小川フミオのモーターカー

スポーツカー愛好者を失望させないピュアEV ポルシェ・タイカンに京都で試乗

ポルシェがはじめて量産したピュアEV「タイカン」が日本の路上を走り出した。いま日本政府が「脱ガソリン」の旗振りをしているものの、近い未来に電気自動車がガソリン車から主役の座を奪うかはまったく未知数。ただし、タイカンに乗ると、電気自動車の可能性の高さには納得。エンジンがないのに実に“ポルシェっぽい”クルマである。

(TOP写真:ポルシェ・タイカン。4点式LED組み込みのヘッドランプとサイドのウィンドーグラフィックスが911に連なるファミリーアイデンティティーを持つ)

ポルシェといえば、読者の方は先刻ご承知のように、ザ・スポーツカーと、唯一無二を意味する定冠詞をつけてもいいぐらい、世界最高峰のスポーツカーを作るメーカーだ。

排気を出さないピュアEVは、京都にも向いているといえる

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日本では「カイエン」や「マカン」といったSUVの人気も高いようであるものの、全てのポルシェ車の“メートル原器”たるモデルは6気筒ガソリンエンジン搭載の「ポルシェ911」。エンジンが高回転まで回っていくフィーリングと、操縦性の高さは卓越している。そこにあってタイカンは、ポルシェのスポーツカーを愛する人を失望させない出来なのだ。

アクセルペダルを床まで踏み込むとローンチコントロールが働き、ロケットのようなダッシュをみせる

アクセルペダルを床まで踏み込むとローンチコントロールが働き、ロケットのようなダッシュをみせる【もっと写真を見る】

タイカンは、大雑把にいうと、前後に1基ずつのモーターを備えた四輪駆動。前後タイヤの間、床下に高性能バッテリーを搭載する。5メートルになんなんとする全長を持つ4ドアボディーで、モデルは三つ。

助手席にもインフォテイメントシステム操作用のモニタースクリーンを設けたダッシュボードを含め、クリーンな造形

助手席にもインフォテイメントシステム操作用のモニタースクリーンを設けたダッシュボードを含め、クリーンな造形【もっと写真を見る】

320kWの出力と640Nmの最大トルクを持つベーシックモデル「タイカン4S」にはじまり、460kWと850Nmの「同ターボ」、そしてトップモデル「ターボS」は最高出力はターボと同一であるものの、最大トルクは1050Nmに達する。

バッテリーを足下に収めているぶん床は高めであるものの、スペース的に十分広い後席

バッテリーを足下に収めているぶん床は高めであるものの、スペース的に十分広い後席【もっと写真を見る】

ターボという名称が、ポルシェ的でユニークだ。というのは、ターボチャージャーは、ガソリンやディーゼルといった内燃機関のための装置で、排気を利用してタービンを回し、その軸の反対側についたタービンが風車のように高速で回転して吸気を圧縮しパワーをあげる仕組みだからだ。

1974年に911ターボという画期的なモデルで一世を風靡(ふうび)して以来、ポルシェでは常にターボがラインナップの最高峰だった。そこで電気自動車になっても、ターボの名称を象徴的に使っているのだ。

高性能インバーターは冷却も重要だが、開口部をあえて目立たせないデザインを採用

高性能インバーターは冷却も重要だが、開口部をあえて目立たせないデザインを採用【もっと写真を見る】

試乗した舞台は、京都。走りを試すには、ご賢察のとおり、この古都の市街地はあまりいい場所ではない。でも郊外に足を延ばすと、比叡山や嵐山など、関東なら箱根を思わせるいい道がある。

びっくりしたのは、とにかくスポーティーだということ。私としては、電気自動車はこれまでに色々経験ずみだったため、強力とはいえダッシュ力は受けとめられたものの、路面に張りつくようなコーナリング性能は新鮮な驚きだった。

911を意識したというルーフのシルエットとウィンドーの輪郭が、スポーティーな印象を高めている

911を意識したというルーフのシルエットとウィンドーの輪郭が、スポーティーな印象を高めている【もっと写真を見る】

「重いものを下に集めた結果、重心が低くなって、スポーティーな操縦性が実現できたんです」。日本法人であるポルシェジャパン広報担当者が、そう説明してくれた。要するに、大きなバッテリーは、最大で460キロに達する航続距離を実現する一方、スポーツカー並みのハンドリングをもたらしてくれる。つまり、一石二鳥の構造ということだ。

横一列のLEDランプがポルシェファミリーに共通したデザインアイデンティティーのひとつ

横一列のLEDランプがポルシェファミリーに共通したデザインアイデンティティーのひとつ【もっと写真を見る】

ドライバー席も十分スポーティー。足を少し前に投げ出したようなポジションといい、太めのグリップ径を持つ小径(しょうけい)ステアリングホイールといい、体を包むように支えてくれるバケットシートといい、走りを楽しませるために作られた、という印象が前面に出てきてうれしくなってしまう。

ポルシェジャパンは、タイカン導入にあたり、充電設備という大事なインフラ整備にも余念がない。そもそも800Vという高電圧化が実現されているタイカン。汎用(はんよう)充電器CHAdeMO(チャデモ)の新世代にあたる「ターボチャージャー」なる高効率の充電器を使えば、30分以内に80パーセントの充電が可能となるそうだ。

800Vの高電圧システムのおかげで充電効率はかなり高い

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「航続距離が400キロ以上なので、ウィークデーは通勤など短い距離をちょこちょこと走るような使い方なら、週末にポルシェディーラーで一気にフル充電すれば、自宅に充電設備を設置する必要はないともいえます」(ポルシェジャパン広報担当者)

2021年1月のニュースでは、重要な部品である半導体の供給不足で、日本メーカーのBEVの生産が思うように進まないと報道されていた。電動車には色々なハードルがあるのは事実。ただし、タイカンを単に、内燃機関(ガソリン車など)に対するBEV、という図式にあてはめるだけでは、もったいない。新しい乗りものとして接してみれば、かなり楽しめる。これは事実だ。

京都では街中のポルシェドライバーたちから手を振られたりした

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(写真=ポルシェジャパン)

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【スペックス】
車名 ポルシェ・タイカン4S
全長×全幅×全高 4963×1966×1379mm
電気モーター 全輪駆動
最高出力 320kW
最大トルク 640Nm
価格 1448万1000円

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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