私の一枚

音楽のルーツはドイツのライン川で遊んだ子供時代 関取花

  • 2018年6月18日

4歳のクリスマス。祖父母が日本から送ってくれたおもちゃを前に

2歳から7歳の途中まで、ドイツのデュッセルドルフに住んでいました。これは2歳上の兄が持っていた戦隊モノのおもちゃで遊んでいる写真。シルバニアファミリーで遊ぶのも好きでした。

ドイツ語は話せなかったので、まだ友達が少なかった頃は、兄と遊ぶことが多かったです。家のすぐ近くをライン川が流れていて、その土手にあるサイクリング用の道を一緒に走ったり、川遊びをしたり、フリスビーをしたり。

初めて仲良くなったドイツ人の友達は、近所に住んでいたグレタという女の子。コミュニケーションは身ぶり手ぶりでした。

よく花壇や鉢植えに、土の代わりに使われている、茶色い軽石のようなものがあるじゃないですか。ある日、グレタとお人形ハウスで遊んでいる時に、その石をお人形ハウスの中のトイレに入れて「うんちだ」って私が言って、言葉は通じないのに2人ともめっちゃ笑って、そこからすごく仲良くなったことを覚えています(笑)。

音楽を始めたのは、ずっと後、高校生になってからですけど、私の音楽はドイツ時代の影響を受けていると思います。

オクトーバーフェストっていうドイツのビールのお祭りを最近は日本でもやっていますよね。ドイツでは、民族衣装を来た人たちが祝日に町にやって来て、伝統音楽らしい曲を演奏しながらパレードします。楽器はギターとかバイオリンとか、アコースティックなものばかり。私がアコースティックな音楽好きになったのは、きっとその影響です。

影響で言えば、家族旅行の車の中で聴いた中島みゆきさんとスピッツさんの影響も大きいと思います。母が大好きで。休みになると車でイタリアとかドイツの外までよく旅行に出かけましたが、ドライブの間、ずーっと母が中島みゆきさんとスピッツさんを聴いていました。特に中島さんの歌は、幼心にもとても印象的でした。

デュッセルドルフはとても日本人が多い町で、私は日本人学校に通っていましたが、小学2年生の途中で中国に引っ越すことになりました。やはり、海外の日本人学校は転勤が多い家庭の子が多いから、しょっちゅう誰かが転校してしまいます。それを盛大に送り出すことが恒例でした。

私の時は兄もいたから、すごくたくさんの子が見送りに来てくれました。バスが出ても、ずーっと手を振ってくれて。寂しかったけれど、いずれ日本でまた会えるだろうと思っていました。

実力派のシンガー・ソングライターとして人気を集め、最近はテレビ出演でも話題を集める関取花さん

その後、中国では半年だけ過ごして日本に帰って来ました。たまたま入った小学校ではクラスで男子と女子の仲がすごく悪くて。掃除の時に男子が「女子エキスが移るから女子の机は触らない」っていうような。ドイツでは日本人というだけで仲間意識が強かったので、カルチャーショックを受けたというか、すごく驚きました。

転校が多かったせいか、私は自分の思い出や人に対して、あまり執着することはありませんでした。それと、マイナスの感情はすぐ自分の中で「なかったこと」にしていました。

でも、ある時「待てよ」と思いました。うれしかった経験はもちろん、嫌な経験も悲しい思い出も「そんなことがあったな」で終わらせちゃいけないって。私は、もともと確固たる意識があって音楽をやっているタイプではなくて、「そんな話があるなら記念にやってみよう」くらいの気持ちでやってきました。

でも、いろいろな経験を重ねるうちに、今までみたいに、自分の中で終わらせたりなかったことにするのがもったいないと思うようになりました。テレビやラジオにたくさん出演させていただいたこの1年で、特にそう考えるようになりました。だから、今回のアルバムは、タイトルを含め、この1年の感情が詰め込まれた作品になったと思います。

歌詞のテーマは、想像も実体験もありますけど、例えばNHKの『みんなのうた』に書き下ろした「親知らず」は実体験に近いですね。お話をいただいて、どんな歌がいいかなって考えている中で、『みんなのうた』って子供向けと思われがちだけど、“みんな”の歌だよなと思って。

だから、今まさに親との関係に悩んでいるような10代の人にはそのまま響けばうれしいし、大人は自分の10代を思い出すような、まだ小さい子にはちょっとドキッと響くような歌詞になればと思って書きました。

歌詞についてはいつも、難しいメッセージではなく、子供が読んでも大人が読んでもわかる言葉で書こうと心がけています。比喩や暗喩は使っていても、言葉そのものは難しくなければ誰でも想像ができますよね。

ドイツでグレタと笑い転げたように、どうやって言葉以外の手段で自分の思いを伝えるかを考えていた経験が役に立っているのかもしれません。

    ◇

せきとり・はな 1990年、神奈川県横浜市生まれ。寝ること食べること飲むことが大好きな27歳。2012年、「むすめ』が神戸女子大学のTVCMソングに起用され、以降3年間同校のTVCMソングを担当する。6月13日に3枚目のフルアルバム『ただの思い出にならないように』を発売。最近はTV番組にも多く出演している。8月、初のホールワンマンライブ『西でどすこい東でどすこい』を開催する(8/4 大阪円形ホール、8/18 品川インターシティホール)。

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ライブが一番好きです。レコーディングも好きですけど、早くライブで聴いてもらいたいと思いながら録音していますし、テレビもラジオも、すべてはみなさんがライブに来てくださるきっかけになったらいいなと思っています。

8月のホールワンマンは、いつも力を貸してくれているメンバー、ドラムとベースとキーボードの3人と私で演奏します。今回のアルバムの曲もやりますし、以前の曲もやりますし、あとはよくしゃべります(笑)。いつもついついしゃべり過ぎて時間が押して、会場の退館時間ギリギリになって、カバンから物がはみ出たままの状態で逃げるように帰っているんです(笑)。

(聞き手・髙橋晃浩)

  

3枚目のフルアルバム『ただの思い出にならないように』。NHK『みんなのうた』2018年4・5月度放送で大きな反響を呼び、視聴者リクエストで6・7月度の継続放送が決まった「親知らず」他、全10曲を収録

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