一眼気分

もう一度素直な気持ちで、レンズを通して「瞬間」を収める

  • 文・写真 宮田正和
  • 2018年3月12日

パリ時代のお気に入りの一枚。絶妙なタイミングでハトが飛び立ってくれた。LEICA M8 LEITZ ELMARIT-M 21mm / F2.8 SP:1/500 F:5.6

 あたり前だけど写真は光と影から成り立っている。だから光のない漆黒の世界ではただの真っ黒な写真しか生まれない。そして逆に一切の影がなくなれば今度は真っ白な世界しか写すことができない。

 写真家の性なのか、一条の奇麗な光や不思議な影を見つけるとどうしてもカメラを手にしたくなる(笑)。

自宅近くの多摩川周辺からの夕景。遠くには富士山のシルエットも見える。冬らしい凜とした空気が気持ちいい。Canon EOS-1DX Mark II EF16-35mm F4L IS II USM SP:1/250 F:4.0

 最近は携帯電話のカメラ機能も向上していて奇麗な写真が撮れるが、やはりカメラを構えると気分が違う。僕にとって携帯の写真は「記録を残す」感覚だが、これがカメラだと「写真を撮る」というある種の儀式のようでもあり、どことなく厳かな気分になる。

 ちなみにこのコラムのタイトルの「一眼気分」だが、この「一眼」は一眼レフカメラを指すのではなく、通常肉眼で立体的に見ているものを一眼レンズを通して「写真という平面の世界で眺める」という意味だ。

スカイツリーは近くで見ると、さらに存在感が増す。春節の時期は中国からの観光客でにぎわっている。Canon EOS-1DX Mark II EF16-35mm F4L IS II USM SP:1/250 F:4.0

 不思議なものでカメラのレンズを通すことにより見えてくるもの、そして逆に見えなくなるものがある。

 日常の暮らしの中でもすてきな光景はたくさんある。だがそこで立ち止まってカメラを構える時間と決意の折り合いがなかなかつかず、やり過ごしてしまう場合も多い。でもその「瞬間」は繰り返されることはなく、同じ場面に二度と出会うことはない。だからこそ、あえてカメラを持ち出し、気になった瞬間を自分で写真に収めたいと思うようになった。

立川駅前ロータリー内にあるモニュメント(SPACE SHIP EARTH NAVIGATORS)。切り取り方ひとつで不思議な写真に見えてくる。Canon EOS-1DX Mark II EF16-35mm F4L IS II USM SP:1/800 F:4.0

 海外生活(9年のパリ暮らし、仕事の大半が海外)が長い僕だが、パリ在住当時はほぼ毎日カメラを持って街を歩き、撮影を繰り返していた。ところが日本に帰ってくると、なぜか仕事以外でカメラを構える機会がめっきり減ってしまった。

パリでは新聞の宅配はない。朝一番に焼きたてのバゲットと新聞を買いに行くのが日課。Canon EOS-1DX Mark II EF85mm F1.2L IS II USM SP:1/32 F:4.0

 もちろんパリの景色はどこを撮っても絵になる気はするが、それは日本に住む人にとって非日常だからであり、逆にパリに住む人たちには日本の景色が新鮮で非日常になる。ある日、東京の街角で撮影している海外からの旅行者の写真を見せてもらったことがあるのだが、とても不思議な感覚を覚えた。見慣れていたはずの光景が妙に新鮮に見えたのだ。

「THE TOKYO STATION HOTEL」モダンとクラシックの融合。Canon EOS-1DX Mark II EF16-35mm F4L IS II USM SP:1/32 F:4.0

 固定観念や既成概念、自分の経験などが余計なフィルターとなって、「日本」の素晴らしい部分が見えにくくなっているのではないか? そんな疑問が僕の中に生まれた。だからこのコラムでは海外の写真も使うけれど、なるべく日本国内の写真を増やしていきたいと考えている。

東京駅。復元された駅舎に続き、駅前の大広場も完成。フォトジェニックな空間が広がる。Canon EOS-1DX Mark II EF16-35mm F4L IS II USM SP:1/32 F:4.0

 2020年にオリンピック開催を控えている東京、そして日本をもう一度素直な気持ちで、カメラを通して見直してみたいと思うのである。

 さあ明日はどこへ行こうか。気の向くまま足の向くまま「写心」の求めるままにシャッターを押して歩こう。

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