小川フミオのモーターカー

自然と体になじむ、モビリティーの新世代 マツダMX-30 EVモデル

マツダが2021年1月28日に、「MX-30 EVモデル」を発売した。内外の自動車メーカーがこぞって電気自動車(EV)へのシフトを進めるなか、マツダ初の量産ピュアEVは、マツダならではといえるクルマ作りの主張をもったモデルとして、注目に値する。

クロスオーバーSUVというカテゴリーに入るMX-30。2019年の東京モーターショーに、EVのプロトタイプがなんの前触れもなく登場して、大きな話題を呼んだ。“聞いてないよ!”と、私も驚いた口である。

フロントグリルの開口部を小さくし、ヘッドランプの上下幅も狭くするなどスポーティーなイメージ

フロントグリルの開口部を小さくし、ヘッドランプの上下幅も狭くするなどスポーティーなイメージ

ボディーデザインをとってみても斬新。基本は、既発のマツダ3やCX-30と共通であるものの、クーペ的な前後長短めのルーフに、寝かされたリアウィンドーのキャビンで、パーソナル感を強めている。さらに、フリースタイルドアという、かつてのRX-8(2003年発表)ゆずりの観音びらきのドア採用だ。

後席用のドアは後ろヒンジとなっている

後席用のドアは後ろヒンジとなっている

デザインと並んで特筆に値するのが、新世代パワートレインを搭載するコンセプト。2020年10月に、まずマイルドハイブリッドモデルが登場。次いで今回のEVモデル。こののち、小型ロータリーエンジンを駆動用バッテリーへの電源供給用(レンジエクステンダー)に使うモデルが予定されている。

ルーフが2トーンになっているのも特徴的

ルーフが2トーンになっているのも特徴的

EVモデルに乗ると、たいへんスムーズな走りが印象的だ。「従来のEVではモーターの力の大きさをあえて強調する制御をしているクルマもありましたが、もはやそんな時代ではないと思います。いかに気持ちよく自然に運転できるかこそ、これからは大事」。MX-30の開発主査を務める竹内都美子さんは語る。なるほどと思う。

寝かされたリアウィンドーがスポーティーな印象

寝かされたリアウィンドーがスポーティーな印象

電気モーターなので、走り出しからすーっと、ストレスを感じさせずに加速していく。ここがガソリン車とちがうところ。D(ドライブ)のポジションで発進。ステアリングホイール背後のパドルで、加速と減速をコントロールできる。

素材といい作りといいデザインといい、質感の高い作りで知られるマツダ車の例外ではない

素材といい作りといいデザインといい、質感の高い作りで知られるマツダ車の例外ではない

右手側を引けばよりスムーズな加速、いっぽう左手側では減速、という具合。5段ギアにたとえるなら、Dが3速、右がシフトアップで4速と5速、左が逆に2速と1速という感じだ。そこまでギア比は離れていないけれど。

EVの多くでは、アクセルペダルを踏む力をゆるめたときに、ブレーキがかかる力を何段階か選べる。仕組みは「回生ブレーキ」といって、車輪が回る力を利用して駆動用バッテリーのための発電を行う。発電量を多くすると抵抗が大きくなるので、それを減速にも使える。なかには「ワンペダル」といって、アクセルのオンオフだけでほとんど停止までもっていけるモデルもあるぐらいだ。

フリースタイルドアのおかげでかなり開放的な雰囲気

フリースタイルドアのおかげでかなり開放的な雰囲気

MX-30でも、Dで走り出し、よりスムーズな加速を楽しみたいときは、頭の中でシフトアップをイメージして、右手でぽんっぽんっと抵抗を減らしていく。渋滞などで減速が必要なときは左を使う。市街地でものろのろ運転のときは、回生の度合いが強いモードを使えばよい。

MX-30EVモデルの特徴は、「ナチュラルな操縦感覚を重視」しているところにある、とマツダで開発を担当した車両開発本部・操安性能開発部の梅津大輔さんは言う。そのためブレーキ回生時に発生する減速Gは控えめで、ワンペダルにも消極的。

「HIGHEST SET」グレードに用意されるクロスと合成皮革張りのシートは座り心地がいい

「HIGHEST SET」グレードに用意されるクロスと合成皮革張りのシートは座り心地がいい

梅津さんらが大事にしたのは、上記のような自然な気持ちよさ。アクセルペダルをぱっと閉じたときや、カーブを曲がるためにステアリングホイールを切ったときも、ぎくしゃくしないよう、モーターが“仕事”をする。ドライバーが気づかないうちに。微妙な駆動力を使って動きを安定させるのだ。

EVってパワフルだ! なんて叫んでいるのは、もはや古いのかもしれない。MX-30EVモデルを体験すると、自然に体がなじんでしまい、あとでガソリン車に乗ると違和感を感じてしまうほどなのだ。モビリティーの新しい時代の幕開けに立ち会っている気になってくる。

開発中の「Self-empowerment Driving Vehicle」(クルマ椅子の人も運転できる仕様)は、フリースタイルドアのおかげでクルマ椅子(専用デザインの軽量タイプを試作中)を自分で積み込むことを可能とする

開発中の「Self-empowerment Driving Vehicle」(クルマ椅子の人も運転できる仕様)は、フリースタイルドアのおかげでクルマ椅子(専用デザインの軽量タイプを試作中)を自分で積み込むことを可能とする

人によっては、このクルマの航続距離256キロは短すぎると思うかもしれない。107kWと270.9Nmというモーターの性能がつつましすぎるというかもしれない。通勤や普段使いが多い人なら、これぐらいの航続距離で使えるはず、というのがマツダの言い分だ。

それでもなにかと不安という人は、冒頭で触れたレンジエクステンダーを待つといいだろう。日産ノートと同様の、いわゆるシリーズハイブリッドになるはずで、燃料タンクにガソリンが入っている間はどこまでも走っていける。

将来的にエンジンが収まるスペースが空けられている

将来的にエンジンが収まるスペースが空けられている

パワーについてマツダは興味深いことを言う。バッテリーを大きくして、直流を交流に変えるインバーターの性能を上げれば、よりパワフルなクルマが作れる。ただしそれと引き換えに、車重は重くなり、バッテリーの製造にまつわる環境負荷が大きくなるというのだ。

急速(DC)と普通(AC)、二つの充電方式に対応

急速(DC)と普通(AC)、二つの充電方式に対応

いまMX-30EVモデルには35.5キロワット時と比較的小さなバッテリーが搭載されている。参考までに書くと、ポルシェのすばらしく高性能なBEV「タイカンターボ」のものは93.4キロワット時だ。 

MX-30EVモデルのバッテリーはコンパクトゆえ、工場出荷時に、自然エネルギーを使って満充電する(できる)。クルマ生産にまつわるもろもろの分野でエネルギー消費を減らし、CO2排出量など環境負荷を低減してゆくというのが、マツダの企業姿勢なのだそうだ。応援したい。

クーペ的なキャビンの造形で、パーソナルな雰囲気が強い

クーペ的なキャビンの造形で、パーソナルな雰囲気が強い

(TOP写真はマツダ提供、他は筆者撮影)

【スペックス】
車名 マツダMX-30 EVモデル
全長×全幅×全高 4395×1795×1565mm
電気モーター 前輪駆動
最高出力 107kW
最大トルク 270.9Nm
価格 451万円~

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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