THE ONE I LOVE

「僕らは表現が驚くほどうまいアーティストとは別の道を歩む」HONEBONEが選ぶ愛の5曲

こんな時代だからこそ、愛を聴きませんか、語りませんか──。実力派アーティストが“愛”にまつわる楽曲を紹介する連載「THE ONE I LOVE」。

今回は、昨年12月に初のベストアルバム『一本勝負』をリリースした2人組アコースティックユニット・HONEBONEが5曲をセレクト。極限まで装飾を排除した武骨なサウンドでストレートに言葉を伝えるスタイルの彼らが考える“愛の曲”とはどういうものなのか。エミリ(Vo)とカワグチ(G)の2人にインタビューを行い、選曲の意図を語ってもらった。

〈セレクト曲〉
01. Dua Lipa「IDGAF」
02. 岡村靖幸「カルアミルク」
03. 秦基博「鱗」
04. J.Y. Park feat. Jessi「Who’s your mama?」
05. HONEBONE「生きるの疲れた – 一本勝負 ver.」

■Dua Lipa「IDGAF」

エミリ “愛”をテーマに選曲するとなって、すぐに浮かんだのがこれです。失恋ソングなんですけど、私が大失恋をしたときにたまたまSpotifyから流れてきて、「えっ、今の私じゃん!」と感じました。「あんた連絡してきてなんなの?(You call me all friendly)」「私はもう忙しいから相手できないけど?(I’m too busy for your business)」みたいな歌詞なんですけど、私も実際に別れた相手から急に連絡が来て、「自分から振ったくせになんなの?」みたいなことがあって(笑)。私自身があまりそういう恋愛の曲を書かないので、恋愛あるあるをすがすがしく歌ってくれるところに一番グッときましたね。

歌うテーマは違うけど、“ぶっちゃけ感”みたいなところではHONEBONEとも共通点があるのかも。タイトルからして「I don’t give a f●ck(知るかよ)」だし、そうやって強い言葉で毒づいちゃう感じが好きです。HONEBONEは世の中の流行とはだいぶ違う方向性の音楽をやっていますけど、実はけっこうはやり物が好きなので、デュア・リパとかも普通に聴くんですよ。めっちゃミーハーだよね。

カワグチ はやりに乗っかる能力がないだけでね(笑)。本当は乗っかりたいんですよ。

 

■岡村靖幸「カルアミルク」

カワグチ 僕は岡村靖幸さんがめちゃくちゃ好きなので、ラブソングを選ぶとなった段階でまず岡村さんの曲

を1曲選ぼうと思いました。ただ「カルアミルク」は岡村さんの中で最も有名といえる曲なんで、にわかと思われたら嫌だなとも思ったんですけど(笑)、結局これが一番いいなと。

ラブソングって、要は「あなたが好きです」ということを、手を替え品を替え表現するものですよね。ポップスの長い歴史の中であらゆる表現方法が出尽くした感がありますが、「カルアミルク」は「もう新しい表現はできないんじゃないか」という壁を軽々と乗り越えてしまった曲だと思います。「好き」とか「愛してる」という言葉が全然使われていないことも理由の一つですが、それだけじゃない。僕自身は六本木にも行かなければカルアミルクも飲まないので(笑)、自分とは全然関係ない世界の出来事が描かれています。それなのに、なんか共感できるんです。この切ない思い出を自分も持っている気がする、みたいな。

歌詞も岡村さんならではの独特のものですけど、ボーカルもそうなんですよ。名曲なのでいろんな人がカバーしているものの、本当は岡村さんにしか歌えない曲だなって。もちろん誰が歌っても“いい曲”であることに変わりはないんですが、別物にしかならない。

 

■秦基博「鱗」

エミリ ラブソングとしてとても美しい曲なんですけど、好きで聴くための曲というよりは、歌い手として勉強になる1曲です。サビの繰り返しが多いのに聴いていて全然飽きないので、「どうして飽きずに聴けるんだろう?」ということが気になって。それでこの曲の秦さんのボーカルを研究し始めたんです。ほかの秦さんの曲は正直ほとんど知らないんですけど(笑)、この曲だけはめちゃくちゃ、何十回も聴いてます。最近もずっと聴いてる。ほとんど教材みたいな感じです。

たぶん、伸びのある声としゃがれ声を秦さんがコントロールして使い分けてるんですよ。同じようなメロディーが続いても聴き手を飽きさせないための工夫がすごく高度で、ボーカリストとして本当に参考になる。HONEBONEの音楽はアコースティックギター1本と歌だけで演奏することがほとんどなので、秦さん以上に歌い方で変化をつけることが重要になると思うんです。

昔から、カッコいいと思うボーカリストや参考にしたいと思うボーカリストは圧倒的に男性が多いんですよね。ないものねだり的に、自分にできないことをやっている人の曲を好きになりがちなところはあると思います。

 

■J.Y. Park feat. Jessi「Who’s your mama?」

カワグチ これも岡村さん同様、お決まりの言い方をしないラブソングとして度肝を抜かれた曲です。魅力的な女の子を見たときに「お前の母さんはどんなやつなんだ?」とか「どんな育て方をしたらこうなるんだ?」みたいに遺伝子レベルにまでさかのぼって求愛するって、なかなかない視点なんじゃないかな。僕は韓国語はわからないですけど、題名が「Who’s your mama?」だったので、「なんだそれ?」と気になって、調べてみたらそういう内容だったっていう。

ちなみにJ.Y.Parkさんのことはプロデューサーだとばかり思っていて、歌手でもあると知ったのはNizi Projectから。僕はK-POP自体がけっこう好きで、韓国演歌とかも好きです。日本の演歌と本当に変わらないんですよ。とくにメロディーの部分などにそう感じます。そういう共通点があるから琴線に触れるんじゃないかな。

 

■HONEBONE「生きるの疲れた – 一本勝負 ver.」

カワグチ 僕たちの曲にはラブソングがほとんどなくて、今回のベストアルバム『一本勝負』にも不倫っぽい歌が1曲あるだけで(笑)。その中で、長く歌ってきたことで“愛の曲”として育ってきた「生きるの疲れた」を選びました。

作った当初は、かなり個人的なつぶやきに近いものだったんです。それこそTwitterに「生きるの疲れた」って吐き出すのと同じような感覚で作ったんですけど、ライブでやっていく中でだんだん僕らの代表曲みたいになってきて、お客さんからも「共感しました」「これを聴いて癒やされました」みたいに言ってもらえるようになって。個人的なつぶやきでしかなかったものが聴く人の心に届いてポジティブな作用を及ぼしていることを思うと、これは広い意味でラブソングと言えるんじゃないかなと。

エミリ 結果、人類愛なんじゃないかな。そんな大きいテーマで書いたつもりはないんですけど(笑)。この曲を聴いたお客さんが泣いてくれたり「聴けてよかった」って言ってくれたりしているのを見ると、おこがましいですけど「歌ってあげたいな」っていう気持ちになったりするんですよ。この曲をブレずに歌ってきたことで自分も丸くなったし、お客さんにも優しくしたいなって思えるようになって。結果的に、歌うたびにすごく愛を感じる曲になったなと思います。お客さんとの一体感がとくに生まれる曲です。

カワグチ 愛を伝えてるんだよな、この曲で。

エミリ 恥ずかしいけどね(笑)。「愛を伝えます」って言うのは恥ずかしいので、この程度で許してもらえませんかみたいな感じで。

 

■HONEBONEが武骨で実直な歌だけを歌う理由

エミリ HONEBONEの歌詞にわかりにくい言葉や表現が出てこないのは、もちろん意識的にそうしている部分でもあるんですけど、結局うまいこと言えないだけっていう自覚もあって(笑)。そうやって素直に作ることが誠実さにつながると思うし、それこそ愛なんじゃないかと思います。それと、「なんでこんな表現ができるの?」って驚くくらいうまい表現をするソングライターは世の中にたくさんいるじゃないですか。桑田佳祐さんや岡村さん、秦さんもそうですけど。そういう方々のレベルが高すぎることで、逆に私たちが際立っている部分もあるのかもしれない。それもあって、詩的な表現を追求した歌詞をあえて書こうとは思わないところはありますね。

カワグチ 無理をすると不自然なものにしかならない、ということも長年の経験でわかってきたので。おしゃれな感じをやってみようとして「この曲、ちょっとKing Gnuさんみたいにしてみない?」って試してみたら大失敗したりとか(笑)。

エミリ それで自分たちのスタイルを続けていたら、ライブに一時、音楽性や暗い歌詞を評価してくれる年配の方々がたくさん聴きに来てくれるようになったんです。でも、最近は私たちの音楽が刺さる若い子も出てきて、お客さんの年齢層も性別もかなりバラバラになってきましたね。バラバラだけど、総じて疲れている人が多い(笑)。

カワグチ わかりにくい言葉を使わないところも、いろんな層に響く要因のひとつなのかもしれないですね。それを意識的に狙っていたわけではないんですけど、無意識に考えてはいたのかもしれないなと今ちょっと思いました。

(企画制作/西本心〈たしざん〉、取材・文/ナカニシキュウ)

★他のアーティストのインタビューはこちら

 

■HONEBONEセレクト「THE ONE I LOVE」プレイリスト

 

■HONEBONE『一本勝負』

 

「僕らは表現が驚くほどうまいアーティストとは別の道を歩む」HONEBONEが選ぶ愛の5曲

■Profile

HONEBONE(ホネボーン)

エミリ(Vo)とカワグチ(G)からなる2人組アコースティックユニット。2014年より現在の体制での活動を開始し、2015年にアルバム『SKELETON』を発表。以後コンスタントに作品をリリースしながらテレビ番組やラジオ番組にも多数出演し、2020年4月には2人がメインを務める『うたう旅〜骨の髄まで届けます〜』(NHK BSプレミアム)のレギュラー放送がスタート。2021年公開予定の映画『リスタート』(品川ヒロシ監督)ではエミリが主演に抜擢(ばってき)され、HONEBONEとして音楽および主題歌も担当する。

 

【関連リンク】

HONEBONE Official Website
https://www.honebone.net/

HONEBONE(ホネボーン) (@HONEBONE_OFFI) | – Twitter
https://twitter.com/HONEBONE_OFFI

EMILY/HONEBONE☺︎ (@emy_HONE) | – Twitter
https://twitter.com/emy_HONE

KAWAGUCHI / HONEBONE (@kawariver_HONE) · Twitter
https://twitter.com/kawariver_HONE

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