マッキー牧元 エロいはうまい

<49>燗酒と一緒に。ごまの香り味わうそば/蕎肆 穂乃香

  • 文・写真 マッキー牧元
  • 2018年2月23日

両国黄金そば

  • 両国黄金そば

  • 両国黄金そば

  • せいろ

  • 牡蠣の天ぷら

  • 江戸千住葱のぬた

 そばは「せいろ」に限る、と通人は言う。

 確かにそばの香りは「せいろ」が一番わかりやすいが、力あるそばは温かくても種物でも生きる。

 例えばこの「両国黄金そば」である。

 丼に注がれた温かいそばつゆは、なじみのある醬油色ではなく、ベージュ色である。

 糸唐辛子があしらわれたそのお姿は、担々麺と言ってもわからない。

 そば通なら、邪道と言われそうだが、これがクセになる。

 かつおだしにごまペーストが混ぜられたつゆは、ごまの香り高く、ほの甘い。

 この優しい甘さを絡めながら口元に上ってくる、そばの感じがいい。

 冷たい時のようなコシの強さはないものの、しなやかな歯ごたえが、ごまの優しさと合う。

 温められて風味を強め、ごまの香りと抱き合って、「せいろ」の時にはなかった、かすかな色香を漂わす。

 きりりと締まったそばもいいが、とろりとした温かみに包まれて少し緩んだそばもいい。

 凛々(りり)しさもいいが、たおやかさも捨てがたい。

 そう思わせるいとおしさがある。

「つうっ」「ずるる」。

 と、唇を通過するそばが、次第になくなっていくのが寂しくなる。

 特に寒い時期には、食べたくなる

 今の時期なら、寒さに堪えて甘さを強めた千住葱(ねぎ)を使った、ワカメやタコと合わせた「江戸千住葱のぬた」や、そのネギを炒めて鶏肉つくねの照り焼きと合わせた「つくね」を頼み、燗(かん)酒を一本やる。

 あるいはプックラと膨らんだ「牡蠣の天ぷら」でビールをやるのもいい。

その後、「小さいせいろ」でのどを引き締め、爽やかな気分になったところで、「両国黄金そば」1080円を頼む。

 体に滋養が満ちていく感覚に目を細めながら食べ終え、外に出れば、もう寒風など気にならない。

    ◇

蕎肆 穂乃香(きょうし ほのか)
東京都墨田区緑1-25-7
http://kyousi-honoka.com/index.html

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 両国でそばといえば、東京屈指のそば屋「ほそ川」が有名だが、この店もなかなかいい。路地にひっそりとあって、昼時に出かけるとカウンターでは初老の紳士が、燗酒を傾けながら肴(さかな)をつまみ、文庫本を読んでいた。そばは自家製石臼ひきで、訪れた日は、少し草のような野趣が香る、栃木県真岡市の常陸秋そばだった。

「小さいせいろ」520円、「牡蠣の天ぷら」1180円、「江戸千住葱のぬた」520円、「両国黄金そば」1080円

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