生活費2万円でも「毎日が充実」 ピンク色と美人ギャルに囲まれて生きる現代作家

  • 2017年12月14日

  

 人生において、住宅街を歩いていて、「この家、ヤバイ……!」と思うことはなかなかない。

 だが、竹ノ塚駅から徒歩十数分。突如、出現するのが、蛍光ピンクに塗り固められ、緑色の髪に大きな瞳のギャルの絵が描かれた「あさくら画廊」だ。

住宅地の一角に突如現れるピンク色の「あさくら画廊」。近所からクレームは来ないのかと心配になるが、「昔からこの近所の人とは顔見知りなので、人間関係はとても円滑です」とのこと

 一見何気ない普通の住宅街に、あまりにも唐突なピンクの異物。全く周囲に溶け込まない妖しい画廊がある。なぜ、こんな「画廊」を作ろうと思ったのか。画廊オーナーであり、アーティストの辻修平さんはこう語る。

「5年前に、僕自身の祖母が老人ホームに入居したのを契機に、この家は空き家になったんです。そこで、『木造の一軒屋をピンク色のアートにしたらおもしろいのでは』と考えたのが、この家を改造するきっかけでした」

 画廊のなかに一歩足を踏み入れると、壁、床、天井、すべてがピンク!
 また、室内には、ところせましと辻さんが作成したオブジェや絵が飾られている。特に、そのモチーフとして繰り返し使われているのが、長いまつげをびっちりとはやした「ギャル」。

一瞬「ピンクライトでも使用しているのか」と思いきや、これはすべてリアルなペンキ。一人暮らしの男性の部屋とは思えないほど、キレイに掃除されていた

「ギャルのファッションに、すごく興味を持つようになって。その後、ギャル雑誌をいろいろと買いあさって、モチーフとして使うようになりました。ロリータとか青文字系雑誌のファッションも好きです。最近、ギャル雑誌や青文字系が続々と廃刊してしまっているので、参考資料探しに困りますね」

 画廊は、辻さんのアトリエ兼自宅。水曜日以外は、毎日オープンしており、入場料無料で誰でも入ることができる。そのため、あさくら画廊の噂を聞きつけた人々が、全国各地から、ほぼ毎日のように訪ねてくるという。

「僕は、ほぼ24時間あさくら画廊にいて、朝3時に起き、夜8時には寝ます。それ以外の時間は、ほぼ制作活動に充てているのですが、誰かが来てくれたときには、ちゃんとお話しするようにしています。訪れてくる人は、リピーターもいれば、一見さんもいたりと、非常に様々です。

 初対面の女子高生から恋愛の悩み相談を受けることもあれば、中国の旅行客が『友達のインスタグラムで話題になってたから』と観光感覚で訪れることもあります。この前は、酔っぱらったおじさんがふらりと入ってきたこともありましたね」

スキンヘッドで長身の辻さんは、一見強面。だが、撮影中も「足場は大丈夫ですか?」「好きなところを撮影してください」などと、とても丁寧で誠実に対応してくれた

 アート活動のみで生きていきたいという強い意志を持つ辻さんの生活費は、画廊内で実施している似顔絵描きやオブジェ販売などで得た収入・毎月2万円ほど。そのお金で、近所の格安スーパーで購入した豆の缶詰などを食べて暮らしているという。

「食費と画材でほぼ生活費はなくなります。『生活はつらくないですか?』と言われますが、あまり将来に不安を抱かないタイプみたいです。祖母の家に住んでいるので、家賃がないのでありがたいですね。ただ、悩みといえば、この画廊は築数十年の木造家屋で、エアコン等はないんですよ。真夏は熱中症寸前ですし、真冬は凍死寸前です。今年の冬をちゃんと越せるのかが、目下の悩みですね(笑)」

 清貧な生活だが不満はなく、自らのアート活動に打ち込めることで十分満たされる。「黄色い家」ならぬ、「ピンクの家」に住みながら、己の芸術にのみ向き合う辻さんの背中に、現代のゴッホの姿を見た。

(文 藤村はるな、写真 小島マサヒロ)

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