私の一枚

人生を変えた東大留学時の体験 いやしの歌姫サラ・オレインさん

  • 2017年2月20日

2009年ごろ、留学していた東大・駒場キャンパスで

  • 3オクターブの声を操り、ゆらぎ成分の入った歌声で世界をいやす歌姫サラ・オレインさん

  • サラ・オレインさんが新しくリリースした「ANIMA」。3240円(税込み)

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 これはシドニー大学在学中に、東京大学に留学していた時の写真です。2008年から1年半の留学でした。当時、東大には世界から25人の交換留学生が入学できましたが、オーストラリアでの大学の割り当てはたった1人だけ。もともと私は日本の言語や文化に興味があり、特に三島由紀夫の「金閣寺」の世界観や美学に魅了されていたので、日本に留学したい強い希望がありました。留学先としていろいろな日本の大学を検討し、やはり首都であり日本の政治・文化の中心である東京に住み、学びたいと思ったので、東大に入れるよう、チャレンジしたのです。

 実は私は中学生の時にいじめがきっかけで登校拒否になっていました。高校にあたる時期は自宅で一人勉強し、再び学校に戻ったのは大学からです。もともと勉強は好きでしたが、大学では成績や意欲を形として残したい気持ちでいっぱいでした。中学・高校時代に学校に通えなかった悔しさをバネに、自分の可能性を証明したい気持ちが強くあったのだと思います。その結果、シドニー大学で最高点を取り、東大への留学を勝ち取ることができたのです。

 日本に来て、生活の準備をしていた時、とっても驚いたのが駒場の寮の部屋の狭さでした。小さいバスとトイレが一緒になった小さな部屋は、間取り図でみると牢獄のよう(笑)。オーストラリアは家も部屋も広いので、どうなることかと思いましたが、実際に住んでみると、コンパクトで何もかも手が届くのが便利で、快適でした。またそんなことを気にするより、初めて母国と親元を離れた一人暮らしは自由で楽しくて。日本人をはじめさまざまな国籍の人と知り合い、いろんな話をするのがすごく刺激的でした。

 映画や音楽などを楽しんだり、カラオケのオールナイトや居酒屋に行くことも。時間があれば北海道から沖縄まで友人と旅に出て、日本文化を堪能しました。京都では憧れの金閣寺も訪れ、その美しさに圧倒され、三島由紀夫の気持ちがよくわかりましたね。

 そして留学の後半、ある出会いが私の人生を変えました。ゼノブレイドというゲーム音楽を担当した光田康典さんが、ネイティブの英語で歌える人を探していて、私が歌うことになったのです。歌唱は母国にいたとき声楽のレッスンで少し勉強したぐらいだったのですが、懸命に歌いました。

 帰国後、その歌がとても評判がよかったと聞き、この縁を大切に日本で歌手を目指そうと決意しました。親とは「1年の期限」と約束して再び来日。広告会社でコピーライターや翻訳のアルバイトをしながら音源を作るなど歌手への道を模索しました。約束の1年になる頃、音源が現在のレコード会社に渡り契約となったのです。父が亡くなってすぐの出来事だったので、この幸運は父からのプレゼントだと今も思っています。

 留学で初来日してから約8年、歌手活動はどんどん広がっています。私にとって、日本の文化を深く好きになり、多くの人と出会い、歌手という道までつながった、とても大切な体験でした。人生は本当に何が起こるかわかりませんね。

    ◇

さら・おれいん 歌手、アーティスト。オーストラリア出身。5歳からバイオリンを始めオーストラリア国内で活躍。シドニー大学を卒業。2012年にアルバム「セレステ」でメジャーデビュー後、日本をベースに歌手活動を行う。現在、NHKEテレ「おとなの基礎英語」にレギュラー出演中。テレビ朝日系「報道ステーション」にはコメンテーターとして出演。声には、いやし効果があると言われる「f分の1ゆらぎ」が含まれるといい、その歌唱力から「声帯のアスリート」とも称されている。

◆サラ・オレインさんが、2月22日にアルバム「ANIMA」をリリースする。NHKドラマ10「お母さん、娘をやめていいですか?」の主題歌「Little Doll」をはじめとした新曲、「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」「大いなる世界」「ネッラ・ファンタジア」といったクラシカル・クロスオーバーの人気定番曲、そして自身が書き下した最新オリジナル曲の3本柱で構成された全13曲の充実作。

「『ANIMA』というタイトルの通り、魂を揺さぶる曲を集めました。オリジナルもありますが、以前から私の魂を揺さぶっていた『Hallelujah』や『タイム・トゥ・セイ・グッバイ』などの名曲も。コンサートで歌ったことはありますが、アルバム化には恐れ多いと思っていたところがあったのですが、自分なりの自信がつき、今歌うべきタイミングだと思ったのです。アルバムにはいろんな自分、特に深い内面を表現したつもりです。ソウルフルな音楽で、魂が震えるような体験をしていただけたらうれしいですね」

(聞き手:田中亜紀子)

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