“かっこいい”との付き合い方

いつまで風船を持てるのか 香取慎吾、かわいさとの勝負

多くの人が憧れる俳優たち。彼らはなぜ「かっこいい」のか。その演技論や仕事への向き合い方から、ルックスだけに由来しない「かっこよさ」について考えたい――。

香取慎吾さんは、10代前半でのデビュー以来、スターとして第一線を走り続けている。現在、43歳になった。「かっこいい」「かわいい」「おもしろい」さまざまな見方で長年愛される彼は、「かっこよさ」をどうとらえているのだろうか。「完全に“かっこいい”一本の人じゃないんで」と笑う理由とは――。

 

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仕事の中で芝居が一番難しい。でも……

――『アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~』(テレビ東京系)で、5年ぶりに民放ドラマに出演されます。この作品に出演しようと思った理由はなんですか?

香取 僕、お芝居が苦手で、いろんな仕事をさせてもらう中でも、お芝居が一番難しい仕事だなと思ってるんですね。でも制作陣の方から「一緒にやりませんか」って言っていただくと、それに応えたいなと思うんです。今までも、オファーをいただいて台本を読んでみて、「自分に合わないな」と思ったからといってやめようと言った経験はないんです。「ぜひやってください」って熱い思いを伝えてもらったときには、必ず「やります」って返しています。

――香取さんは絵を描くなどアートのお仕事もされていますが、アートの場合は自分で決定することが多そうですね。それはお芝居をするときとは違う感覚なのではないでしょうか。

香取 アートに関することは本当に自由でゴールもなくて、自分で始めて自分でやめられる。絵を描いているときはまったく一人なので、自分と会話するのが一番楽しいんです。ドラマの場合は、チームだから考え方が違うんですよね。監督と僕だけのものでもないし、一緒にお芝居する俳優と対峙(たいじ)したら、また想像をはるかに超えた世界が生まれたりするし。そこにいる人の数だけ思いがあって、それがぶつかるときもあるけれど作品を見てくれる人への思いは同じで、そこに向かって進んでいるのがいいところなんじゃないかなって思います。

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――ドラマの仕事が決まると、最初に衣装合わせがあるかと思います。そういうビジュアルに対しては、自分で意見を出したりしますか?

香取 そういうことはないですね。「これ、どっちがいいですか?」って言われて「こっちがいいです」って言ったこともないんです。衣装合わせは作品や監督のためにあると思うので、それを決めるのは僕じゃないなって。

――衣装が決まると、役に入りやすいということはありますか?

香取 すごくあります。普段の生活だと、着る服は出発前にパパッと決めるんですけど、「今日はこういう気分だから」とか「あの人と会うから」とかそういうふうに選ぶと、気分も決まっていきますね。

「この1年で、風船を2、3回持ちました」

――この連載では、俳優の方々にご自身にとっての「かっこよさ」とは何かを聞いています。香取さんは10代の頃からファンの方がたくさんいて、それこそ人から「かっこよくあってほしい」などいろいろ期待される立場だったと思いますが、そこに対してはどんな思いがありますか?

香取 完全に「かっこいい」一本の人じゃないんで、自分が(笑)。僕はどっちかというと、面白いとか「慎吾ちゃんかわいい」とかそういう振り幅もある人なのかなって。ずっとかっこいい人って大変だなと思うくらいです。僕の場合、「かわいい」を続けたところで急に「かっこいい」をやってみたら、それって結構かっこいいんじゃないかなって思ったりもします。

――「かわいい」「かっこいい」いろいろありますが、香取さん自身のベースはどこにあると思っていますか?

香取 そうですね。自分が思ってるよりも、年とともに「かっこいい」になってきてるんじゃないかなって思います。でも、年齢を重ねていまだに「かわいい」って言ってくれる人がいると「まだいけるのかな」って(笑)。いつまで雑誌の撮影で「風船を持ってください」って言われるかが、「かわいい」との勝負かなと思って挑戦してますね。自分からは断らないって決めてます。

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――「かわいい」との勝負って面白い言葉ですね(笑)。最近も風船を持ちましたか?

香取 この1年で、2回か3回は持ちましたよ。

――この仕事を始めた10代の頃は、40代になった自分をどんなふうに想像していましたか?

香取 ちょうどいいのかもしれません。「こんな感じの40代になってたらいいな」って思ってたくらいになっているかも。

――“ちょうどよく”なるために、何か自分でコントロールしたり努力したりしている部分はありますか?

香取 もうちょっとコントロールできるかなと思ったけど、できないもんですね。それよりも、いろんな経験をしたことが自然に深みを与えてくれたのかなと。

もはやSNSを避けて生きていくことはできない

――今、香取さんが考える「かっこいい」というのはどんなものでしょうか?

香取 なんだろう。「まっすぐ」であるということかな。もし僕がまっすぐではない言動をとったり何かの「ふり」をしていたりしても、すぐバレちゃうんですよね。もし、見る人が気づいているのに「かっこいい行動だから」って見て見ぬふりしてくれてたら、やっぱりそれは本当の「かっこよさ」じゃないのかなと思って。気持ちも言葉もまっすぐにぶれないことがかっこいいと思います。

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――新しい地図で一緒に活動している稲垣吾郎さんや草彅剛さんにも、それぞれ「かっこよさ」を感じますか?

香取 ふたりともかっこいいです。僕にはない、憧れるかっこよさがあるかもしれない。吾郎ちゃんは「自分はこうしたいんだ」ってことを曲げずに、マイペースなところがかっこいいですね。マイペースっていうと人のことを考えなくてわがままってイメージもあるかもしれないけど、自分のペースを崩さずに生きていくってなかなかできないことだと思うんですよね。それこそぶれてないっていうか。

草彅くんも、そういうところは吾郎ちゃんに似てるかもしれないです。ギターを弾きたいって思ってずっと続けて、みんなの前で披露できるくらいになったりとか。本当2人ともぶれないですね。

――今回のドラマで演じる刑事・万丞渉(ばんじょう・わたる)は、捜査の第一線から外れてやる気のない日々を過ごしてはいるものの、熱い部分も持っているキャラクターだそうですね。香取さんが万丞に惹(ひ)かれる部分はありますか?

香取 今から役ができていくということもあるんですけど、台本を読んでみてもまだ「この男がどんな男なのか」が見えない。その見えないところが好きだし、ドラマもそんなところからスタートすると思います。

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©「アノニマス」製作委員会

――香取さん自身も、自分の中に「熱さ」はありますか?

香取 熱さ……なんだろう。今、こういう状況になってわかったことなんですけど、人への思いですかね。人と会って握手してハグして、目を見て話し合って、触れあう。そういうことが好きなんだなって。僕はそういうところが熱い人だったんで、リモートで取材されたりするこのニューノーマルな生活にちょっと困っています。もうちょっと時間がたったら、直接お会いして取材してもらえたらいいですね(編注:本インタビューはリモートで行われた)。

――ドラマにも関連しますが、SNSについてはどうとらえていますか? 会えない中でのコミュニケーションだとも思いますが。

香取 僕もTwitterなどに関しては炎上のイメージもあったんで、怖いものなのかなと思ってたんです。でも、いざ始めてみたら、温かい場所だなと思いました。3年やってみて、ファンの方と直接コミュニケーションもとれるし愛も感じる場所だなと。もちろん、中には見たくない言葉を見ることもあります。そういうものの数が増えると嫌だなと思うときはあります。

でも、SNSを避けて生きていくことって、時代がひっくり返らない限りはないんじゃないかなって。どう付き合っていくのがいいかわからない人もいると思うので、もっと教えてもらう機会があればいいのにって思ってたんです。このドラマもフィクションだけど、そういうヒントになることが描かれていたらいいなと思います。

(取材・構成=西森路代 撮影=宮田浩史 ヘアメイク=石崎達也 スタイリスト=細見佳代)

※時計¥1,650,000/OMEGA(03-5952-4400)

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いつまで風船を持てるのか 香取慎吾、かわいさとの勝負

 

プロフィール

香取慎吾(かとり・しんご)
俳優・歌手
1977年、神奈川県生まれ。1991年CDデビュー。2017年に「新しい地図」を立ち上げ、アート作品制作やショップディレクションなど活動の幅を広げている。2020年1月1日には初のソロアルバム『20200101』 をリリースした。

 

作品情報

いつまで風船を持てるのか 香取慎吾、かわいさとの勝負

ドラマ『アノニマス〜警視庁“指殺人”対策室〜』
監督:及川拓郎 湯浅弘章 大内隆弘 
脚本:小峯裕之 玉田真也 入江信吾
音楽:山下宏明 丸橋光太郎
出演:香取慎吾 関水 渚 MEGUMI 清水尋也 / 山本耕史 シム・ウンギョン(特別出演) 勝村政信 ほか
テレビ東京系にて、1月25日から毎週月曜よる10時
©「アノニマス」製作委員会

警視庁は世の声に応えて、SNSでのトラブル専門対策室「警視庁指殺人対策室」(通称「指対(ゆびたい)」)を新設した。ネットの情報を分析し、誹謗(ひぼう)・中傷によるトラブルや事件の解決を目指し市民からの相談に乗る……そんな理念を掲げつつ、実際には世間に対するポーズとしてつくられた部署だ。ある出来事から捜査の第一線を引いた刑事・万丞渉(香取慎吾)が、このチームに召喚された。ほかのメンバーも、出世街道を外れた曲者ばかり。彼らはSNSから生まれる事件を解決できるのか――。

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