小川フミオのモーターカー

冒険小説のような「トヨタ・ハイラックス」試乗

  • 文 小川フミオ
  • 2018年3月8日

全長5335ミリ、全幅1855ミリ、全高1800ミリ(写真は「Z」)(写真=小川フミオ)

 クルマの魅力ってほんとさまざまだなあと改めて感じさせてくれるのが「トヨタ・ハイラックス」。世界的ベストセラーのピックアップトラックである。1968年の初代の発表以来、頑強な作りを守り続けているクルマだ。

 日本で17年9月に発売された8代目もタフさがなによりも“ウリ”で、ラダーフレームにディーゼルエンジンと4輪駆動システムを搭載する。プレスリリースはまるで冒険小説のようだ。

ミリ波レーダーと単眼カメラを使い、衝突の危険を見つけるトヨタ独自のプリクラッシュセーフティシステムやリアビューカメラなどを備える(写真=小川フミオ)

 「森林地帯のぬかるみで荒れたオフロード、50℃超える暑さの砂漠地域、雨期には冠水してしまう生活道路など、(トヨタ自動車の開発チームは)様々な環境での使用状況を再確認」したそうだ。「大陸の長い道のりを、燃料切れを気にせずに安心して移動したいという顧客の声を重視した」なんて、日本だと想像もつかない世界で使われていてエキゾチックではないか。

 こういうのを聞くと、ぼくはなんだかうれしくなってしまう。こんな思いで開発される製品と日常的に接点を持てることは、そうそうない。

カッコいい“TOYOTA”のロゴはオプション(写真=小川フミオ)

 日本で売られるのはダブルクルーキャブ(前後2列シートに4枚ドアを備えたキャビン)、どちらかというと乗用車としての使い勝手も重視した仕様だが、それでも十分すぎるぐらいワイルドなイメージだ。

 2393ccの4気筒ディーゼルエンジンを搭載。コモンレール式筒内燃料噴射システムを備え、排出ガスをクリーン化するために、尿素水溶液「アドブルー」を使うなど“現代的なピックアップトラック”となっている。

 最高出力は110kW(150ps)で最大トルクは400Nm。6段オートマチック変速機にパートタイム4WDシステムの組み合わせだ。

 市街地では後輪駆動。4WDはオフロード用と限定されている。雪道などでは4WDハイモード、ぬかるみなどでは4WDローモードを手動で切り替える。

6段オートマチック変速機を備え、2WDと4WDは手動で切り替え、悪路で使える後輪デフロックシステムもスイッチで行う(写真=小川フミオ)

 はたして乗ると、乗用車に慣れている身にはまるで別世界からきた乗り物だ。とくにリアサスペンションは硬く、“後ろは”ぼんぼん跳ねる。ぼくにとっては2014年夏にトヨタ自動車が限定で販売したランドクルーザー70シリーズより“ハードコア”な印象だ。

スペース的余裕はそれなりにあり、Zグレードでは6対4の分割可倒式となるリアシート(写真=小川フミオ)

 とはいってもステアリングホイール(ハンドル)へのキックバック(反動)は上手に抑えられているうえ、切った角度がわからなくなるようなこともない。そこは意外なほど“フツウの感覚”で操縦できる。

Zグレードには革巻きステアリングホイールが標準装備(写真=小川フミオ)

 エンジンも1600rpmから最大トルクが発生するだけに、2トンを超える車体でも重さを感じることはない。高速道路でもなんの問題なく運転できるし、静粛性も思いのほか高い。

 「揺れによる疲労度を低減することは開発目標だった」というだけあり、東京と箱根の往復など“お茶の子さいさい”だ。

シートの出来はよく疲労度は少なくオーディオの音質もよい(写真=小川フミオ)

 これだけトルクが太いと変速機の段数なんて4段ぐらいでよさそうだが、それでも6段もある。4速で直結、あとの2段はオーバードライブだ。

 多段化は燃費のためもあろう。ぼくが300キロほど乗ったとき、実燃費はリッター12キロに少し欠けるぐらい。まずまず“リッパ”だった。

 最大1565ミリの床面長の荷台をどう使うか。これは都会で乗るひとにとって悩ましい問題かもしれない。カタログでは丸太が積んである。

荷台の高さは480ミリ、床面長は最大1565ミリ、床面幅は最小で1105ミリ(写真=小川フミオ)

開口幅は1380ミリ、テールゲートの高さは845ミリで、テールゲートは下ヒンジで手前に倒して開ける(写真=小川フミオ)

 荷室のカバーはオプションでいろいろあるうえに、あとは衝撃緩衝用のマットを敷けば、トランクとして使うことが出来るだろう。そういうことを考えるのも楽しい。

 扱いにはすぐ習熟して、むずかしいことはなにもない。スカートでの乗り降りはややキツいかもしれないが、米国だってこういうダブルクルーキャブ(「GMC・シエラ1500」や「フォード・F-150」)は富裕層のマストアイテムである。

 富裕層が乗ればいいのかというのは別の問題として(笑)、クルマ好きにはスポーツカーとは別の意味で楽しめることは間違いない。子どものとき作業車両に憧れたような人は、「ハイラックスに乗るオレって」とニヤついてしまうだろう。トヨタ自動車はいいものを発売してくれた。

 ラインアップは装備によって二つ。「X」は326万7000円から(税込み)。オートエアコン、分割可倒式リアシートバックレスト、革巻きステアリングホイール、アルミホイール、めっき仕上げのリアバンパーなどを備えた「Z」は374万2200円(税込み)からだ。

普通貨物車扱いで1ナンバーとなる(写真=小川フミオ)

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