シャープなウェッジシェイプと軽快な走りが印象に残る 3代目トヨタ・セリカ
文: 小川フミオ

1970年に初代が発売されて、99年に出た7代目が2016年まで作られていた「トヨタ・セリカ」。最初のころは、スタイリッシュなクーペに憧れる若者のニーズに応えるマーケット主導型だった。80年代なかばを過ぎると、ラリー選手権参戦などトヨタのスポーティーなイメージを担うように。
(TOP写真:トヨタ・セリカ。クーペといわれたノッチバック版)
今回とりあげるのは、81年に発表された3代目。こちらは北米で成功したモデルだ。2代目はやわらかな線で構成されたスタイリングだったのに対して、直線定規を使ったようなウェッジシェイプ(くさび形)のボディーと、点灯すると起き上がるように動く独特のデザインのヘッドランプ(ライズアップなどとも呼ばれた)が印象に残る。

同時期に出たセリカXXとスタイリングは近いLB(リフトバック)
セリカにとって重要な市場だった北米でも、ここまでシャープなイメージのコンパクトクーペはなく、デザイン的に際立っていたと思う。ファストバックとノッチバックとボディーは2種類あり、個人的にはノッチバックの、すっとリアが長いスタイルがカッコいいなあと思ったものだ。
この3代目において、セリカはサスペンション形式が前後独立懸架方式に、ステアリング形式はダイレクトなフィールのラック&ピニオン式へと、ぐっと現代的な内容になった。これも特徴だ。

当時のトヨタのスペシャルティーカーはデジタルメーター
2.8リッター6気筒エンジン搭載の兄貴分「セリカXX(ダブルエックス)」と同時に発表されたため、強烈さにおいて、こちらのセリカは分が悪かった。それも事実である。セリカの最大排気量は2リッターだったし、そもそも迫力負けという感じがあった。
ファストバックのスタイルは、セリカもセリカXXも写真でみるかぎりほとんど同一。しかし実車では、全長で225ミリぶんの差があったし、後者は派手な格納式ヘッドランプをそなえていた。操縦性に影響するトレッド(左右輪の幅)も大きく違っていた。

クーペ2000GTにはデザイン性も高いハイバックシートが備わっていた
ただし、短いボディーと1トン少々しかない軽量ボディーは、軽快な走りをもたらす。これがセリカの長所といえる。途中で1.8リッターDOHCターボエンジンが追加されたりと、スポーツ性は増していった。84年から世界ラリー選手権サファリラリー3連覇を達成し、その実力を見せてくれたのである。
ファンである私が当時持っていた不満としては、83年8月のマイナーチェンジで、フロントマスクのデザインが変更されたことがあげられる。ヘッドランプがそれまでは(ポルシェ928のように)むきだしのものが起き上がる形式だったのを改め、85年の4代目を先取りする格納式になったのだ。

この代から1.8リッターは「レーザーユニット」と称された新世代になった
理由は、当初のデザインがあまり好まれなかったためだとか。でも初期のヘッドランプが個性を生んでいたので、おかげで今でもすぐ3代目セリカが思い出せるのも事実。ここはマーケット主導型でない方がよかった。
(写真=トヨタ自動車提供)
【スペックス】
車名 トヨタ・セリカクーペ1800ST
全長×全幅×全高 4435×1665×1310mm
1832cc直列4気筒 後輪駆動
最高出力 100ps@5400rpm
最大トルク 15.5kgm@3400rpm