キャンピングカーで行こう!

病気や障がいでも諦めない キャンピングカー「動く家」がかなえる夢

  • 文 渡部竜生
  • 2018年3月14日

2016年のジャパンキャンピングカーショーに展示された、車椅子用リフトを備えたキャブコンの試作車

 この連載で何度もお伝えしている通り、キャンピングカーは「動く家」です。車両によって違いはありますが「水回り」「電気」「空調」「ガス」といった、いわゆる「生活インフラ」を車内に備えています。さらに、横になって休めるベッドもあります。

 この環境を持ち運べるのがキャンピングカーであり、実に様々なことが可能になっています。今回は、そのおかげで「夢がかなった」という人たちのお話をしましょう。

旅を諦めない!

 キャンピングカーの使い方は、オーナーの数だけ十人十色。みなさん、それぞれ独自に工夫を凝らして楽しんでいる人ばかりですが、中でも、上記のような「キャンピングカーならではの設備」が大きなアドバンテージになる、という方々がいます。そうした方々に共通していることの一つに「病気」や「障がい」があります。

 年齢、性別に関係なく、病気は人の生活や行動を大きく制約するものです。長期的な疾病、慢性病ともなれば、治療や食事、投薬などの管理上、公共交通機関での移動・宿泊施設の利用が難しい場合もあるでしょう。そして、そうした病気に見舞われた人ほど、旅や外出を諦めてしまいがちです。

 その大きな要因は、

  • 健康上に不安がある
  • 周囲に迷惑をかけそう
  • 治療や生活環境の維持が難しい

 というもの。

 もちろん遊びのために命を危険にさらすようなことはできませんが、外に出る楽しみまで諦めてしまっては、生活の質の向上が望みにくくなると思います。そして実際、キャンピングカーを導入することで、より出かけやすい環境を手に入れたという人は少なくありません。

車椅子が必要な場合

 駅などの公共交通機関での車椅子への対応は、以前に比べれば進んだといえるでしょう。しかし、実際のところは完全に自由自在とはいきません。

 日常的に車椅子をお使いの人なら、車椅子でも乗り降りできたり、車椅子から無理なく乗り移れるようにしたりと、バリアフリー対応した乗用車(各自動車メーカーが作っています)をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。さらに車内空間が広く、レイアウトの自由がききやすいキャンピングカーなら、車内での過ごし方にも余裕が持てるし、移動も宿泊も楽にできます。車椅子のまま乗り込めるように工夫したキャンピングカーなら、車内でソファやダイネットに移ることができます。常設ベッドのあるタイプなら、休憩中に気軽に体を横たえることができます。無理のないペースで旅ができることは大きなアドバンテージだといえるでしょう。

バイクや自転車を積むためのスロープを備えたモデルなら、車椅子にも使える

 また、車椅子利用の方が外出先で困ることのひとつにトイレがあります。かなり整備が進んではいるものの、キャンピングカーのように車内にトイレルームを用意できれば、なにより安心です。

 さて、では実際に、車椅子に対応した商品はどれほどあるか。実はキャンピングカーのビルダーの中には、車椅子対応などの「福祉車両」を手掛けている会社が少なくありません。そうした会社なら、車椅子の挙動や重量、特性に対応できるノウハウをもっています。リフトやスロープを備えたバンコンを製作しているビルダーも数社あります。ただしバンコンはベース車両の大きさが変わることがないので、車内で車椅子ごと動き回れるほどの広さはありません。

 キャブコン以上のサイズになれば、停泊中に車椅子で動けるスペースも作れるでしょう。車椅子のままトイレに入れるよう、ドアではなくカーテンで仕切るように設計した車両も、かつてはありました。

 使う人のことを考えて様々な工夫をすることに、キャンピングカービルダーは慣れています。オーダーメイドに応えてくれるビルダーもいますので、相談してみるとよいでしょう。

車椅子用リフトを備えたバンコンは、各社がラインアップをしている

医療機器が必要なケース

 これまでに出会った方で、実は医療機器が手放せないという方は結構いらっしゃいました。例えば、腹膜透析が必要な腎臓病の方。酸素発生器が必要な呼吸器疾患の方などです。こうした医療機器はサブバッテリーからインバーターを介してのAC100V電源で対応できますので、治療が必要なタイミングで安全に車を止めておける場所を確保すれば問題なく旅ができるというわけです。カーテンを仕切ればプライバシーは万全ですし、横になれるベッド、暑さ・寒さをしのぐ空調を整えておけるのも大きなメリットです。

 私が取材した方は、オプションでサブバッテリーを増設。さらにソーラーパネルを設置して電力供給を強化して、医療機器を携えて旅行していらっしゃいました。もちろん、こうした医療機器は「生命線」です。万一のことがあれば、命にかかわります。

 こうした方々は、

  • 使用する医療機器がバッテリーをフル充電してどれだけ稼働できるのか
  • 輸送時の振動に耐えられるか。固定の仕方はどうするか
    旅先での緊急事態に備えて、適切な処置ができる病院の所在を確認しておく
  • 機器を使用したいタイミングで確実に停車できるように、旅のスケジュールと行程を調整する

 など、慎重で入念な準備が必要になります。

 実際、重い腎臓病を患い、腹膜透析を余儀なくされた男性に話を聞きました。「数時間おきに透析をしなければならなくなってしまい、仕事はおろか出かけること自体、すっかり諦めていました。そんなとき、キャンピングカーに出会って、『これなら外出できるかもしれない』と思って購入したんです。最初はおっかなびっくりで、近所のドライブに毛が生えた程度から始めてね(笑)。はじめて1泊したときは、本当にうれしかったなぁ……大げさではなく人生が変わりました」

アメリカ製モーターホームの車椅子対応モデルの一例。車内でも車椅子に乗ったまま楽に動き回れるが、あいにくこのサイズは日本では登録不可。日本ではリフト付きのバスを改造するキャンピングカーなら実現可能だ

環境整備が必要なケース

 おもにアレルギー疾患の方は、住環境の整備が何より大切です。ハウスダストなどのアレルギーのためにホテルや旅館に泊まるのが難しい、という方もいます。キャンピングカーなら、普段から清掃は入念にできますし、ホコリの出にくい長繊維わたの寝具を使うなどの対策も可能。日ごろから使い慣れている寝具やベッドを持ち歩いて旅ができるのですから安心です。

 また、旅の楽しみの一つに食事がありますが、これもアレルギーのある方には悩みのタネ。特に深刻な食物アレルギーのお子さんを連れたご家族は、確実に安心できる食材を持ち運べるので、キャンピングカーはありがたい、とおっしゃいます。以前取材した、食物アレルギーに悩むプロゴルファーの方は、キャンピングカーで調理することで過酷なツアーを戦っていました(キャンプ車生活で「アレルギーと戦う」~プロゴルファー・岡村咲)。

 病気をおしてまで出かけるというのはリスクのあることです。場合によっては命にかかわるかもしれません。また、病気の人が自分で運転をするならば、本当に運転に耐える健康状態なのかどうか、見極める必要もあります。自分だけでなく、社会全体を含めての「安心・安全」が大前提。一人で勝手な判断をせず、医師に相談することも大切でしょう。

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 しかし、キャンピングカーの設備を利用することで笑顔を取り戻したケースに、これまで私は何度も遭遇してきました。家族や医師の助けを借りて、二重、三重にセーフティーネットを張って、思い切って出かけてみる。

 長距離でなくてもいいと思うのです。季節を感じながら景色を楽しみ、会いたい人に会いに行く。少しでも日々を楽しめるように工夫できるのも、キャンピングカーの魅力のひとつだと思っています。

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