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初心者でも安心、アナログレコードの音を気軽に楽しめる下北沢のジャズ喫茶

  • 2017年12月8日

  

 最近、アナログレコードの人気が続いている。デジタルサウンドを聞いて育った世代が、アナログならではの臨場感のある音に惹(ひ)かれているのだろう。

 レコードで聴くことが似合う音楽の代表格といえば、やはりジャズではないだろうか。そして、お酒のグラス、またはおいしいお茶のカップを傍らに、レコードの心地よい音を楽しめる場所がジャズ喫茶だ。ジャズのファンでなくても、一度入ってみたかったのだが、初心者にはやや心理的なハードルが高い場所でもある。

 だが、東京・下北沢には、気軽に入れると人気のジャズ喫茶があるという。早速訪ねてみた。

流すレコードのジャンルに“こだわりがない”ことにこだわる

アンティークの椅子やランプが置かれていて落ち着いた雰囲気の店内。窓際のカウンター席からは下北沢の路地裏の景色を眺められる

 Jazzと喫茶 囃子(はやし)は扉を開けると、ホッと一息つける空間が迎えてくれる。木製の梁(はり)を生かした内装、アンティークランプのオレンジのあかりがやさしくテーブルを照らす。この内装はオーナーの林美樹さんが通った渋谷の「茶亭 羽當 (はとう)」、下北沢の老舗喫茶「トロワ・シャンブル」を参考にしたそうだ。

 店内ではジャズだけでなく、他ジャンルの曲も流している。たとえばWar(ウォー)の「World Is a Ghetto(ワールド・イズ・ア・ゲットー)」はソウル・ファンクだ。流すレコードのジャンルに“こだわりがない”ことがこだわりなのだそうだ。

 取材した際は、アフリカンでリズミカルなRay Bryant(レイ・ブライアント)の「Alone at Montreux(アローン・アット・モントルー)」が流れていて、心地良かった。カウンターに座り、レコードの音に耳を傾けていると、いつしか自分の世界に入り込んでしまう。そうしている間にもキュンとさせる艶(つや)っぽい音が印象的なJohn Lewis(ジョン・ルイス)の「Grand Encounter(グランド・エンカウンター)」、男性的でせめのあるサウンドが耳に響くJohn Coltrane(ジョン・コルトレーン)の「Coltrane plays the blues(プレイズ・ザ・ブルース)」がJBLのスピーカーから次々と流れる。

 これらはジャズの初心者でも聞きやすい曲なのだそうだ。林さんが、お客さんに合ったレコードを選んでくれるのだ。聴いている曲の名や歌い手が知りたければ、カウンターの右上に置かれたレコードジャケットで確認できる。

 また、林さんに「ピアノの音が好き」「トランペットが聞きたい」と伝えれば、その楽器の魅力を感じられる1枚を選んで流してくれる。初心者にとってはありがたい心配りだ。

ジャズ喫茶「マサコ」のDNAを引き継いでオープンしたJazzと喫茶 囃子

Jazzと喫茶 囃子の店内の様子。オーナーの林美樹さんがコーヒーを淹れている姿を眺めながらジャズのサウンドに酔いしれた

 林さんは、10代の頃、サラ・ヴォーンの「枯葉」を聞き、シャンソンの曲に詩をのせずに全編スキャットしているファンキーなボーカルのすっかり魅了されたそうだ。そして、林さんのジャズ好きは、下北沢の老舗ジャズ喫茶「マサコ」でアルバイトを始めるまで高まる。

 ジャズ喫茶には、ファンが一心にレコードの音に耳を傾けているイメージがあるが、ジャズ喫茶「マサコ」は下北沢という土地柄もあり、老若男女が集う和気藹々(わきあいあい)としたジャズ喫茶だった。

 林さんは1年ほど前まで輸入代理店を友人としていたが、多忙な生活に心身共に疲れ、「どうせ忙しいのなら好きなことをしよう」と思い立ち、下北沢に「Jazzと喫茶 囃子」をオープンした。林さんの頭には、2009年に惜しまれつつ閉店した「マサコ」のイメージがあった。

 「オープンしてまだ1年だが、常連のお客さんが増え、お客さん同士が仲良くなるのを見るのがうれしい」と林さん。夜は音楽好きや常連客が集うが、土曜日の昼間はスイーツ目当ての女性客で満席になることもあるそうだ。このように曜日や時間帯によってお店の雰囲気が変わるのも、このお店の魅力だろう。初心者なら、まずは昼間がオススメだ。

 ジャズ喫茶の中には、曲を静かに聴こうと、店内での会話はささやく程度がマナーとされることもある。だが、林さんのお店では会話は自由だ。「気負うことなく訪れて、リラックスして音楽を聞いて欲しい。日常から離れて気持ちをリセットしてくれたら」(林さん)

2カ月に1度はDJイベントも開催、幅広い音楽のDJパフォーマンスを楽しめる

レコードから流れる音楽に耳を傾けると、CDやデジタルでは拾いきれない細かい音、グルーブ感、息遣いなどが感じられる

 Jazzと喫茶 囃子では2カ月に一度、DJイベントが開催される。KZRやdomeといったDJがブースに入り、パフォーマンスを繰り広げる。スタンダード・フュージョン・スピリチュアルからディープハウス・エレクトロファンクまで幅広い音楽を楽しめる。

洋食のハヤシライスとは一味違う「囃子(はやし)ライス」900円。お酒、コーヒーどちらにも合う味だ

 音楽以外の魅力も紹介しよう。人気メニューの「囃子(はやし)ライス」。じっくりと煮込まれトロッとした囃子ライスは絶品だ。一緒に飲みたいのが、ハイボール。ウイスキーが惜しみなく注がれていて、パンチがある。アルコールが苦手でもソフトドリンクメニューも充実していて安心だ。

 20代の女性が金曜日の夜遅くに来店し、ビール一杯を勢いよく飲み干し、帰ることもあるそうだ。

 

 ちょっと気分転換したくなったら、アナログレコードの音とおいしいごはんが楽しめる空間を目当てに、下北沢を訪れてはいかがだろうか。

入り口に掲げられたオシャレな看板。猫のイラストはYUKIなどのCDジャケットも手がけたオオツカユキコさんの作品

(文・ライター 木下あやみ、写真・和田咲子)

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