インタビュー

榮倉奈々&安田顕「生々しさがなくて、いそうでいない。思いやりある夫婦を演じました」映画『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』インタビュー

  • 文・武田由紀子 写真・花田龍之介
  • 2018年6月4日

映画『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』でW主演する、榮倉奈々さん(右)と安田顕さん

「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。どういうことなのでしょうか?」――2010年「Yahoo!知恵袋」に投稿された質問が話題を集め、コミックエッセー化。そして榮倉奈々さん、安田顕さんW主演で実写映画化される。6月8日(金)から公開される映画『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』で2人が演じるのは、ちょっと風変わりな結婚3年目の夫婦だ。

「家に帰ると榮倉奈々が死んだふりしてるんだから、そりゃ許しちゃうよね(笑)」と盛り上がる安田さんに、「安田さんは、普段から奥さんにとても感謝しています。心の中にそんな思いがあるのは素晴らしいなと思います」と榮倉さんが返しつつ、和やかな雰囲気でインタビューに答えてくれた。

(C)2018「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」製作委員会

榮倉「ちえさんが持つ優しさや愛情、普遍的な部分を伝えたい」。安田「バツイチ役をしていると、離婚しなくて済むんじゃないかと(笑)」

主人公は、ちえとじゅんの結婚3年目の夫婦。ある日家に帰ると、妻のちえが死んだふりをして倒れていて、じゅんは腰を抜かして驚く。ちえは、笑いながら「驚きましたか? さあ、ご飯にしましょう」と夕飯の準備に取り掛かる。それからというもの、ちえは毎日死んだふりをしてじゅんの帰りを待つようになる。

榮倉「死んだふりをして夫の帰りを待つ妻…と聞くと、突拍子もないことをする妻と思う人が多いと思いますが、もしその一面しか見えない人だと誰も共感できないと思ったので、ちえさんが持つ、優しさや愛情、普遍的な部分を伝えられるように気をつけました。

脚本を読んで、夫婦の普遍的なものがたくさん描かれているなと感じました。全て言葉で表現されているのではなく、行間や雰囲気から感じることが多かったです。監督とも、それほど役づくりについては話さなかったのですが、話し合ってできるものではないという気持ちがあったかもしれません」

(C)2018「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」製作委員会

安田「原作はすごく面白いなと思ったのですが、脚本を読ませていただいた時には、自分には面白みが理解できなかったです(笑)。字面だけだったのもありますが、どうしたら面白くなるんだろう? と考えたりもしました。でも完成した作品を見て、自分は読解力がなかったんだなと恥じてます(笑)。監督の李闘士男さんの世界観がちゃんと描かれてましたから。最近、バツイチの役が多いんですよね。でも、ウェディングドレスを着ると婚期が遅れると言いますから、バツイチ役をしていると、離婚しなくてもいいんじゃないかと思うんで、どんどんバツイチの役をやっていきたいと思います(笑)」

“死んだふり”は15パターン。夏場で大変だった撮影を振り返りつつ、夫婦役から学ぶことも

ちえの死んだふりは奇想天外。ナイフが胸に刺さっていたり、ワニに食べられたり。頭に矢が刺さっていることあるし、落ち武者やドラキュラになることも。死んだふり15変化は、楽しいだけでなく苦労もたくさんあったと振り返る。

(C)2018「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」製作委員会

安田「僕が驚くシーンは、実はちえは目の前にいないまま撮影することもありました。榮倉さんが死んだふりの着替えに行っていて、誰もいないところで驚いた演技をするんですね」

榮倉「夏場で扮装によってはとても暑かったのもありました。撮影時の苦労が思い出されます(笑)。美術部さん、メイク部さん、衣装部さん、みなさんの努力や優しさへの感謝しかありません。安田さんがちえさんの死んだふりを見て、台本にはないリアクションを取ってくださった時もありましたよね? つい笑ってしまいました(笑)」

安田「何回も驚くシーンをやっていると投げやりになってしまって、アドリブで勝手に始めたんですよ。手持ち無沙汰だから(笑)。死んだふりが終わってから、2人で一緒に芝居できるのがすごく楽しかった。どちらかと言うと、お芝居好きだからさ(笑)。テーブルに向かうと前にいてくれる、それだけで楽しかったなぁ」

(C)2018「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」製作委員会

「いそうでいない、生々しさのない夫婦」(安田さん)、「思いやりのある夫婦」(榮倉さん)と感じたという2人。少し風変わりなこの夫婦から、学ぶところも多くあったと語る。

榮倉「夫であるじゅんさんが大切な人だと理解して、大切なものをずっと大切にできる、シンプルで揺るぎない、ちえさんの姿勢が強くてうらやましいなと思いました。人って、つい欲深くなってしまうこともあると思います。 結婚して新しい場所に住むと不安ですし、いい環境を整えようとしてしまいますが、ちえさんは全てを受け入れて、その中で幸せを探している感じがしました。専業主婦で、死んだふりの仮装を作るのが趣味で、じゅんさんの帰りを待つ。そういう小さなことに、幸せを感じられる人でありたいと思いました」

【動画】完成披露試写会に榮倉奈々さん、安田顕さん、大谷亮平さん、野々すみ花さん、李闘士男監督が登場(5月15日撮影)

安田「じゅんと僕の共通点は、あまりないですね。じゅんはきちんと夫婦に向き合っているようで、でも向き合っていない部分もある。前の奥さんから届いた郵便物を、パッと隠しちゃうこともあるから、おもんぱかっているところが違うのかな。

でもじゅんは、優しいですよね。うらやましいのは、最後にちゃんと自分の気持ちを伝えられたことかな。芝居をしていると、芝居を超えた芝居というか、自分の中にあるものが出てきてしまう時もある。同僚役の大谷(亮平)さんとの居酒屋のシーンでは、本当に酒を飲みましたからね(笑)。そこでは本当の自分が出ているかもしれない(笑)」

榮倉「身近だからこそ、頑張らないといけない時もあるのかな」。安田「死ぬまで『今が頑張り時だよ~』って言われるんじゃないかとゾッとする(笑)」。

毎日死んだふりをしているちえに対して、「なぜ死んだふりをするのか?」と疑問に思い、3年目の結婚生活に不安を感じるじゅん。劇中では、「夫婦は頑張らなくていい」「毎日一緒にいる中で知っていく」など、ちえのさりげないセリフが心に響く。

死んだふりをする妻・ちえを演じた榮倉奈々さん

榮倉「『頑張らなくていい』とはいえ、何もしなくていいということでもないのかなと思います。身近だからこそ、頑張らないといけない時もあるのかな、と……」

安田「僕は、ハムスターが走るみたいにずっとカラカラカラカラ空回りして頑張ってきたから。北海道の事務所の社長に、ずっと『今が頑張り時だよ~』って言われ続けて、『今頑張んなきゃ!』とずっと思ってるけど。気がついたら40半ばで、50過ぎても『今が頑張り時だよ~』って言われるのか? 死ぬまでそう言われるんじゃないかと想像するとゾッとするね(笑)。嫌になっちゃうこともある。頑張れって、言われるとムカッとこない? ちゃんと頑張ってるよ!と言いたくなるんだよね。“頑張る”=頑なに張ると言う意味だし……」

榮倉「そこまで深く受けとめなくていいんじゃないですか(笑)。私はあまり疑問に思いませんでしたが。逆に、安田さんがこれだけ考えてくださっていたので大丈夫だなという安心感がありました。でも安田さんは、疑問に思っていることもあったと思うのですが、現場では必ず『はい!』って言うんです」

安田「結局出ちゃってるんだよね、それが顔に(笑)。『今頑張れ!』って言われていない人は、パッと出てすぐに演技できちゃうんだよね。俺は、頑張ってるよ! って気持ちが顔に出ちゃってるんだよね」

ちえの夫・じゅん役の安田顕さん

ちえの過去や今の気持ちが明らかになるつれ、死んだふりをしている本音が分かり始める。「夫婦って何だろう?」「結婚した時は、どんな気持ちだっただろう?」と振り返ることで、かけがえのない日常、相手を思いやることの大切さなど、つい忘れてしまう大事なことを思い出すきっかけになる。2人がこの作品を通して考える“結婚”とは、どんなものだろうか。

安田「僕の人生の半分。人生を縦で割るか、横で割るかで変わってくるけどね(笑)」

榮倉「セリフにも『半分こできるからちょうどいい』とありましたね。他人同士が一緒に暮らすようになって、きれい事ばかりではないけれど、いろいろなことを分かち合わなくてはいけない。修行のようでもあるけれど、分かりたいと思うからそれが続くわけで、相手にそう思ってもらえることもありがたいですし、分かりたいと思わせてくれる人がいることもありがたいですね」

安田「こういう仕事をしていると、言いたいことや思ったことを一回腹の底に落として背中に回してからしゃべらなきゃいけない。夫婦は、お互いにそうする必要がないですもんね。でも我慢するところは我慢するし、譲るところは譲る。好きなことも話せる。しかもケンカもする、ささいなことでね。全部ひっくるめて、大切な存在ですよね」

榮倉「いつまでも食卓を囲める夫婦はすてきだと思います」、安田「長生きしつつ妻より先に死にたい」

結婚3年目、ちえとじゅんの夫婦は“死んだふり”をきっかけに、改めて互いを見つめ合い、気持ちを再確認する。榮倉さん安田さんにこの作品を通して思った理想の夫婦像について聞いてみた。

(C)2018「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」製作委員会

榮倉「劇中で『さあ、ご飯にしましょう!』と切り替えるシーンがとても好きです。食べる=生きている、一緒に生活しているというのを肌で感じます。外食しようと思えば手軽にできてしまう今の時代に、ちゃんと食卓を囲んでいるのはいいですよね。そう考えると、いつまでも食卓を囲める夫婦はすてきだと思います。ご飯の後にテレビを見るのもいいけれど、ゆっくりのんびりと、ちえさんとじゅんさんのように何もない時間を過ごせるのはいいなと思いました」

安田「僕の理想は、長生きしつつ妻より先に死にたい。『幸せだったよ、ありがとう』と言いながら、先に死にたいね。残されるのは絶対嫌だな~。パンツも履けないんじゃないかな、どこにあるか分からないから。結局自分のことしか考えていないね(笑)。『ガンジー』って映画が好きでね。その中で、奥さんが先に亡くなっちゃうんだけど、その時、ガンジーが黙ってポトリと涙を落とすのね、ああいうの好きだなあ。理想は反対だけど、ガンジー夫婦みたいなのがいいよね。絶対暴力も振るわないし」

「人との関わりがあたたかくていいなと思う映画です」

100組の夫婦がいれば、100通りの夫婦の姿がある。どの夫婦も出会って、育んで、ケンカをして、それぞれのストーリーを歩んで来た。『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』を見た後は、夫婦の小さなエピソードをふと思い出すように、あたたかな気持ちに満たされるはず。最後に、映画の見どころとメッセージをくれた。

安田「監督である李闘士男さんの世界観が全編にあふれています。ライトで説教臭くなく、映画館を出た後に、じんわり、さらっと大切な人について思いを持てる映画に仕上がっていると思います」

榮倉「人との関わりがあたたかくていいなと思う映画です。ちえさんとじゅんさんの夫婦はもちろん、親子も、ご近所付き合いも、それぞれがすてきで、いろいろな人の人生の奥行きを感じた気がします。メインは4人、2組の夫婦の話ですが、それ以外の人たちの人生も想像できる楽しさがあります。『結婚って、いいな』と思っていただけるとうれしいです」

【予告編】『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』

[PR]

『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』作品情報
出演:榮倉奈々、安田顕、大谷亮平、野々すみ花
原作:「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」(作:K.Kajunsky 漫画:ichida/PHP研究所刊)
監督:李闘士男
脚本:坪田文
主題歌:チャットモンチー「I Laugh You」(キューンミュージック)
配給:KADOKAWA
(C)2018「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」製作委員会
上映時間:115分
6月8日(金)全国公開
公式サイト:tsumafuri.jp #妻ふり

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

今、あなたにオススメ

Pickup!

Columns