私の一枚

消したい過去だった子供時代、今は大切な宝物 吉澤嘉代子

  • 2018年2月5日

幼なじみのみさきちゃんとカラオケを歌う

  • 自らの作品に加え楽曲提供も手掛け、活動の場をますます広げる吉澤嘉代子さん

  • 昨年10月の発売以来ロングヒットを続けているシングル「残ってる」

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 右下に1997年と書いてあるので、7歳の頃の写真ですね。家族ぐるみで仲良くしていた幼なじみと旅行に行って、ホテルの中にあるスナックのようなところでカラオケをした時のものだと思います。だから着ているのはパジャマ。「セーラームーン」のパジャマを着ているのが私で、隣がみさきちゃんで、後ろがちーちゃん。何を歌っているのかなあ。たぶん「セーラームーン」の歌のような気がします。

 小さい頃から歌うことが大好きで、家では机の上で歌って踊るような子供でしたけど、かなりの内弁慶で、外に出ると最初は借りてきた猫みたいになっちゃう。だからこの時も恥ずかしくて仕方なかったはずですけど、それよりも歌いたい気持ちが勝ったんでしょうね。

 実家は金型工場で、周辺にも工場がたくさんあるような町で育ちました。金属音とほこりっぽさ、錆(さび)のようなにおい、煙たさ、よどんだ空気。ちょっと体に悪いような感じですけど、朝の工場は光の中にわーっと何かが散っていて、それがとてもキラキラして奇麗で好きでした。ザラザラした息づかいの中にきらめくものがあるような歌い方が自分の歌の理想で、そのイメージは工場で見ていた景色に影響されているように思います。

 工場の屋上、錆びついてところどころ穴が開いているような、今にも崩れそうな怖い階段をのぼった先に小屋があって、そこで小学3年生の頃から魔女の修行をしてました。おばあちゃんから借りた黒いスカートをはいて、お年玉で買ったほうきにまたがって飛ぶ練習をしたり、これもお小遣いで買った小さなトランクに物語や詩を書いて入れてみたり、飼っていた犬やウサギを連れ込んで「ほんとはしゃべれるんでしょ?」って話しかけたり。

 そもそも夢見がちな子供だったんです。夢に出てきた運命の人だと思われる男の子が現実にもいるんじゃないかと思って、あの子かもしれないと思った子がいたら木陰に呼び出して「ねえ、○○君だよね? 夢に出てきたよね?」って聞いてみたり。たいてい「うるせえよ」って言われて終わるんですけど。特に小学生ぐらいまでは、現実と夢がごっちゃになっているような世界で過ごしていました。

 それに加えて、この写真の頃はヒステリックでハチャメチャでもあって、本当に親は大変だったと思います。すごく傷つきやすくて、小学校に行ったり行かなかったり。近所に住んでいたお友達のゆきちゃんとめぐちゃんが、いつも連絡帳を持って来てくれるんですけど、受け取れずに、夕方になると押し入れに隠れてしまう。母は「顔を出しなさい」って言うんですけど、できなかった。その2人とは今でも会っていて、普通に外で待ち合わせできてるってすごいなって、会うたびに思います。

 いつも、自分ではない架空の誰かを想像して曲を作っていますが、私の子供時代は、その想像力を育てるための時間だったのかなと思っています。学校にあまり行けない代わりに、たくさん本を読んだり、物語を考えたりしました。中学生の頃には穂村弘さんの短歌が好きになって、言葉選びではかなり影響を受けました。

 子供時代のことは、ずっと消し去りたい、「イタい過去」だと思っていました。でも歌えば歌うほど、世の中とつながればつながるほどに、今の自分にとって、すごく大切な宝物なんだと思えるようになりました。

    ◇

よしざわ・かよこ 1990年、埼玉県川口市生まれ。ヤマハ主催「Music Revolution」でのグランプリ・オーディエンス賞のダブル受賞をきっかけに2014年メジャーデビューし、これまで3枚のフルアルバム、4枚のミニアルバム、2枚のシングルを発表。国内大型フェスヘの出演や全国ホールツアーを成功させたほか、私立恵比寿中学や松本隆との共作によりシンガーのクミコへの楽曲提供も行う。現在、2ndシングル「残ってる」がロングヒット中。3月には東名阪にて「ウルトラスーパーミラクルツアー」を開催。

◆「ウルトラスーパーミラクルツアー」は、3月13日に名古屋クラブクアトロ、19日に大阪BIG CAT、22日に恵比寿リキッドルームで開催。OKAMOTO’Sのハマ・オカモト(ベース)らサウンドの核となるメンバーに、トランペットやサックスを加えた編成で、今回だけの特別なステージを予定している。

    ◇

 バンドにトランペットやサックスが入るのは私にとって初めてのこと。なので、曲の新旧にはこだわらず、今まで作ってきた楽曲の中から管楽器が映える曲を選んで歌いたいと思っています。私のライブはいつも物語仕立てで、主人公のストーリーと共に曲が演奏されていく作りにしています。でも、今回はそうではなく、純粋に歌を楽しんでもらえるようにしようかな。ミュージシャンも素敵な方ばかりなので、ぜひ観に来ていただきたいです。

(聞き手・髙橋晃浩)

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