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ハサミをいれると見た目が一変! 不思議なテキスタイル「snip snap」

  • 2018年5月24日

かわいい絵柄にハサミを入れて風景を描く、驚きの生地

最初にお伝えしておきます。これはただの“かわいい布”じゃないんだ、ってことを。

ご紹介する3種類のテキスタイル「LAPLAND」、「SHIBA」「HAKKUTSU」には、風景が描かれています。

でもそれだけではありません。どれも、生地の上をふわりと覆っている糸を切ると、その下に隠された絵や色が出てくるのです。

表面にフワリとかかっている糸を切ると、下から新しい色や絵柄が出てきます。そして切った糸も水しぶきや波のように、表現の一部になるのです。こちらは「LAPLAND」

例えば「LAPLAND」で描かれているのは、このテキスタイルの作者、氷室友里さんがフィンランドに留学したときに出合った風景。

湖に張った氷や雪が淡い水色の糸で表現されています。それを切ると顔を出すのは、青い水や、小さな魚。切った糸の残りも、まるで舞い上がる雪や、水しぶきのようです。

サウナから出て凍った湖に飛び込んだり、氷に穴を開けて魚釣りをしたり、船が氷をかき分けて進んだり。雪と氷に覆われたフィンランドの風景を表現する絵が、糸を切ることでできあがるのです。

切る場所や、大きさ、形によって、自分だけの新しい絵を描くことができます(「LAPLAND」のテキスタイル)

そして「SHIBA」も同じように、一面緑の原っぱはハサミを入れることで、隠れていた動物や鳥たちがうごめく大地に早変わり。緑の下にかすかに見える影を頼りに切ってみると、茂みの中から動物たちが顔を出します。

一枚の大きな緑の布は、ハサミを入れることで、いくつものシーンが織りなす楽しい日常の風景になるのです。

こちらは「SHIBA」。芝刈りや農作業の風景ができます

氷室さんとの出会いは、彼女が多摩美術大学の学生だった時。同じ大学の仲間3人でデザインのユニットを組んで活動していたのがきっかけでした。

その後間もなく、氷室さんはテキスタイルの勉強のためにフィンランドに旅立ちました。

次に会ったのは、それから1年半後。帰国して卒業制作も無事に終えた彼女が個展で発表したのが、このテキスタイルだったのです。

それからさらに半年の開発期間を経て、この生地は商品として発売されることになりました。

「LAPLAND」は、氷室さんがフィンランドに留学していたときに出合った風景をもとにデザインされています

こんな楽しい生地なので、このまま飾りたい方も、何か作りたいという方も、生地の状態でぜひお使いいただけたらうれしいです。

しかもLAPLANDとHAKKUTSUの生地は、一枚での販売だけでなく、「この位置が欲しい!」というリクエストに合わせて作ることができます。

ただし、普通の布よりも繊細な生地なので、擦れたりするような使い方は難しくて、タペストリーやクッションカバーのように鑑賞メインが良いそうです。

こちらは「HAKKUTSU」。まさに発掘を楽しむデザインです

さて、このすごい生地はどうやってできているのか? かなり興味を引かれて、根掘り葉掘り、作者の氷室さんに聞いてみました。

ただ見たこともないような生地だけあって、これがかなり難しいのです。

一見、二重になっているように見えますが、実は普通の生地を織るのと同じように一枚の生地として織られています。

すごいのは、その織り方を糸1本単位まで精密に設計することで、まるで二重になっているように見える構造を作りだし、同時に色や柄、そして生地の質感までコントロールしていることです。

詳しくは「密買東京」のサイトで説明を試みていますので、気になる方は下のリンクからご覧いただけたらうれしいです。

クッションカバーもあります。写真は切った状態のサンプル

織物は、経(たて)糸と緯(よこ)糸を組み合わせて作られますが、今回の作品の場合には、5色の糸が緯糸として使われています。

さらに経糸として白黒2色の糸が使われていて、その糸をどう織って、どう組み合わせるかを考える。そうやって、柄を作りながら、同時に糸をしっかり織るのか、ゆるく織るのか、という構造も考えながら生地が作られるのです。

普通その構造は、工場の職人さんが考えてくれるのだとか。日本では、テキスタイル作りは分業化されているので、デザイナーは柄を考えて、こんな素材で、柔らかくとか、しっかりした感じとか、ニュアンスを指定するそうです。そうすると作り方は職人さんが考えて、こんな織り方で、というのを決めてくれるのです。

それを氷室さんのように一人で生地の柄から、一本一本の糸の織り方まで全部決めるということは、めずらしくて……。

でも氷室さんが留学したフィンランドでは、工場と同じ構造を作れる織機を使った授業があったそうで、その経験からデザインと構造の両方を考えられるようになったのだとか。

こんな風に試行錯誤を繰り返しながらデザインされています

フィンランドでは一体何のためにそこまで勉強するのか?

実は生地の構造についての知識は、表現できる色や質感の幅を広げるためにあるそうで、色彩に奥行きを出したり、質感を変えたりするために、その知識が必要なのだといいます。

生地は数色の緯糸と、経糸によって色が決まります。それこそ、絵の具の青色に黄色を混ぜると緑色ができるように、中間的な色を表現することができるのです。

といっても、糸が混ざり合うわけではありません。プリンターやカラーコピーは数色のインクやトナーでフルカラーを表現しますが、それと同じようなことがテキスタイルでもできるのだそうです。

つまり経糸と緯糸の交差で表現されるテキスタイルは、いってみれば無数の小さなドットが並んでいるのと同じです。それを意のままにコントロールすることができたなら、たった数色の糸でも表現の奥行きは限りなく広がることになります。

それを留学先で学んできた氷室さん。でもフィンランドのデザイナーと同じように絵画的表現力を探求するのかと思いきや、生地の構造自体をコントロールするという面白さを、それを作品として表現することを目指すことにしたのです。

見えている糸の色で、一枚の生地の絵を全て表現しています

そうやって生まれたのが、この作品。色彩は多いわけではなく、どちらかと言うと限定的ですが、作品の構造自体に仕掛けを作ることで、そこに奥行きを持たせてしまうという、驚きの表現を実現しています。

もちろん、日本では生地の組織にまで指示をするなんて容易なことではないし、そのための知識を持ち合わせている人も少ないので、実際に生地の産地である岐阜に何度も足を運んで、時には構造を職人さんから学ぶために群馬の桐生に通って、試作を重ねたそうです。

そんな途方もない努力の積み重ねで完成したこの生地「snip snap」シリーズ。ぜひ想像力を膨らませながら、楽しく切って描いて使ってもらえたらうれしいです。

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(文・千葉敬介 写真提供・氷室友里)

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