小川フミオのモーターカー

幻のパイクカー、日産「エスカルゴ」

  • 世界の名車<第193回>
  • 2017年12月25日

複雑な立体形状のボンネットは職人が手でたたいて成形していたという(写真提供=日産自動車)

 “幻の”と形容したくなる日産「エスカルゴ」。1989年1月発売で丸2年間生産され、一時期はバブル期の東京の街で多く見かけたものだが、昨今はとんと見かけなくなってしまった。

 ユーモラスという言葉はこのクルマのためにあるといってもいいぐらいだ。半独立型のヘッドランプがカエルのようだったし、ルーフラインは車名のとおり“エスカルゴ(カタツムリ)”を連想させた。

 「Be-1」や「Pao」といった日産自動車が“遊び心ある「とんがった」クルマづくり”を目指したパイクカーシリーズとして登場。唯一の商用車だった。名前の由来はさきに触れたようにエスカルゴ(カタツムリ)に貨物を意味するカーゴをひっかけていた。欧文表記では「S-Cargo」である。

センターメーターにダッシュボードから生えたATセレクターが家電のようなデザインだ(写真提供=日産自動車)

ATセレクターなどをダッシュボードに移したことでベンチシート化が実現した(写真提供=日産自動車)

 ぼくはこのクルマの発表会に出かけたおり、シトロエンの“AKバン”のイメージを想起しながら、ほとんど平面を曲げただけで構成したようなスタイリングのユニークさに感心した記憶が鮮明に残っている。

 いまも手元にこのときもらったエスカルゴのキーチェーンが残っている。すごく好きだったわけでもないけれど、職人が手でたたいて成形していたというクラムシェル(二枚貝)型の大型ボンネットなど凝ったところもあって、印象に残る1台なのだ。

リアパネルにウィンドーがないものや、キャンバストップを持つタイプも存在した(写真提供=日産自動車)

大きなウィンドーがはめこまれたリアゲートはバンパーレベルから開く(写真提供=日産自動車)

こんなふうに使ってほしいというデザイナーのスケッチ(写真提供=日産自動車)

サイドウィンドーも弧を描いていて造形は意外に凝っている(写真提供=日産自動車)

 商用車として販売され、車体後ろ半分はほぼパネルのみ。車種によっては楕円(だえん)形の小さなウィンドーがはめこまれていた。73馬力の1.5リッターエンジンの前輪駆動だ。

 3.5メートル弱の全長に対して全高は1.8メートル超あり、強い風が吹くと倒れるんじゃないかとよけいな心配をしたくなったものだ。

 荷室は、そもそもサイズ的に余裕あるクルマでないうえにホイールハウスの張り出しも大きい。つまり実用性が高くなかったと聞いたことがある。

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 まあでも、こういうクルマがあると街の風景が楽しくなる。日産自動車はまた新しい時代のパイクカーを作ってくれないだろうか。

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