私の一枚

海外での時間が、私をリセットし、成長させてくれる クリスタル ケイ

  • 2018年6月11日

バリ、ウルワツにて。ケチャックダンスのあとの美しい夕焼けに見入る

今年の元日から10日間、バリに行ってきました。最初はスミニャック。次にウブドのあたりへ行って、そのあとスペインからの友達と合流してウルワツへ。ケチャックダンスを見に行ったら、ちょうど終わる頃に夕暮れの時間になって、それがもうめっちゃきれいで、ずーっと友達と写真を撮っていました。

泊まったのは、クリフサイドにあるかわいいホテル。バルコニーから海がバーンと見えて、階段を下りるとすぐビーチでした。天気のいい時も悪い時もありましたけど、ザーザー降りでもけっこう落ち着くんです。

東南アジアではベトナムもすてきでした。23歳ぐらいの男の子がメコン川のツアーガイドをしてくれたんですけど、彼はメコンの上流の貧しい地域から仕事を探してホーチミンに出てきたそうです。まだ若いのにベトナムの文化や経済や歴史をよく知っていました。メコンツアーの前にベトナム戦争のミュージアムにも行きましたが、時間の都合でゆっくり見られなかったので、「戦争の歴史を教えてくれない?」って言ったらとても丁寧に話してくれて、最後に「でも戦争は過ぎ去ったこと。未来だけを見るんだ」と言ったんです。若いのにそんなことを言うから、私ちょっと感動してウルウルしちゃって。東南アジアはとってもピュアでやさしい人が多い印象です。

ヨーロッパも大好きです。なかなかゆっくり行く時間がなくて、いつも弾丸ツアーですけど、マジョルカ島へ行ったり、世界遺産にも興味があるのでストーンヘンジを見に行ったり、ギリシャにも行きました。歴史的な背景も含めてその場所の空気を感じられる国や町が好きです。

旅をする時は、細かく計画を立てるというよりも、あまり事前に決めすぎず、その土地の一部になるというか、場所に溶け込むように歩くことが多いです。ひとりで街を散策してみたり、ふらっと海へ出てみたり、地元の人におススメのお店を聞いてご飯を食べに行ったり。

やっぱり、日本を出てみないと感じられないことってあると思うんです。私にとって海外への旅は、一度自分の心をリセットして、次にやってくる現実のためにグッと気合を入れ直すためのもの。

旅で得たイメージが曲を作る時に降りてきてくれることもよくあります。今回のアルバムで言えば「Summer Fever」がそうです。真夏の夜のビーチで踊りながら感じる風の雰囲気とか、そこで落ちる恋とか、みんなが解放されていくイメージ。これはバリだからこそインスパイアされたものだと思います。「I Just Wanna Fly」もそうかな。もう一歩踏み出したいとか、何かを変えたいとか、新しいチャレンジをしたいとか、そういうことも旅の中でよく考えるので。

13歳でデビュー。来年で20周年を迎えるクリスタル ケイさん

来年はデビュー20周年。濃い20年でした。長く続けられて幸せだなって思いますけど、もちろん挫折も何度もありました。最初は17歳の頃だったかな。デビュー当時はとにかく歌うことが楽しかったのに、どうやって歌ったらいいかわからなくなった。歌うことの何が楽しいのかさえわからなくなっていた時期でした。

大学を卒業した時もそうでしたね。ポーンと社会に放り出されたような感じ。本当に歌一本になったことで、技術も歌に対する姿勢でも、芯をしっかり持ったシンガーにならなきゃいけないと思って。でもそれには何をしたらいいのかわからなくて、悩みました。

もともと、自分のアイデンティティーにずっとコンプレックスがあったんです。日本生まれだけれどアメリカ人と韓国人のハーフというけっこうなマイノリティーで、同じルーツの友達もいなかったから、表に出る仕事をしているのに潜んでたというか、堂々とできなくて。そのコンプレックスが歌にも出ていたと思うんです。

そんな自分を変えてくれたのも海外でした。2013年から約2年間、ニューヨークで過ごしたんですが、いろんな人種の人が夢を持って集まっていて、しっかり自分を持っていないとつぶされてしまうような街で、自分の足りないところを見せつけられました。日本の“おしとやかさ”とか“謙虚さ”というカルチャーは向こうではまったくいらなくて、どんどんアピールしないと、逆に「なぜお高くとまってるの?」って思われることすらある。どうしたらいいんだろうと思って。

でも、向こうでこんなことを言われたんです。「君は三つのカルチャーを持っていて、日本語でも英語でも歌えて話せて、しかも日本でのキャリアもある。こんなすごいことはないじゃないか。もっと誇りに思うべきだよ」って。その言葉で、人と違うってスペシャルなことだし、自分が頑張ってきたことにもっと自信を持っていいんだと思えるようにもなりました。

海外での時間には、新しいものを得たり、それによって自分の視野を広げたり、今置かれている状況を少し遠くから見ることができる良さがあると思いますし、海外での経験が実になって、自分のことを冷静に考えられるようにもなってきたと思います。聴いてくれるみんなに対しても、言葉を伝えたい、誰かのために歌いたい、元気づけたい、自分の中で、そんなふうに歌う理由がどんどんシフトしています。

だからかな。最近、歌うことがまたどんどん楽しくなってきているんです。

    ◇

クリスタル ケイ 1986年、神奈川県横浜市生まれ。1999年、「Eternal Memories」でデビュー。R&Bからの影響を感じさせる卓越した歌唱力で注目を集め、「Boyfriend -part II-」や「恋におちたら」のヒットで大ブレーク。2013年3月よりニューヨークにも拠点を置き、さらに活動の場を広げている。2018年6月13日(配信は6月8日より)、2年半ぶり12枚目のオリジナル・アルバム『For You』を発売。曲順にも徹底的にこだわった新アルバムは、NHKドラマ10『デイジー・ラック』主題歌「幸せって。」など全11曲を収録している。7~8月には東京・横浜・名古屋・大阪でアコースティックツアー「クリカフェ“For You”」を開催する。

    ◇

“聴いてくださるみなさんに向けての贈り物”という思いをタイトルに込めました。とってもポジティブで、みんなの背中を押せるような曲が集まったアルバムになったと思います。アコースティックツアー「クリカフェ“For You”」は、普段の私のライブとは違うアコースティックなステージ。新しいアルバムからはもちろん、いつもは歌わないカバーやメドレーもやってみようかなと思っています。

(聞き手・髙橋晃浩)

2年半ぶりの新作となるニュー・アルバム『For You』

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