小川フミオのモーターカー

羽根の生えたボルボ「P1800」

  • 世界の名車<第205回>
  • 2018年3月26日

大きなリアの“フィン”がはなやかな雰囲気を作っている(写真=ボルボ)

 クルマの美は理性で割り切れるものではない。そこがおもしろい。代表例の1台が「ボルボ・P1800」だろう。

 スウェーデンのボルボが1960年に発表した2プラス2のスポーツカー。米国に影響を受けて大きな羽根(テールフィンともいう)を持っているのが特徴だ。

全長4400ミリで全幅1700ミリのボディーは、当時の欧州車としては余裕あるサイズだった(写真=ボルボ)

 より正確にいうと、影響を受けてというか“米国で売れることを狙ったため”といったほうがいいかもしれない。でも小さめなキャビンと相まって、よいバランスを作り出している。

 はなやかな雰囲気である。ぼくも小さいとき、“カッコいいなあ”と思ったのをおぼえている。スタイリングを担当したのはイタリアのフルアと言われているが、実際に作業をしたのは、フルアにいたスウェーデン人デザイナーだというのがおもしろい。

米国と英国の折衷という感じのダッシュボードのデザイン(写真=ボルボ)

 当時のボルボのマネジメントは“イタリアンデザイン”としたほうが米国で売りやすいと考えた、とボルボが社内で編集した歴史本にある。それでスウェーデン人のデザインということは伏せられた。

 はたして米国でのセールスに成功した。ロジャー・ムーア主演の人気TVシリーズ「ザ・セイント」(邦題は「天国野郎」)で使われ、放映されたのも販売増に大きく寄与したと言われている。

62年に放映開始された「ザ・セイント」で主役を演じたロジャー・ムーアと彼の「ST1」(写真=ボルボ)

 P1800は英国で生産されていたが、車両の品質が悪く(と言われている)、63年にはスウェーデン生産に切り替えられた。

 P1800とは当初の英国生産のモデルをさし、そのあと70年まで作られたモデルは「1800S」と呼ばれる。Sはスウェーデンのことだ。

「1800S」はスウェーデン製を表している(写真=ボルボ)

後席にはラゲッジを留めるベルトが装備されているのがしゃれている(写真=ボルボ)

 71年には“スポーツエステート”といわれた「1800ES」が発売された。斬新な2ドアのステーションワゴンスタイルを持つモデルだ。

 1800ESは73年までしか作られず、70年代のボルボは完璧に路線変更。四角く頑丈なセダンで安全性をセリングポイントに市場を開拓していくことになる。日本でもそのイメージで人気が出た。

 エレガントなルックスで個性的なP1800は、いまもクラシックカー市場で人気が衰えない。ボルボも自社の“遺産”として大事にしている。

大きなリアクオーターウィンドーがぜいたくで美しい「1800ES」はいまでも通用しそうなデザイン(写真=ボルボ)

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