ミレニアルズトーク Millennials Talk

結婚したのは、緊急連絡先をつくるため

  • 【佐々木ののか✕石井リナのミレニアルズトーク】
  • 2018年3月29日

  

 SNSコンサルタントの石井リナが、ミレニアル世代を掘り下げる連載「石井リナのミレニアルズトーク」。ミレニアル世代の中でも1990年前後に生まれた人間は、現在27歳前後。社会に出て数年たち、ネットネイティブで育った柔軟な感覚で様々な新しい働き方に取り組んでいる。

 中学時代にガラケーを持ち、インターネットとともに育ってきた環境のミレニアル世代たちは、どういった価値観をなにによって形成してきたのか。バブル世代とジェネレーション世代のハザマに生まれ、双方のハブとなり得る存在のミレニアル世代を深堀る。

 第3回目は、「家族」と「性愛」をテーマに多方面で活躍する文筆家の佐々木ののかをゲストに迎え、変わりゆくミレニアルズの“結婚観”に迫った。佐々木は連日の「不倫スキャンダル報道」を例にあげながら「恋愛と結婚を同一線上に考える“結婚システム”には無理が生じている」と話す。同世代女子が本音で語るこれからの家族の在り方とは?

恋愛と結婚を同一線上に考える“結婚システム”の破綻(はたん)

石井リナ(以下、石井):ののかちゃんは執筆業に軸足を置きながらも、昨年は『わたし、産みたい! 展』を主催したり、活躍の場所を広げているのが印象的だな。書くこと以外の仕事に挑戦しようと思ったきっかけは?

佐々木ののか(以下、佐々木):まず、フリーのライターとして活動してきて、「そろそろ専門性がないと使い古されて終わっちゃうな」と思ったの。そこで専門性を定めようと、過去に執筆した記事を振り返ってみると、特に気合を入れて書いていたのが「家族」や「性愛」にまつわるものだったんだよね。

 自分なりに方向性が見えてきたところで「家族」や「性愛」にフォーカスしたnoteを書いてみると、大きな反応があったの。それから流れができた…という感じかな。

石井:そうなんだ。ちなみに、その2つのテーマに関心が高まったきっかけは?

佐々木:一般的な考えでいうと、結婚というものは恋愛の延長線上にあると思っているのね。そして、結婚するということは家族になることと同義でしょ。ただ、恋愛と家族は同一線上にあるものではないと思うの。その関係性に無理を感じて、考えはじめたことが最初のきっかけかな。

石井:どうして恋愛と家族を同一線上に考えるのには無理があるんだろう?

佐々木:私個人の考えだけど、「結婚」は3つの要素から構成されると思っているのね。1つは「恋愛とSEX」、2つ目が「生活」、最後が「子育て」。でも普通に考えて、1人のパートナーがその全てを担保できるのは難しいかなって。

 たとえば、子どもができて子育てが始まると、「子ども中心の生活」が始まる。それは自然なことだとは思うんだけど、そうなると、残りの2つの要素が必然的におざなりになるだろうなって。

石井:たしかにね。連日、不倫スキャンダルが報道されているしね。従来当たり前とされていた「結婚」の在り方に無理が生じているのかもね。

佐々木:そうそう。無理が生じていても、今まで“普通”とされてきた在り方に肯定的な人もいるし、もちろん否定的な人もいる。こうやって毎日報道がされるのは、ちゃんと議論すべきタイミングなんじゃないかなって思うな。

  

結婚にも“解散と再結成”があっていい。

石井:でも、ののかちゃん最近結婚したんだよね。さっきの話にもあったように「結婚」に対して否定的だったと思うのだけど、実際に結婚を決めたのはどうして?

佐々木:別に一緒に住まなくてもいいし、いつ“解散”してもいいと思ったんだよね。そう考えたら、気が楽になったというか。

石井:“解散”?

佐々木:なんかね、今まで私が好きになってきた人たちは、少し変わっていたんだよ。大好きなんだけど、一緒に生活するには無理があるというか(笑)。そこでいろいろと考えて、いつも一緒にいなくても、たまに連絡を取り合うくらいの関係性が気楽でいいなって思ったんだよね。

 書面上でつながっているなら、別々に暮らしてもいい。恋愛感情が消えたとしても、信頼関係があるなら、物理的に解散していても問題ないんじゃない?って。必ずしも離婚という選択をしなくてもいい気がしていて。

石井:“離婚の一歩手前”の段階があってもいいってことか。そこにグラデーションがあるのはいいかも。つまり、“解散”した後に“再結成”してもいいってことだよね?

佐々木:そうそう(笑)。

石井:樹木希林さん、内田裕也さん夫妻がイメージしやすいかも。法的には夫婦関係だけど、別々に暮らしている。だけど、よくお互いの話をしているしね。

佐々木:離れて暮らしていても、お互いの存在を気にかけているのは間違いない。それって、本当に幸福なことだと思うんだよね。私が結婚に踏み切ったのも、実は同じような理由があるの。

 ずっと一緒にいなくてもいいと思えてから「結婚」に対するハードルが下がったんだよね。だから、“緊急連絡先”をつくる意味で結婚したの。Twitterで知り合ってから1カ月で、今の旦那さんにプロポーズしたんだ。

石井:“緊急連絡先”って?

  

佐々木:私は北海道出身だから、家族はみんな北海道に住んでるのね。そんな状況下で急に私が意識不明になって、手術を受けなきゃいけないことになっても、誰もサインしてくれる人がいないじゃない?

 そんな悲しいことが起こってしまうのは嫌だから、東京にも家族がいる必要性があるなと思って。ただ、法律婚をしない限り家族としては認められない。でも逆を言うと、結婚するだけで家族として認められるわけだから、その一点に限ってはいいシステムだなと思ったの。

石井:それがののかちゃんの言う“緊急連絡先”ってことね。じゃあ、さっき話してくれた「恋愛とSEX」とか、その他の要素はいったん、無視しても大丈夫なのかな?

佐々木:今は結婚したばかりだし、もちろん旦那さんのことが大好きで、彼の全部に満足しているよ。ただ、ゆくゆくはわからない。だから、その都度お互いにとって最適な形にカスタマイズすればいいと思うんだよね。ただ、どこまでいっても法律婚によって最低限の安心が守られているから、全然幸せだなって。

石井:なるほど。たとえばだけど、もしお互いに恋愛感情がなくなったら、そのときは新しく恋人を作ってもいいっていうこと?

佐々木:事前に話し合いをしておけば、問題ないかな。恋愛感情がなくなったからといって信頼関係が消えるわけではないから、そこで離婚する必要もないと思うんだよね。別の人と結婚したいとか、“緊急連絡先”さえやめたくなったら話は別だけど。「機能」というとなんか変な話になるけど、必ずしも夫婦関係にセックスの機能を求める必要はないというか。プロポーズしたときに、そんなことも彼と話し合ったよ。

石井:面白い考え方だと思うな。つまり、「今はたまたま全機能が彼にある」くらいの気持ちってことだよね。

結婚せずに出産・子育てをする、「選択的シングルマザー」という存在

石井:ののかちゃん自身は整理がついているかもしれないけど、やっぱり世間的な「結婚」のイメージとは違うと思うんだ。そこに関して、何か思うことはある?

  

佐々木:リナちゃんの言う通りで、私が「結婚しました」と言うと、それぞれが思う「結婚」のイメージと結びついてしまうことには、ある種“気持ち悪さ”を感じちゃうかも。でも、「結婚」って社会的なことだから、それも仕方ないこと。

 ただ、私が一事例になって「結婚ってカスタマイズしてもいいんだよ」ってことを伝えていけたらいいなと思ってるよ。

石井:今は結婚しないで母親になることを選ぶ「選択的シングルマザー」も増えているし、結婚や家族の多様なあり方を伝えていきたいというのは一緒かな。

佐々木:「従来の」という表現が正しいかはわからないけど、その人たちがどんなに幸せであっても、シングルマザーというだけで、ネガティブなイメージを抱く人も多かったと思うんだよね。ただ、選択的シングルマザーはそもそも前提が違って、意思のある選択をして、それをポジティブなものとして社会に開いていっている。そういう人が出てくれば出てくるほど選択肢が増えて、シングルマザーたちも、そうでない人たちも、いろんな人が生きやすい世の中になるんじゃないかなって。

石井:あまりこういうことを言うのはなんなんだけど、将来的に、自分がシングルマザーになっている気がしていて。子どもはほしいんだけど、必ずしも従来の家族の形式かはわからない。

佐々木:それこそ、キャリアと一緒だよね。昔は「一度会社を辞めたら人生が終わる」みたいな風潮があったと聞いているんだけど、今はフリーを経験して会社員に戻るパターンも増えてきている。夫婦関係も同じで、一度別れて戻るのもいいし、子育ての機能と恋愛の機能をわけて考えたり、別居してまた一緒に住んだり、そうやって出入りできる関係性でいられるくらいに考えたほうがいいじゃない? 少なくても私はそういう関係がいいな。

石井:逆に、「選択的シングルファザー」がいても全然いいよね。今の日本では、理解がまだされなさそうだけど。

佐々木:そうそう。まさに私の知人と最近話したことなんだけど、そうした考え方を持っている男性は意外に多いみたいだよ。ただ、「結婚生活に自信がないけど、子どもはほしい」と口に出すと、「無責任だ」と糾弾されるかもしれない。

 男性から「僕の子どもを産んでください。でも僕が育てます」と言われたら、戸惑ってしまう気持ちも十分理解できるけど、そういう考えの人がいても全く問題ないよね。

 結婚も恋愛も、自分の思い通りにできる。自由にカスタマイズしても許される時代だから、好きに選んだらいいよ、って伝えていきたい。私自身、それを証明する存在でいられたらいいな。

  

 世の中に受け入れられず、常識という盾に弾かれてしまう風潮も、言葉を与えられることで前進する。事実、彼女が語ったように、「選択的シングルマザー」という言葉は「シングルマザー」のイメージを更新しつつある。

 世の中のマイノリティをエンパワメントしようと矢面に立つ彼女の姿は、きっと多くの人の背中を押すだろう。「結婚も恋愛も、自分の思い通りにできる」――。人生に息苦しさを感じたら、彼女の言葉を思い出してほしい。

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文:小原 光史
写真:小林 真梨子

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