キャンピングカーで行こう!

キャンピングカーを安全に運転するための足回りカスタマイズ術

  • 文・写真 渡部竜生
  • 2018年6月6日

ロングドライブになることも多いキャンピングカー。写真のようにきついカーブを走ることも。安心できる操安性は運転者の疲労軽減にもつながる

「高速道路でトラックに抜かれるときフラフラするんですが、なんとかなりませんか?」「前方に渋滞を見つけてブレーキを踏んだら、意外と利きが悪くて……」

ショー会場やオフ会などで、ときどきいただく相談です。車両の重心が高いせいか、特にキャブコンのオーナーさんに多いお悩みのようです。

キャブコンのベース車両はトラックです。元々が貨物を積むことを前提にした車ですから、乗り心地や操縦の安定性よりも「頑丈さ」や「安さ=経済性」が優先されていることも原因のひとつでしょう。

また、ご質問をくださった方とお話しするうち、ある共通点に気づきました。それは「乗用車を基準に考えている」ことです。キャンピングカー友達の中には、トラックやバスの運転手の方も多いのですが、こうした普段から大型車両に慣れている人からは、あまりこの手の質問は出てきません。

当然といえば当然ですが、乗用車の経験しかない人がキャブコンのような背の高い車に乗れば、車の挙動の違いに戸惑うのもうなずけます。

では、「慣れるしか他に手はないのか?」といえば、そうでもありません。足回りにさまざまなカスタマイズを施すことで、ある程度まで補正は望めるのです。

足回りカスタマイズ方法のあれこれ

では、どんな手立てが考えられるのか。比較的手軽にトライできる順にご紹介しましょう。

ショックアブソーバーの交換

最も検討されることが多いのが、ショックアブソーバーではないでしょうか。ショックアブソーバーはすべての車に装着されている機構で、省略して「ショック」とか「ダンパー」などとも呼ばれます。

よく、「ダンパーを硬くする」とか「このショックは柔らかい」といった表現を見かけることがありますが、実はそれは間違っています。ダンパーの役目は『バネが吸収した車輪からの衝撃エネルギーを、ゆっくりと熱に変換して振動を抑えること』です。

簡単に言ってしまえば、車体の揺れや傾斜をコントロールしているのです。例えば急なカーブで車が傾くとします。傾く量(角度)が同じでも急激に傾くと怖いですが、ゆっくりならば対処もしやすくなりますよね。

前に書いたような「トラックに追い抜かれるとふらつく」といった悩みの場合、このダンパーをより高性能なものに交換すると改善が見込めます。

もう少し詳しく説明しましょう。

極端な言い方をすると、車体は4つの車軸上のバネの上に乗っています。路面が凸凹だったりするとバネが伸縮しますが、バネだけでは、いつまでもトランポリンのようにビヨンビヨンと弾み続けてしまいます。そこでバネと平行するようにセットされているショックが、弾み続けようとするバネを短時間に抑えるというわけです。この、弾みを抑える力を「減衰力」といいます。

では、より減衰力の大きいショックに取り換えればいいのかといえば、そうとは限らないのが難しいところです。

減衰力を大きくすれば、グラグラする動きは低減されます。ですが、路面に大きな段差があるような場合、脚が突っ張ったようになって弾まず、かえって乗り心地が悪化してしまいます。純正のショックは、車の重量、重心の高さ、バネの力のバランス上、いわば「妥協点」に設定されています。

その妥協点以上の乗り心地を手に入れるには、「小さな動きには柔らかく対応し、大きな衝撃には粘り強い動きをする」「段差のような速い動きにはしなやかに。横風のようなゆっくりした動きにはしっかり踏ん張る」など、さまざまな特性が与えられているアフターマーケット品(社外品)を選ぶとよいでしょう。また、路面の状況に応じて、運転席のダイヤルひとつでショックの減衰力が簡単に調整できるなど、メーカーや製品によっていろいろ特徴があります。ご自分の車にどんなショックがよいのか、ビルダーやキャンピングカーパーツ販売店などに相談してみるとよいでしょう。

キャンピングカーショーなどでは、足回りパーツの展示も多数ある。同じ車種でも居室部分の架装バランスによって対策は異なるので、まずはプロに相談してみよう

スタビライザーの追加・交換

左右のサスペンションを連携させ、ロール(車の左右の揺れ)を直接抑制するためのパーツがスタビライザーです。これが搭載されているかいないかは車両ごとに異なり、例えばトヨタ・カムロードの場合、フロントには純正で装着されていますが、リアには装着がありません。そこで、フロントをより抑制力の強い強化型にする、もしくはリアにもスタビライザーを追加する等の対応が考えられます。

ロールはどんなときに発生するでしょうか。

ひとつは、道路は平たんだけれど、急カーブを曲がった場合。重心の高い車で急カーブを曲がれば、遠心力の働きで車は大きく、カーブの外側に向かって倒れこみます。

もうひとつは、カーブではないけれど、路面の凹凸が大きい場合。車は直進していても、右や左の車輪が片方ずつ何かに乗り上げれば、やはり車は左右にロールすることになります。

さて、スタビライザーは片側のスプリングが縮むと逆のスプリングも縮ませるように働きます。平地で、片足だけしゃがめば、上体は傾きますよね。その時、反対の足もしゃがませれば身体の水平が保たれる、という理屈です。

左右のタイヤの動きにアンバランスが生じたときにはじめて働く機構なので、左右が同じ動きをするとき(両輪がまっすぐ段差に乗り上げた場合など)には働きません。通常、横揺れを抑えようとする場合はスプリングを硬くするしかないわけですが、それでは乗り心地が硬くなります。スタビライザーは乗り心地を硬くすることなく左右の揺れだけを抑えることができる機構なのです。が、こう書くと「いいことずくめ」に見えますが、本当にそうでしょうか?

ここで問題になるのが、ロールのふたつの原因の違いです。

急カーブを曲がるときの遠心力によるロールは、いわば平地で片足だけしゃがんだ状態です。反対の足も縮めてやれば、上体は平衡を保つことができます。

しかし、いわゆるデコボコ道などで、左右がランダムに段差に乗り上げるような場合は問題です。

例えば右前輪が段差に乗り上げれば、当然、右側のスプリングは縮みます。この時、左側はむしろ伸びていてくれないと、車体の平衡は保たれませんよね。ところがスタビライザーは右が縮んだなら、左側も縮めようとします。右足が乗り上げた状態で左足も縮めたら、上体はさらに大きく傾いてしまうというわけです。さらに、傾き方もベース車両や架装の状態、荷物の積み方など様々な要因が関係していますから、ただ強いスタビライザーをいれればOKというわけではなく、車の状況に合わせてバランスを取ってやる必要があります。

ただし、いずれの場合にも言えることは、重心の高い車の挙動特性をきちんと理解して、デコボコ道でも急カーブでも、とにかくスピードを落として侵入すれば、怖いと思うほどの傾きは回避しやすくなるということです。

補助スプリングを追加する

走りがフラフラする原因の一つには、前輪の設置荷重不足があります。キャンピングカーはどうしても居室部分が重くなります。極端な言い方をすれば、常にフル積載状態のトラックを走らせているようなもの。後輪に荷重がかかり続けて後ろ下がりの姿勢になれば、むしろ前輪は浮き気味になります。そうすると車は直進性が損なわれてしまいます。そこで、後輪に補助スプリングを入れることで後ろ下がりの姿勢を補正し、直進性も改善できるというわけです。

後ろ下がりを補正して重量配分が改善すると、操縦の安定性は向上。走りの上ではかなり良い結果になりますが、かなり大がかりなカスタマイズになるため、コストはかかります。また、どの程度の補助スプリングにするかを慎重に調整しないと、かえって乗り心地が悪くなる可能性もありますし、機構が複雑になる分だけ、トラブルが出やすくなるというデメリットも。ショックアブソーバー同様、ビルダーなどに詳しく相談してみましょう。

ダンパーや補助バネは付ければいいというものではない。その人の車の重量バランスを計測して、トータルな荷重バランスをとる必要がある

強化ブレーキパッドに交換する

ブレーキのききが悪い・弱い、といった不安点の解消には、強化ブレーキパッドに交換するという方法があります。レースマシンなど、スポーツカーの世界ではブレーキシステムを丸ごと交換するなど大がかりな対応をしますが、キャンピングカーの場合はブレーキパッドをより効くものに交換するしかありません。

車のブレーキは摩擦の力で回転する車輪を止める機構です。それだけ「効き」の強いブレーキにするということは、パッドやブレーキローターが「減る」ということと引き換えなのです。強化ブレーキパッドを装着する場合は、純正より頻繁に摩耗をチェックする必要があります。

注意したい!『誤解』が事故を招く

いろいろなパーツについて書いてきましたが、ここでぜひご理解いただきたいことがあります。それは「どんなパーツを装着しても、車としての限界点が上がったわけではない」ということです。足回りに何を組み込んでも、車の重心が変わるわけではありません。急カーブの遠心力が小さくなるわけでもありませんし、横風や悪路によるロールが小さくなっても、それはより大きな力で揺れを抑え込むパーツを導入したというだけ。

車にかかる負担は何も変わっていないのです。正しくは「かかっている負担が、身体に感じられなくなっている」だけなのです。

ときどき「●●を装着したら以前は60km/hでも怖かったカーブが80km/hでも楽に曲がれるようになりました」とか「ブレーキパッドを××に変えたら、50km/hでも不安だったブレーキが、80km/hでも楽勝で止まれるように!」なんて話を耳にします。

それは大きな間違いなのです。正解は「●●を装着したら60km/hでも怖かったカーブが、同じ60km/hでも安心して走れるようになりました」、「ブレーキパッドを××に変えたら、50km/hでも確実に止まれるようになりました」です。

どんなパーツを装着しても、大きく・重く・重心の高いキャンピングカーは、乗用車と同じ動きはできません。乗っている車の運動特性を理解して、常にスピードを抑えて安全運転、これが基本です。

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PROFILE

渡部竜生(わたなべ・たつお)キャンピングカージャーナリスト

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サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)がある。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫7匹とヨメさんひとり。

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