖名物のしじみラーメン【もっと写真を見る】

私は写真作家なので、日常の忙しさから少し距離を置き、自分の気持ちと自問自答できるような旅を好む。心象風景や情景風景、それは見た目だけでなく心の内も描けるような景色に出会える旅が好きだ。そういう気持ちにさせてくれるのに、どうしても自分には必要なものがある。それは電車だ。

五能線の車窓から

五能線の車窓から【もっと写真を見る】

秋田から青森をつなぐ五能線の列車の旅は、一度皆さんにも経験してほしい。車窓から津軽の海を眺め、絶景を望む。夕暮れがきれいな時間には、どっぷりと旅の醍醐(だいご)味を味わい、自分の心の中を浄化できるような気持ちになるだろう。いつもこの路線を使う地元の人はそんな気分ではないかもしれないが、旅人にはこの五能線の電車に乗るのが楽しみの一つである。

そして、今回は念願のストーブ列車にも乗ることができた。うれしくてうれしくて、終始ニヤニヤしていたようだ。気持ち悪いくらいに(笑)。ストーブの上で焼くイカ焼きの香りと、窓の外には真っ白な雪景色。もう、言葉では言い表せないほどの浪漫が詰まっている。

津軽鉄道のストーブ列車

津軽五所川原―津軽中里を行き来する、津軽鉄道のストーブ列車【もっと写真を見る】

だるまストーブでスルメをあぶり……

だるまストーブでスルメをあぶり……【もっと写真を見る】

津軽の冬は厳しい。特に海沿いは風が強く雪が舞い、なかなかの寒さだ。12月は日中でもマイナス5度になり、そこで暴風を浴びて鼻水を垂らしながら撮影している自分は何者なんだろうと、ふと考えてしまう。しかし、寒さより撮影したいという情熱が勝るので仕方ない。海猫が飛び交う荒く激しい海。夜中には風と波の音が鳴りやまず、その場所に住む厳しさを教えてくれているようだ。

でも、不思議と寒くない。いや本当は寒いはずなのだが。雪の降る場所に魅(ひ)かれるのはなぜかと考えると、少し寂しさを纏(まと)う雰囲気が好きなのかもしれない。写真を撮る身としては、必要な場所だと思う。実際、帰りのクルマの中で、1カ月ほど冬の津軽に住みながら執筆や写真を撮り歩くといいものができるだろうな……と考えていた。また行きたいな、そう思わせてくれるのが青森のいいところだ。ぜひ再度訪れて、さらなる魅力に迫りたい。

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新型コロナウイルスの感染拡大は、いまだ収束とはいえない状況にあります。お出掛けは無理せず、体調管理や十分な感染防止対策を行っていただければと思います。一日も早い沈静化を願っています。(&M編集部)

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PROFILE

高橋伸哉

人物、風景、日常スナップなど、フィルムからデジタルまでマルチに撮影するフォトグラファー。国内外を旅して作品を発表している。企業案件や広告撮影、技術本の書籍(共同執筆)、ワークショップなども多数。インスタグラムの総フォロワー数は35万人を超える。(@t.1972@s.1972

白銀の世界に流れる幻想的な青い川 北海道の冬景色を撮る

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