ミレニアルズトーク Millennials Talk

私たちは、“メイクマネー”で満たされない

  • 【西山里緒✕石井リナのミレニアルズトーク】
  • 2018年5月9日

  

女性向けエンパワーメント動画メディア「BLAST」を運営するBLAST Inc.のCEOであり、SNSコンサルタントでもある石井リナが、ミレニアル世代を掘り下げる連載「石井リナのミレニアルズトーク」。ミレニアル世代の中でも1990年前後に生まれた人間は、現在27歳前後。社会に出て数年たち、ネットネイティブで育った柔軟な感覚で様々な新しい働き方に取り組んでいる。

学生時代にガラケーを持ち、インターネットとともに育ってきた環境のミレニアル世代たちは、どういった価値観をなにによって形成してきたのか。バブル世代とジェネレーション世代のハザマに生まれ、双方のハブとなり得る存在のミレニアル世代を深掘る。

第4回目は、91年生まれのビジネスインサイダージャパン編集者/記者の西山里緒をゲストに招き、刹那的に生きるミレニアルズの世界観を追っていく。西山は学生時代に「欧州海賊党」でインターンをした経験を例に挙げ、変化を拒む社会に「批判」を投げかける意義を語った。“make money(お金を稼ぐ)”で満たされることのない「心の渇き」を埋めるミレニアルズを、編集者の視点で紐解いた。


私たちは、社会の歪さに目を瞑れない

石井リナ(以下、石井):里緒ちゃんはミレニアル世代のカルチャーを得意分野に記者として活躍してるけど、そもそもどうして記者を志したの?

西山里緒(以下、西山):「意見を発信する側」になりたかったの。記者になる前はデジタルアートを手がけるチームラボに所属していたんだけど、アート系の企業に勤める以上、個人で情報発信するのってなかなか難しくて。前職では本当に意義のある時間を過ごさせてもらってはいたけれど、学生時代に学んでいた国際政治について、自分の声で伝えたかったんだよね。

石井:学生時代の話、詳しく教えてもらっていい?

西山:早稲田大学に入学して、1年間交換留学でスウェーデンに行き、EUについて学んでいました。EUは「国家政府」と「世界政府」の中間に位置していて、私にとってすごく興味深いことで。学んでいくと「そもそも国ってなんだろう?」みたいなことを考えたくなって、そのまま早稲田大を辞めちゃったんだよね。その後オランダの大学を受験して、EUの政治を専攻しました。

石井:大学を辞めちゃうくらい興味があったんだね。ちなみに、どういうことに関心があったの?

西山:昔から「常識を疑う」というか、既存の考え方に疑問を持つことが多かったの。EUについて興味を持ったのもその延長線上のことで、国家政府でも世界政府でもない曖昧(あいまい)な存在に惹(ひ)かれていったんだよね。

石井:留学中に「海賊党」でインターンしていたんだよね?

西山:スウェーデンに留学していたときなんだけど、たまたま「海賊党」という政党の存在を知ったんです。

海賊党は、著作権法の改正を求める政治運動がルーツ。政党を立ち上げたのは、個人がファイルを共有しあえるソフトウェアを運営していた人です。そのソフトウェア上に著作権のあるコンテンツが不法にアップロードされて、「ソフトウェアを運営していること自体が著作権法違法なのではないか?」と問題になったの。

  

石井:つい最近話題になった、海賊版サイトのブロッキングの話と同じかな?

西山:似た事象なんだけど、海賊党の彼は「あくまでファイルソフトを運営しているだけで、著作権法違反にあたらない」と主張して、実際に政党まで作っちゃった。そうした運動を間近で見ていて、「そもそも法律自体が間違っていることもあるんじゃない?」って思ったの。結果的に海賊党でインターンをすることになって、政治運動にも参加していました。

石井:私も里緒ちゃんと同じような問題意識があるかな。たとえば、アメリカでは大麻が米国の数州で合法化された動きがある。ただ、日本では「ダメなものはダメ」で片付けられている気がして。大麻も「ドラッグ」と一括りにされていて、それぞれの危険性を知らないことにも危うさを感じる。

西山:まさに! 私が3年間住んでいたオランダは、大麻も売春も合法な国なのね。同性婚を世界で初めて導入した国でもあるし、今ある現実を盲信しない国民性がある。記者になった背景に、オランダで過ごした経験はすごく影響していると思うな。

石井:海外の一部では大麻が合法なのに、日本で大麻を扱っていたら犯罪者になる。死刑制度とかもそうだけど、世界規模でみたときの“ちぐはぐ性”にはどこか違和感を感じちゃうな。もしかすると、そうした疑問を持っているのが、私たちミレニアルズの特徴かもしれないよね。

ビットコインはノアの方舟

石井:記者として、最近テーマにしていることはあるの?

西山:著作権問題も追っていきたいテーマなんだけど、最近は仮想通貨について記事を書くことが多いかも。でも、私の中ではこの二つのトピックはゆるくつながっているんだよね。

仮想通貨は、中央集権的なお金の制度を、非中央集権化していくシステムで。いわゆる“分散化”を目指しているんだけど、著作権問題にも同じ文脈があるの。海賊党が目指した「新しい著作権」は、出版社がコントロールしていた著作物の流通を、もっと自由にしていくことなんだよね。

石井:“インターネット的”ってことだよね?

西山:うんうん。ミレニアルズの世界観にもつながるんだけど、私たちって中央集権的な制度に対する反骨精神のある世代だと思うの。グローバル規模でみても経済格差が年々大きくなっていて、学費はどんどん高くなったり、家を買うにも値段が高騰していたりで、ある種の“諦め”を持っているんだよね。

ある意味、その反発として海賊版サイトが出てくるし、それをみんなが使う。既得権益への怒りがあるんだよ。仮想通貨のムーブメントが起こるのも、そうした背景があると思うな。

石井:私が思うに、ミレニアルズって「瞬間瞬間に価値を見出し、物事を消費する世代」。刹那的に生きてる。欧米諸国では、奨学金のローンがミレニアルズを経済的に苦しめているという側面もあって。

イギリスのネットバンク「ファースト・ダイレクト」の調査によると、ミレニアルズの53%が「収入より支出の方が多い」と答えていて、56%が「クォーター・ライフ・クライシス(20〜30代で感じる人生の重圧)」に陥っているとまで言われている。そんな状況下で、将来的に家や車を所有することへの憧れを抱くことの方が難しいよね。

西山:仮想通貨をテーマに取材した際に、ある子が「ビットコインは僕らにとって、ノアの方舟なんです」って言ってたの。その子は、もういまの金融のしくみは終わっていて、生き残る手段が仮想通貨だと考えている。

石井:ミレニアルズについて調べていて思うんだけど、私たちは将来に悲観的な世代だよね。「若者の政治参加が少ない」なんていわれるけど、政治に参加したところで社会が変化するようには感じられないんじゃないかな。

  

ニューエリートは“インパクトと社会貢献”にこだわる

西山:記者を志した理由にも通じるんだけど、こんな時代だからこそ、自分のオピニオンを発信していきたいんだよね。刹那的に生きることもできるんだけど、現状に批判的な視点を持ち込みたいと思っていて。「批判」はネガティブな言葉ではなく、本当はすごくポジティブ。言い換えれば、「今をどう変えていくのか?」に他ならないじゃん。

石井:私も悲観的になることはあるんだけど、それでも日本の未来も信じたいと思ってる。BLASTを通じて日本の女性を解放していきたいと思っているしね。

西山:「傍観者にはなりたくない」ってことだよね。私、10年前に坊主頭にしたことがあるの。友だちが病気で髪の毛がなくなってしまい、私も髪を刈り上げたんだよね。そうしたら、先生に「制服に似合わない」って怒られてしまって。もちろん理由を説明したら何も言われなくなったんだけど、その先生は、ある種常識に囚われた行動をしていたと思うの。

石井:“mybody my choice(私の身体は私が決める)”なはずなのにね。でもきっと私たちの世代は、そうした勇気ある行動に賞賛をくれるはず。形は何であれ、私自身も何かのきっかけになる存在になれたらいいな。

たとえば大学時代は周囲と変わらない存在だったけど、今は経営者になれている。ロールモデルになりたいわけじゃないけど、希望の一つになれたら嬉しい。私たちに共通するキーワードは「エンパワーメント」だね。

西山:うんうん。ただ現状、「エンパワーメント」という文脈が、お金稼ぎのメッセージングばかりで残念だなって。「お金稼いで自由になりましょう」という風潮は否定しないけど、それだけなのは悲しすぎる。

石井:『ニューエリート』(大和書房)という書籍に「オールドエリートはステータスにこだわるが、ニューエリートはインパクトと社会貢献にこだわる」と書かれていて、まさにそうだなって。

西山:私たちは、“make money(お金を稼ぐ)”だけでは満足できない世代。資本主義の先にある「エシカルさ」を追い求めていきたいよね。

(編集部注:エシカル(ethical)意味:倫理的)

  

<対談を終えて>
私たちミレニアルズは、存在しないはずの“常識”に雁字搦(がんじがら)めにされた生き方に、いつだって疑問を投げかけている。刹那的に生きることは、諦めを意味するのではなく、変化を拒む社会に反旗を翻しているのかもしれない。

「批判はネガティブな言葉ではない」――。彼女が語ったように、私たちが声を上げることで、いつだってほしい未来をつくることができると、信じていたい。

文:小原 光史
写真:大森 めぐみ

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