「中古の価値は下がり続ける」マンションの大前提を覆した“高級マンション”

  • 2018年2月19日

  

 中古物件を購入してリノベーションをして暮らす、というスタイルが浸透してきた。「住まいは新築」という選択だけでなく、暮らしや過ごした時間の重みをまとった中古マンションに惹かれる人は、増えているように感じる。

 一般的に日本の住まいの価値は、新築時をピークに築年数が経つにつれて落ちていくと言われる。一方で、『ヴィンテージマンション』『高級物件』などと呼ばれ、築年数を経ても価格が下がりにくいマンションも存在する。中古マンションの価値は下がり続けるもの、という前提を覆したマンションの価値とは何か? そこでリノベーションが果たした役割は、住まいの機能的な改善だけではないようだ。

 今回は、1982年の創業以来7,000件以上の住宅リノベーションを手がけてきた株式会社クラフトの代表取締役久村明弘さんと営業部堀口賢一さんに話を聞いた。同社は設計事務所と工務店が一緒になってスタートし、これまでに『広尾ガーデンヒルズ』や『恵比寿ガーデンテラス』など、高級マンションとして知られる物件を手がけてきた。上質でオリジナリティーのある設計提案が富裕層に好まれ、数多くの高級物件リノベーションのノウハウを持っている。

価値の保存ありきの『高級物件』

 『高級物件』とは、単純に新築時から高価な物件を指すのだろうか? 『ヴィンテージマンション』と言われて、長く愛される物件には、価格以上の価値を形づくる何かがあるのではないか。1982年の創業以来、高級物件のリノベーションを手がけてきたお二人に聞いた。

 「東京の高級物件は少し特殊です。都心一等地に建つ大規模マンションで、築年数が経っても高値で取引される有名なヴィンテージマンションもありますが、10世帯以下の小規模な低層マンションで、一般的には名前を知られていないヴィンテージマンションもあります。

 これらのヴィンテージマンションを手がけてきて感じるのは、総じて管理がしっかりしているということです。定期的な建物のメンテナンスはもちろん、自主的に管理組合をつくって組織的に管理するマンションもあります。『広尾ガーデンヒルズ』などは、建物全体の音に配慮するため、床はフローリングではなくカーペットにするなど、リノベーションの方法に様々な指定がされています。また、リノベーションをする際の配管や床材の素材・メーカー・品番を指定しているマンションもあります」(堀口さん)

 同じマンションでも、各戸でリノベーションを行う場合は、事業主や予算の違いで使う素材が変わってくる。マンション全体で見ると、例えば各戸で配管の素材が変わると建物の劣化につながる。これを、一定のレベルに達した素材や設備を使うルールにすることで、マンション全体の価値を維持する工夫がされているということだろう。

 定期的な建物の修繕を行い、管理組合で組織力を維持するためには、住民がそのマンションの価値を維持しようと努めることが必要だ。高価格帯のマンションに集まる住民の特性は、マンション価値の維持という考え方を共有しやすいのかもしれない。

 もともと同社は、高級物件に特化したリノベーション会社ではない。「デザインが良いものを求めてきた結果」、高級物件を求める消費者に受けたところから、高級物件を多く手がけるようになったという。

 「『高級』という言葉に違和感もあります。『高級』という言葉の裏側には、建売的な高級感やデザイン的に凝ったもの、空間をよく見せようとしているイメージがあるように感じます。

 私たちがつくるのは住宅ですから、質が良くて居心地のいいものが大前提で、自分たちが良いと思うデザインを突き詰めた結果、『高級』を求めるお客様に受けたということです。『高級』よりも『上質』という言葉のほうがしっくりきます」(久村さん)

広さを求めて、ヴィンテージマンションを選ぶ

 具体的に、高級物件を購入する消費者はどんなデザインを求めているのだろうか。

 「部屋をきれいにするだけの改善ではなく、設計士からの空間提案を求めている人が多いです。物件購入の理由は様々で、メインの住まい以外にセカンドハウスとして暮らすお客様もいれば、たとえば広尾ガーデンヒルズ内で住み替える方もいます。お客様がその空間でどう暮らしたいかイメージをヒアリングして、そこから設計士が、何部屋つくるのか、キッチンやお風呂などの水まわりは広いほうが良いのかなど、間取りから提案していきます。デザインオーダーは、インダストリアルやナチュラル風などではなく、抽象的なご要望です。流行の間取りや空間デザインとは、一線を画したものが多いように感じます」(堀口さん)

  

 また、中古マンションの場合100平米以上の広さがある物件も多い。新築マンションで希望する広さの部屋がなく、中古マンションを選ぶ人もいるという。

 「リノベーションを前提にヴィンテージマンションを探す方が、少しずつ増えているように感じます。例えば、今建てられている都心のタワーマンションでは広さが足りず、ヴィンテージマンションの広さのほうが暮らしにフィットしているとして中古に切り替える人も多いです」(久村さん)

 基本的に新築マンションは、その空間でどう暮らしたいのかという対話が無いまま建てられる。一方で、リノベーションは、暮らしたいイメージを設計士と共有しながらオーダーメイドの空間を作れる。広さと唯一無二の空間を作れるという理由で、中古+リノベーションを選ぶ人が増えているという。

リノベーションは、物件の価値を高める手段のひとつ

 新築分譲マンションのデベロッパーがリノベーションを手がけるなど、最近は、高級物件に限らずリノベーションを行う事業主が増えている。プレイヤーが増えれば、中古マンションを買ってリノベーションをして暮らすという選択肢をする人も増えるだろう。この状況について、久村さんはどう感じているだろうか。

 「プレイヤーが増えたことで、リノベーションという言葉が一般的になってきたのは良いことだと思います。古いマンションでもリノベーションをすれば良くなるということを理解して、共用部分や管理状況を確認する動きが広がってきている。残せる物件を残すという仕組みが出来てきて、住まいは新築が全てではないという考えが少しずつ広まってきたように感じます」

 また、『新築神話』が崩れ、中古+リノベーションという選択肢が増えた先に、リノベーションの多様化の兆しが見えてきているようだ。

 「今は、中古物件を買ってリノベーションをするという選択肢の背景に、新築よりも安いからという理由があります。これはまだ、リノベーションが生み出す価値の一部にすぎないと思います。
 これは東京都心の話ですが、最近、しっかりリノベーションをした部屋が不動産市場で評価されるようになったと感じています。しっかりと設計をして、上質な素材できちんとリノベーションをすれば、購入時よりもプラスの査定がされるようになってきました。このような価値観が広がれば良いと思います」

株式会社クラフトの青山モデルルーム。珪藻土・塗装・漆喰など、同じ白い壁でも素材や質感の違いで、光の感じ方の違いが分かるように工夫されている

 新築当時からの高級物件は、その価値を共有する住人コミュニティが形成されて、築年数を経ても価格が下がりにくいマンションになるための努力があった。これは今後、高級物件に限らず、集合住宅に暮らす人に共通して求められる考え方なのかもしれない。

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文中写真協力:株式会社クラフト
文:石川歩

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