マッキー牧元 エロいはうまい

<55>プックラと膨らんだ白い皮ににじむ母性感……四拍子そろった優れたギョーザ

  • 文・写真 マッキー牧元
  • 2018年6月12日

ひとくち餃子

  • ひとくち餃子

  • 小籠包

  • シュウマイ

  • 白龍(パイロン)ギョーザ

  • 鳥爪

夜9時半に、ハマった。

ここは神楽坂の外れ、飲食店もまばらな薄暗い地域で、こうこうと明かりをつけたにぎやかな店がある。9時半だというのに、外で客が待っている。実は今夜3軒目のギョーザ屋であった。都内の人気ギョーザ屋をハシゴする企画の最後に訪れた店だった。

満腹の腹をさすりながら、とりあえず「小さいギョーザを頼んで、様子を見よう」と、消極的姿勢だったのにもかかわらず、その小さいギョーザを一口食べて、火がついてしまったのである。

うまいギョーザは顔つきでわかる。その「ひとくちギョーザ」は、包み方がきっちりとして、小さいながらあんの膨らみが、「おいしいでっせ」とささやいている。

「カリリッ」。口に運べば、焼けた薄皮が軽快な音を立てる。肉あんが静かにうまみを忍ばせる。添えた白髪ねぎ、しょうが、香菜を使うことなく、瞬く間に8個を食べてしまった。

「さあ次はなにを頼もう」。先ほどまでの消極姿勢は消えて、積極果敢体制で次々と頼む。「焼き白龍(パイロン)ギョーザ」も。そのお姿は美しくほれちまう。カリカリに焼かれた茶色の面は、つやつやと輝き、あんを包んでプックラと膨らんだ白い皮は、ギョーザの母性感をにじませて、ちょいと色っぽい。

さあ直ちに食べよう。コショウを落とした酢につけて食べれば、中から熱々の肉汁が飛び出した。

優れた焼きギョーザには、四つの魅力がある。

第一は、香ばしく焼きあがった皮に、カリッと歯を立てる喜び。
第二は、もっちりとした皮に、歯が包み込まれる喜び。
第三は、中から飛び出す熱い汁を、受け止める喜び。
第四は、よく練られたあんの、豚肉のうまみを味わう喜び。

「PAIRON(パイロン餃子)」のギョーザにはこのすべてがある。

緑色の皮の「青龍(チンロン)餃子」、ギョーザではないが、皮とあんのバランスの優しさが、本場そのものの「小籠包」、むっちりと詰められた肉あんの味が飯と酒を呼ぶ、「シューマイ」と、何を頼んでもハズレがない。

結局、「魯肉飯」や「鳥爪」(鳥脚先の煮込み)や「鳥レバーの甘露煮」など、料理を次々と頼んで、大宴会となってしまった。

「気をつけよう。遅い夜に食す おいしいギョーザ」。

PAIRON(パイロン餃子)

ギョーザの包み方がいい。皮がいい。焼き具合がいい。あんがいいと、うまいギョーザの要素をきっちりと捉えた人気ギョーザ店。オーナーが台湾で出会ったギョーザにはまり、研究を重ねて、開店した。「白龍ギョーザ」390円、「小籠包」550円、「豚焼売」390円と、値段が安いのも魅力。よだれどりや「油淋鶏」など料理もおすすめ。飯田橋の店舗のほか、市ヶ谷駅前に姉妹店「外堀PAIRON」(ソトボリパイロン)も。

【店舗情報】
東京都新宿区新小川町8-32 宝ビル2 1F
03-3260-6571
JR「飯田橋」駅より徒歩10分
11:30~23:00 (日・祝 ~21:00)
定休日:不定休
ウェブサイト:http://pairon.net/

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PROFILE

マッキー牧元(まっきー・まきもと)タベアルキスト&味の手帖編集顧問

写真

1955年東京生まれ。立教大学卒。年間幅広く、全国および世界中で600食近くを食べ歩き、数多くの雑誌、ウェブに連載、テレビ、ラジオに出演。日々食の向こう側にいる職人と生産者を見据える。著書に『東京・食のお作法』(文藝春秋)『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)。市民講座も多数。鍋奉行協会顧問でもある。

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