小川フミオのモーターカー

勲章をあげたい「スズキ・マイティボーイ」

  • 世界の名車<第200回>
  • 2018年2月19日

全長約3.2メートルと小さなピックアップ(写真提供=スズキ)

 音楽や料理などのほか、クルマにも“フュージョン”というスタイルがある。フュージョンは文化の“融合”といったときに使われる単語である。スズキの「マイティボーイ」もそんなクルマだ。

 2代目「セルボ」をベースに開発され、1983年に発売されたマイティボーイ。ひとことで表現すると“軽のピックアップ”である。

 自動車の世界で代表的なフュージョンといえば、スポーツクーペとステーションワゴンというスタイルを合体させたシューティングブレークだろう。

 マイティボーイはそれとはまたちがう。クーペとトラックの合体である。ベースのセルボは、2ドアのクーペスタイルを持ったモデルである。その後ろ半分を切り取って2人乗りのトラックにしたのだ。

荷台床面は56センチに抑え、使い勝手を追求していた(写真提供=スズキ)

 「当時新しいジャンルであったピックアップスタイルを取り入れた、ファッション性の高い軽商用車」。これがメーカーによる解説だ。

 “ピックアップは米国で昔からあるスタイルでは?”だとか、“ファッション性ってなに?”とか、つっこみどころの多い記述だけれど、それはさておき、実際のマイティボーイは意外に実用性が高かった。

 荷台は200キロもの積載量。トヨタのピックアップトラック「ハイラックス」の積載量が500キロということを考え合わせると、なかなか“リッパ”なものである。

ベンチシートだったらもっとよかった?(写真提供=スズキ)

 荷台部分にファブリックタイプの幌(ほろ)をかけると、一見クーペ的だ。幌を取り去ればトラックになり、二つのスタイルをうまく両立させていた。上手なデザインだ。

 エンジンは543cc3気筒で最高出力は28馬力。最大トルクも当時の表記で4.2kgm。そんなに力はなさそうだが、クラスの平均的な水準だった。

ひたすらシンプルなダッシュボード(写真提供=スズキ)

 当時のスズキは(81年に「ジムニー」のフルモデルチェンジを行って話題を呼んだものの)、アジア諸国での生産を本格化していて、庶民の足となるようなクルマに力を注いでいたはずだ。

 そこにあって、このマイティボーイや、太いCピラーがスポーティーな2ドアモデルの3代目「セルボ」(88年)も出した。

 常識的なスタイルを少し“ヒネった”独自のキャラクターを持ったこれらのクルマは、“自動車は楽しくなくては”という文化を守るメーカーの姿勢を感じさせる。それゆえ、その存在はスズキにとって“勲章”のようなものだと、ぼくは思う。

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 このマイティボーイのコンセプトに追随して、成功をおさめたライバルメーカーはなかった。これ以上、ヒネりようがなかったのかもしれない。こんなモデルがあるから自動車はおもしろい。マイティボーイは日本の自動車史に残したい1台だ。

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