一眼気分

時には、あえてレンズ1本で勝負する! 70mm/F2.8編

  • 文・写真 宮田正和
  • 2018年6月21日

  

プロだからというわけではないが、前回書いたように、撮影現場には多くの機材を持ち込む。でも、たまには1本のレンズで撮りきってみたい。それが写真の原点であり、大切なことは、撮影者本人の動きと創意工夫だ。筆者は日頃からこう言っている。

言っているからには、今回は実行することにしよう(笑)。

  

近くの街をレンズ1本で歩く。悩んだ末に選んだ今日の相棒は、でっかくて、いかついキヤノンのEOS-1D X Mark IIではなく、小ぶりで可愛いが秘めたるパワーはすごいEOS 5D Mark IVと、シグマの新しいカミソリマクロと言われている70mm/F2.8にした。

この日は夏のような日差しだったが、近くの神社では、緑も多くさわやかな1日を過ごした。そして昔のように悩んでシャッターを切るという原点に返った。

  

思い起こせば、学生時代にはお金がなくてレンズは1本しか持ってなかった。というよりレンズを買うお金があればフィルムにつぎ込み、ワンカットでも多く撮影したかった。だから、その1本で多くの課題をこなし、街を撮り歩いていた。

当時はフィルム全盛期だったが、いわゆる36枚撮りのフィルムはコストが高いので、100フィートのロールを買ってきては自分でパトローネ(懐かしい言葉!)に詰め替えて使っていた。

デジタルカメラと違って、撮ればそれだけコストがかかるので、1カットの重みは学生の身にはとてつもなく重く、1枚を撮るのにあれやこれや考えに考え抜いて慎重にシャッターを切っていた。

  

だから現在のように、メモリーカードを交換すればいくらでも撮影でき、その場で確認して撮り直しもできるなんて夢のようだ。

つまり、この時点での撮影の失敗やミスは取り返せるので(メカニカルなトラブルは別にして)かなり気が楽になったのは間違いない。

  

だが……、最近考えるのだが、その代償もあるのではないだろうかと。

写真に何を求めるか、最終的な結果が良ければそれでいいのかもしれないが、僕は撮影のプロセスを何よりも大切にしたい。

なぜこの被写体を選んだのか、どうしてこのアングルから狙うのか、シャッタースピードは、絞りは……、被写体との接点を大切にしたいのだ。数の勝負ではなく1枚にかける思いが伝わってくる写真だけが僕の心を揺さぶってくる。

  

うまいとか下手とかも関係ない、極論を言えばピンボケでも感動する写真もあれば、どんなに奇麗で完璧な構図でも、何もこころに訴えてこない写真もある。

でも、それが写真の面白さだし、写真の楽しみ方だ。

被写体に向き合って、何かを感じながらシャッターを切る。

その瞬間に何を感じたか、それは撮影者のみが知ることだ。写真を見る者は、そこから何かを感じとる。つまりは被写体と撮影者と見る者、三者それぞれの思いが二次元の平面から浮かび上がってくる。

こう言うと大層なことに聞こえるが、もっとシンプルに考えていい。論理的である必要もなく、むしろ感性で撮って欲しいと思う。

写真は“写心”であり“写信”でもあるのだから。

<今回の撮影に使用した機材>

CANON EOS 5D Mark IV

軽量(通常使用がEOS-1D X Mark IIとでっかくて重たい機種なのであてにならないかも)、高性能、発色も良く使い勝手も良い。現場ではサブカメラとして使うことが多いが、街撮りなどでは仰々しくなくていい。

SIGMA 70mm F2.8 DG MACRO Art

カミソリマクロと呼ばれていたレンズの後継モデルだけあり、常用レンズとしても使える。今回の撮影ではレンズの絞りは開放値(F2.8)で使用しているが、ボケや切れ味も良く使い勝手の良いレンズだった。

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PROFILE

宮田正和(みやた・まさかず)写真家

東京浅草生まれ。1984年のロサンゼルス・オリンピックをはじめ、NBAバスケットボール、各種世界選手権、テニスのグランドスラム大会、ゴルフの全英オープンなどスポーツを中心に世界を舞台に撮影を続ける。1987年、ブラジルF1グランプリを撮影。マシンの持つ美しさ、人間模様にひかれ、1988年よりフランスのパリ、ニースに4年間ベースを移し、以来F1グランプリ、オートバイの世界選手権、ルマン24時間耐久レースなどモータースポーツをメインテーマとして活動を続ける。AIPS(国際スポーツ記者協会会員)A.J.P.S(日本スポーツプレス協会会員)F.O.P.A(Formula One Photographers Association会員)http://f1scene.com

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