安全圏でひとりを楽しむ “ふたりソロキャンプ”のすゝめ
文: 山城さくら

ソロキャンプがしたい。でも家や街ならともかく、静まり返った大自然の中のひとり行動は少し怖いし、防犯面も気になるところ。そこではじめたのが、“夫婦でソロキャンプ”です。
夫婦でソロキャンプとは、キャンプ場には一緒に行くし、テントも隣同士に張るけれど、それぞれソロキャンプをするというスタイルのこと。ソロキャンプなので、もちろん食事も焚(た)き火も、過ごす時間も各自の自由。とはいえ完全に別行動なわけでもなく、夜は一緒に焚き火にあたったり、ご飯はおすそ分けしあったり……ソロキャンプと二人で楽しむデュオキャンプのちょうど間くらい。
この話をすると結構驚かれるのですが、私たち夫婦はこのスタイルを気に入っていて、ストーブを共有するため冬こそ一般的なデュオキャンプを楽しむものの、涼しい季節はたいていソロキャンプスタイルをとっています。
そもそも、なぜこのスタイルになったかというと、決して夫婦仲が悪くなったわけではなく、お互いがキャンプ沼にはまり、それぞれお気に入りのギアを使いたかったから、そしてソロキャンプに憧れがあったこともありました。とはいえ、大きな音や怖い話が極端に苦手で小心者な私には、ソロキャンプなんて夢のまた夢……。そんなときに出会ったのが、漫画「ふたりソロキャンプ」。一緒にキャンプはするけど、基本的にはお互いソロキャンプという主人公たちを見て、これなら私にもソロキャンプできるじゃん、とやってみたのがはじまりでした。
ソロキャンプは準備からはじまります。“ソロ”なので、いつもは二人で相談しながら準備するところを、ひとりで行うのですがこれがまた楽しい。テントの中にはこれを置こうとか、焚き火台はどれにしようとか、ご飯はあれを作りたいからこの調理器具をもっていこうとか。ソロキャンプをしている明日の自分を想像しながら、忘れ物をしないよう、けれど増えすぎないよう、荷物を厳選していきます。
当日は夫と一緒にキャンプ場へ向かい、チェックイン。そこからはソロキャンプのはじまりです。すぐに設営にとりかかる夫を横目に、わたしはまずは缶ビールをあけて山を眺めながらひと休憩。満足したところでのんびり設営を開始しますが、ひとり用の設営はテントも小さいし荷物も少ないし15分もあればできちゃうもの。なんて楽なんだ。その後は明るいうちに薪(まき)割りを開始、愛用しているソロストーブに入るようにノコギリで小さく切っていきます。
焚き火の準備ができたところで、腹ごしらえ。私がソロキャンプで必ず食べるのが、焼きソーセージです。普通にソーセージを焼いてもおいしいのですが、細く割った薪に直接さして直火で焼くのがおすすめ。これ、網で焼くよりも何万倍もおいしく焼けちゃうんです。
のんびり焼きながらビールで流し込む。うううん、最高ですね。おなかが空いたら焚き火台に鉄板をのせて、ひとりBBQ、ひとり鍋焼きうどん、ひとり天ぷらをした日もありました。面倒な日はカップラーメンでもオッケーです。外で食べれば何でもごちそうになるのって小さくて大きな幸せですよね。たまにお隣さん(夫)におすそ分けしにいったり、おすそ分けをもらったり。
おなかいっぱいになったら、ひたすらぼーっとしたりへたくそな写真を撮ってみたり空を眺めたり。とにかく暇を楽しむのがおすすめです。キャンプには暇を満喫しに行っているようなものなので。
と、まぁいつものキャンプと同じことをしてるだけなんですけど、ソロキャンプというだけで実は見える世界が少なからず変わります。例えるなら、初めてひとり暮らしをしたときみたいな、そんな気分。実家にいたときとやっていることは同じなのに、家にあるモノもごはんも時間の使い方も全部が自分次第で、なんだかそわそわ、わくわくしたあの感じ。
なかなか思うように旅に出られなくなってしまった昨今、非日常をたのしむにはソロキャンプほどちょうどいいものはないなとつくづく思うわけです。とはいえ、防犯面を考えるとひとりは危険も伴います。近くに友達やパートナーがいる心強さの中でたのしめるソロキャンプ。女性や初心者の方は、ぜひ選択肢にいれてみてください。
(文・写真 山城さくら)
関連記事
・冬キャンプに革命を! 心身ほぐれる電熱線あったかギア
・キャンプに欠かせない九つの焚き火道具
・軽くて強い、そしてスタイリッシュ ソロキャンで頼れる焚き火台「solo stove」