いしわたり淳治のWORD HUNT

替え歌には2種類ある!? 竹原ピストルのアレンジしたくなる隠れ名曲

  • いしわたり淳治のWORD HUNT〈vol.7〉
  • 2018年5月11日

  

音楽バラエティー番組『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)で披露するロジカルな歌詞解説が話題の作詞家いしわたり淳治。その鋭い批評眼で、今日も世間の言葉を斬っていく。

今回は、竹原ピストルの作品タイトルから今時の女子高生の流行語まで、6つの言葉がいしわたりの標的となった。

いしわたり淳治 いま気になる6つのフレーズ

  

阿久悠さんは自分の書いた歌詞が世の中でどう替え歌されるかまで考えて歌詞を書いていたと聞いたことがある。替え歌というのは皆が元の歌詞を知っていて初めて成立するものなので、世代を超えた流行歌が激減している昨今、こんな視点はおそらく誰も持ち合わせていないのではないだろうか。

一般的に、替え歌には二種類ある。一つはただの悪ふざけの替え歌で、もう一つは「いとしのエリー」に代表されるように、歌詞中の名前を「好きな人」の名前に替えて歌う、というような、ある意味その人にとって“実用的”な替え歌である。

歌というのは誰かの暮らしの中で機能することが大切なので、その意味では、このような“実用的”な替え歌になりうる歌詞は、最も機能的な歌詞の一つである、とも言えると思う。

竹原ピストルさんの「どーん!とやってこい、ダイスケ!」。いい歌である。誰かの門出に歌うには最適な歌だと思う。サビで「どーん!とやってこい」と繰り返し歌い、最後に名前を言う。このシンプルなメロディーと男臭い歌詞の世界は、男友達皆で合唱しても、一人でしんみり歌っても、きっとすてきな贈り物になるだろう。「春」という新生活が始まる時期にリリースされた、隠れた名曲である。

  

5/3放送の「アメトーーク! 緊急!! 江頭2:50SP」でのこと。江頭2:50さんに普通の質問をする流れで、「好きな食べ物は?」と聞くと、「ハマチの刺し身」と答えた。なんてちょうどいい意外さだろうと思った。

私はそんなに面白いことは言えないタイプだけれど、記憶力はいい方だと思う。記憶力というのは、普段の会話の中で案外有効だ。普通の人なら忘れているような懐かしい有名人の名前、商品名やそのCMソングなどを話の流れの中ですらすらと正確に言うだけで、小さな笑いが起きたりする。これを「あ、ほら、あれ、あれなんだっけ?」と会話を中断していちいち検索していては場の空気もおかしくなるし、そうまでして思い出したとて面白くも何ともない。そんなくだらないことを覚えているという、そのくだらなさが面白いのだから。

初対面の人と、あるいは仕事上の付き合いはあるけれど初めてご飯に行くような場面で、席について「とりあえずビール」まではいいとして、そのあとメニューを前にして「何頼みます?」と、気を使い合って食べ物を選んでいるうちにビールの泡が消えてしまう、ということがたまにある。もしも次にそんな場面が来たら、刺し身の欄でも見ながら「江頭2:50さんが一番好きな食べ物って、ハマチの刺し身らしいですよ」と言おう。それだけで、私が何を面白いと思う人間かの簡単な自己紹介が出来て、おそらくは小さな笑いも起きて、オーダーも決めやすくなるだろうから。というわけで、「ハマチの刺し身は江頭2:50の大好物」という情報を私は記憶しておこうと思う。

  

還暦を迎えたみうらさん。自分が年老いていくことをこう呼べば、気分が少し軽くなると思うんですよ、とインタビューで話していた。老いるショック。さすがのネーミングセンスである。

還暦というのは干支が60回巡って赤ちゃんに戻るという意味なのだそうで、一説には、赤いちゃんちゃんこを着るのも赤ちゃんと語呂が似ているからなのだそう。でも、急に赤ちゃんに戻ると言われても、はい、そうですか、とはならない。赤ちゃんと老人は全然違う。

では、赤ちゃんにあって老人にないものは何かというと、その最たるものは「かわいさ」である、とみうらさんは言う。そう考えたとき、せっかく家人に出してもらった料理を塩辛いだの脂っこいだのと文句を言ってはいけない。ごはんを見たら、「わあ、ごはんだ」とそのまま言うべきで、その証拠に赤ちゃんは自動車を見たら「ブーブー」、うんちが出たら「うんち出た」と、そのまま言うじゃないか。だから赤ちゃんはかわいいのだ。還暦を迎えたら、何でもそのまま言って、周囲から「かわいい人だな」と思ってもらうことで、お世話したいなと思ってもらわなくてはならない、と話していた。

素晴らしい理論だと思った。そして、この「何でもそのまま言う」は実際やってみるとかなり楽しい。時計を見て「あ、もう5時だ」ではいけない。深い意味もないくせに何かやり残したことがありそうなネガティブな雰囲気が醸し出されてしまう。これを正しく言うなら「5時だ」である。どうだろう。これだけでも少し前向きな感じが出ている気がする。

そんな調子で、パーティーが始まったなら「パーティーの始まりだぁー」と言い、ピザが出てきたら、「わあ、ピザだぁー」と言う。こんな当然のコメントは、おそらくその場の誰も気に留めないだろう。でも、この「そのまま言う」だけのコメントの積み重ねがサブリミナル効果のように周囲に明るくポジティブな空気を作っていくのである。

思えば、テレビの情報番組に出ているタレントの皆さんも、画面隅のワイプの中で「見たそのまま言っている人」が、視聴者に潑剌(はつらつ)とした印象を与えているような気がする。

  

4/15放送の「モヤモヤさまぁ~ず2」。ゲストの俳優・上川隆也さんの気配りの素晴らしさに感嘆したさま〜ずの二人が、食事中にさっと取り皿を用意してくれた上川さんに対して三村さんは「ほら、この配慮!」と言い、謙遜する上川さんに「次の配慮は?」と言って笑った。

私はあまり気が利かない人間なので、周りに気を使われると何とも申し訳ない気分になる。とはいえ、いくら相手に「気を使わないでください」と言ったところで「はい、わかりました。もう使いませんよ」とはならないわけで、一緒にいる時間の長さに比例して、気遣いに対する申し訳なさも積もっていく。この罪悪感から逃れるには「で、次の気遣いは?」と笑って声に出してみるといいのかもしれないなと思った。

過剰な気配りが必要な人間関係の先に「友達」というのはない気がする。やはり、気を使わなくなって初めて、「知り合い」と「友達」の間の壁を越えるのだと思う。その意味で、なかなか距離が詰まらない相手に、冗談めかして「で、次の気遣いは?」と言ってみる。少し高慢な言葉だからこそ、もしも相手が笑ってくれたら、結構仲良くなれるキーワードのような気がする。

  

4/25放送の「ホンマでっか!?TV」でのこと。現役女子高生が、今の「スゴい」の最上級は「鬼パリピ」だと紹介していた。少し寒い時は「鬼寒い」、もっと寒い時は「鬼パリピ寒い」と言うのだそう。それを聞いた木下優樹菜さんが「私がギャルだった頃に“鬼”が生まれてこの時代に鬼をまだ使ってくれている、鬼残しがすげえうれしい」と言った。

女子高生の流行というのは移り変わるスピードが速すぎて、常に残像を見ているような感覚がする。少し前は女子高生のあいさつは「卍」だと聞いた気がするけれど、今は「いい波乗ってんねぇ〜」なのだそう。本当だろうか。初めて聞いたが。でも、このあいさつすらおそらくもう残像で、日本のどこかでまた新しいあいさつが生まれているのだろう。そんな中で「鬼」という言葉の生命力たるや、マジ鬼パリピやべえじゃん。

  

4/25放送の「水曜日のダウンタウン」で、“「ありがとうございました」は「あ」と「た」さえ合っていれば間は何でもいける説”を検証していた。春日さんが「親戚の子がサインを欲しがっている」と言って先輩芸人にサインをもらい、別れ際にお礼を言う。最初は「アリゲーターいました」で成功。その後、「兄が罪人でした」「アバラ折れました」「あのオモロー山下」でも成功。「アバター」でも「あの鐘を鳴らすのはあなた」でも成功した。

自分でもこれを試してみたいのだけれど、感謝の気持ちを悪ふざけで濁すというのが何とも心苦しい。なので、日頃から周りの皆と「ありがとうございました」は別の言葉で言ってもいい、というコンセンサスをとっておくと、面白いゲームになる気がする。例えば何か後輩を手伝ってあげた後、「先輩、味が濃いめでした」「ダウト! 今なんつった!?」みたいな。ひと笑い起きて、ちょっと職場の雰囲気もよくなる気が。

  

こいのぼりが泳いでいる

息子が幼稚園から色紙で作ったこいのぼりを持って帰って来た。私はこいのぼりを飾る風習がない家庭に育ったので、その扱いに少し戸惑ったけれど、リビングのカーテンレールにくくりつけて飾ることにした。

そういえば、こいのぼりにはどんな意味があるのかしらと思って調べてみると、「中国故事のコイが激しい滝を登り切って竜になったという伝説にちなんで、どんな環境にも耐えて、立派に成長するようにとの願いを込めて飾るようになった」とある。なるほど。そうか、そうか。そういう理由があったのか。……と思ったのもつかの間。「ホワイ、ジャパニーズピーポー! じゃあ、広島カープは中日ドラゴンズよりそもそも弱いことになるだろ! いいのかよ広島! コイのままで!」と心の中で叫んでいた。

プロ野球は不思議なチーム名が多い。オリックス・バファローズなんて、ぱっと見、二種類の草食動物が入っていて非常にややこしいし、『鷹(たか)』を調べてみると「タカ目タカ科に属する鳥のうち、中・小型のものの総称。大型のものはワシと呼ばれる」と書かれてあるから、「ホワイ、ジャパニーズピーポー! じゃあ福岡ソフトバンクホークスは、楽天ゴールデンイーグルスよりもそもそも弱いじゃないか!」と、思ってしまうのだけれど、これは楽天のほうが後出しジャンケンなわけで、わざわざ鳥をチーム名にする必要はなかったことを考えると、楽天ってちょっと意地が悪いなとも思う。

私は2009年に公式応援歌を作詞させてもらって以来、日本ハムファイターズを応援している。今年はチームの調子が良くて嬉しい。大谷くんが抜けた寂しさはあるが、彼は海の向こうでさらに輝いている。それこそコイが竜になったかのように。

開けた窓を抜ける風で小さなこいのぼりが揺れている。間の抜けた顔をしていて、竜になどなりそうにもないけれど、カーテンレールに必死にしがみついている。今日も一日がんばろう。

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