小川フミオのモーターカー

マニュアル車のだいご味、ホンダ「シビックハッチバック6MT」

  • 文 小川フミオ
  • 2018年2月8日

ホンダ「シビックハッチバック6MT」、始動時のメーター表示が凝っている

 ホンダが2017年7月に発売した10代目シビック。セダンとハッチバック(それに高性能のタイプR)の同時発売だが、よく出来ていると感心させられたのがハッチバックのMT車だ。

 エンジンはセダンもハッチバックも共通の1.5リッター「VTECターボ」。駆動方式は前輪駆動である。装備の違いによるグレード分けはない。違いは変速機だ。

全長4520ミリ、全幅1800ミリ、全高1435ミリで、ホイールベースは2700ミリと長い

 無段変速機CVTはセダンとハッチバックともに搭載。後者のみ6段マニュアルも設定されている。つまりセダンは一つだけ、ハッチバックは二つの変速機から選べる。

 違いはそれだけでない。ハッチバックの特徴としてセダンよりパワフルな点が特筆に値する。最高出力はセダンの127kW(173ps)に対して134kW(182ps)である。

 最大トルクはCVT搭載モデルの場合、セダンもハッチバックも220Nmと共通だが、ハッチバックのMT車は240Nmである。

 トルク値が高い理由はホンダによると、エグゾーストパイプの形状により排気流量が増えているのと、燃料がハイオク仕様だからという。

6MTはハイオク使用で134kW@5500rpmの最高出力と240Nm@1900-5000rpmの最大トルク

 たしかにフィラーキャップ(燃料注入口のふた)を開けると「ハイオク推奨」とある。“推奨っていうレベルならレギュラーでいいや”と考えると、じつはパワーの面で“損”をすることになる。

 オクタン価の異なるガソリンを混ぜると、エンジンに問題は起きないが、全体のオクタン価が低くなってしまうので、レギュラーにハイオクを足しても(あるいはその逆でも)もったいないことになってしまう。

 なにはともあれ、「シビックハッチバック」をひとことで表現すると、メッセージはごくシンプルだ。“クルマ好きなら一度は乗ってみてほしい”ということに要約される。

 運転を楽しむためのクルマである。その出来ばえがとてもいい。ホンダってこういうクルマが作れるのかと改めて感心した。

 ひとつはエンジン。回転を上げていくと4000rpmを超えてからの伸びのよさがじつに気持ちいい。しかも自分でギアを操作して引っ張るのは、マニュアル車のだいご味である。

 シフトレバーの操作感も感心したポイントだ。ホンダによるとシフトアップにしてもダウンにしても、ギアが吸い込まれるようにゲートに入る感覚を重視したそうだ。

 ギアを合わせるシンクロナイザーを形状まで含めて細かく調整しているという。ゲートとゲートの、いわゆる“トラベル”は少し長めだが、たしかにギアがすっと入っていく気持ちよさ。これもマニュアル車のもうひとつのだいご味といえる。

 マニュアル車が運転できるひとなら、このシビックの適度なトルク感とギアのフィールと(奥のほうでつながる)クラッチを操作すると、この楽しさにとりこになることを請け合う。

 シビックのよさは、それだけではない。操舵(そうだ)感と操縦安定性も傑出している。ステアリングホイールを切るときは超スポーティーというほどではないが、レスポンスはとてもしっかりしている。

テールパイプがセンターからの2本出しなど外観はスポーティーな印象が強い

 コーナリング能力も高く、かなりの速度でコーナーを回ってもじつに安定しているのだ。エンジントルク、アクセルへの反応、サスペンション、それにステアリング。すべてが上手に結びついている。

 シビックを走らせると “さすがF1をやっているだけある!”と思わず声に出して言いたくなるほどだ。

 自分たちの作りたいクルマの姿がはっきりしている感じである。はっきりいって万人向けの「フィット」とは違う。主張がある。それがクルマ全体にみなぎっているのだ。

 ハッチバックのMT車は扁平(へんぺい)率40パーセントの235という比較的幅広のタイヤを装着しているのだが、意外なほど乗り心地はよいのも驚く。ゴツゴツ感はほとんど気にならない。

計器も情報が整理されているしステアリングホイール上のコントローラーも扱いやすい

 「ホンダセンシング」と名付けられたアダプティブクルーズコントロールやLKAS(車線維持支援システム)の統合制御も備わる。

 車線を読みながら先行車に追従して加減速をクルマが行うアダプティブクルーズコントロール。実際に使い勝手はよい。

 MT車で使うと加減速の感覚が足裏に伝わってくる。自分以外のひとがアクセルペダルを踏んでいるような妙な気分に襲われた。

 ひとつ気になったのはシートだ。形状はいいのだけれど、素材のせいとクッションの入れかたのせいだろうか、からだがやや滑って落ち着かないのだ。

 なにはともあれ、これだけ楽しくて280万440円(税込み)である。高いというひともいるだろうが、クルマ好きにはいい買い物になると思う。

 ぼくはこのクルマを猛烈に欲しくなったのだが、最大の問題点がある。スタイリングだ。スポーティーといえばいいのだろうが、やや趣味とは合わない。

 複雑というか煩雑というか多すぎるように感じるキャラクターラインなど、ぱっと特徴がつかみきれない。ぼくはそういうクルマは苦手である。

見かけはスタイリッシュだが素材のせいかやや落ち着かなかったシート

 マッシブすぎるようなフェンダーのふくらみといい、誇張された形状のエアダムといい、高性能な「タイプR」のほうに引き寄せすぎとも感じられる。

 思えばシビックに最初に接したのは、ぼくが高校生のときである。そのときの自分に戻ったら、最新モデルを見て“目がハートのかたち”になったかもしれない。

 年齢がいってもマニュアルが与えてくれる楽しさは不変だと教えてくれる新型シビック。しかし、このスタイリングから感じるギャップをどう克服するか。それだけが悩ましい課題だ。

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