天才人語

「あの人は異次元を生きている」ふかわりょう、小西康陽の天才性を語る

  • 文:ラリー遠田 撮影:南 阿沙美
  • 2018年6月21日

  

このマルチな活躍ぶりをデビュー当時、誰が予想できただろうか。長髪に白いヘアバンドをトレードマークに、一言ネタでブレイクしてから20数年。ふかわりょうは、今やニュースバラエティー番組の司会やミュージシャンとして名をはせている。

だが、デビュー時に見せた、日常の違和感を鋭く切り取る視点は今なお健在。その目には誰が「天才」と映っていたのか――。

ふかわに尋ねると、音楽ユニット「ROCKETMAN(ロケットマン)」を共に結成した小西康陽の名が返ってきた。

「“あなたにとっての天才は?”と聞かれて、小西さんが思い浮かぶ人生ってすてきじゃないですか? そんな自分が嫌いじゃないです(笑)」

そう言って相好を崩すふかわりょうに、世代を超えてリスペクトを集める希代のミュージシャン・小西康陽のすごさを語ってもらった。

小西康陽(こにし・やすはる)

1959年、北海道札幌生まれ。85年に音楽グループ「ピチカート・ファイヴ」でデビュー。90年代前半の音楽ムーブメント“渋谷系”を代表する1人として、国内外で人気を博す。01年に解散後、作詞・作曲家、アレンジャー、プロデューサーとして、世代やジャンルを超越して、様々なアーティストの楽曲に携わる。無類のレコードコレクターでもあり、都内や海外のクラブでDJとしても活動している。

レコードを乗せただけで曲ができあがる衝撃

――事前にうかがっていたのですが、ふかわさんが天才だと思う人物は小西康陽さんだそうですね。小西さんのどういうところが天才だと感じましたか?

ふかわりょう(以下、ふかわ) 以前、小西さんと一緒にロケットマンというユニットをやっていたときに、曲作りの現場に何度か足を運んだんですけど、そこで衝撃を受けたんです。

小西さんは、まるで料理でもするように、レコードバッグからレコードを取り出して、バーッと何枚か選んで、プレーヤーに乗せて取り込んで、サンプリング(*)して、みたいなことを数回繰り返したらいつのまにか曲ができている、という感じだったんです。

普通、曲作りってキーとかピッチが合っていないと破綻(はたん)してしまうと思うんです。でも、小西さんは頭の中でミックスされている。だから、音との向き合い方とか距離感が僕なんかとは根本的に違うなという感じなんです。

(*)サンプリング
自然音や楽器音(過去の音楽作品を含む)、各種音源の一部を録音し、新たな楽曲の音源として利用する表現技法

  

単純に音の引き出しの数も全然違いますし、別の人が小西さんと同じくらいたくさんの曲を聴いていたとしても、それを自分のものにできているかどうかの吸収率には差があると思います。小西さんは余すことなく全部吸収してるんじゃないかという印象で、幅広くいろんなジャンル、この世の音すべてを、自分の中でサンプリングしていると思わせるような曲作りだったんですよね。それは単なる努力のたまものではないというか、そういう意味でもまさしく天才なんだろうな、と思いました。

――ふかわさんが小西さんと音楽ユニットを組んだのは、そもそもふかわさんからのリクエストだったんでしょうか。

ふかわ そうです。僕がお笑いの部分を担当して、小西さんが音楽の部分を担当するっていうすみ分けがあったんですけど、そこで天才の技を目の当たりにして、自分もかつて音楽を志していた気持ちが暴れ出したっていう。そうやって人に影響を与えることも天才の条件ですよね。僕も小西さんによって変えられたといっても過言ではないので。

――ふかわさんがその後、音楽活動に取り組まれるようになったのも、小西さんの影響が大きいんでしょうか。

ふかわ かなり大きいです。小西さんとロケットマンをやってなかったら、たぶんDJもやっていなかったでしょうし。小西さんのDJを初めて見たときに、すごくショーアップされていて、パフォーマンスの比重が高くて、今までのDJのイメージと違ったんです。

DJって淡々とストイックにやる人もいれば、パフォーマーとしてやる人もいますが、僕は完全に後者から入ったので、その後のクラブシーンでの活動に比較的苦労しなかった。小西さんから入ったことによるアドバンテージは大きかった気がします。

――DJとしての小西さんはどういうところがすごかったんでしょうか?

ふかわ ストックの量はもちろんですが、それをしかるべきときに出してくる、というか。DJって「この曲をそこで行くか!?」というタイミングの妙みたいなところもあって、曲を生かすも殺すもDJ次第なんですよね。そこら辺はいろいろ勉強になりました。

あと、やっぱり小西さんがいいと思うものはいいんだろうみたいなところがあって。今はSpotify(ストリーミング音楽配信サービス)のようなサービスがいろいろありますけど、もしも科学が発達して、小西さんの脳内Spotify、「小西ファイ」みたいなものができたら、僕は月額8万円ぐらい払ってもいいかなと思いますね(笑)。

  

ふかわりょう

1974年、神奈川県生まれ。94年、お笑い芸人としてデビュー。独自の着眼点を生かした一言ネタで大ブレイク。98年、ピチカート・ファイヴを率いた小西康陽と音楽ユニット「ROCKETMAN」を結成。00年以降ソロ名義の活動に移行し、10年4月、配信限定シングル「dancemusic」がiTunes Storeのダンスチャートにて1位を獲得。12年にもアルバム「恋ロマンティック!!」で同1位に輝く。現在はお笑い芸人、ミュージシャン、クラブDJ、エッセイストなどマルチに活躍。ツイッターアカウント:@fukawa__rocket

天才は普通の人とは異なる

――ふかわさんが思う「天才の定義」ってありますか?

ふかわ 天才の定義って何だろうな……。印象で言うと「異次元を生きている人」っていう感じですかね。同じ世界にいながらも、見えているものとかキャッチするものが全然違っていて、同じ空間にいても全く別のものを吸収し、時間の流れさえも異なっている。すごく雑な言葉で言うと「ずれてる人」ということかもしれない。普通の人間からするとちょっと座標がずれている感じの人が「天才」と言われるのかなと思います。もちろん、そういう人たちもいろいろな意味での努力とかそれに近いものは重ねているんでしょうけど、そもそも根本的な骨の構造が違っているんです。

――小西さんと一緒にお仕事をされていても、やっぱりつかみどころがないところがあるんでしょうか。

ふかわ そうですね。作った作品を享受することはできますけど、人間としては全くつかめない。ドジョウのようにスルッと逃げていく感じ。そもそもつかもうとも思ってはいないですけどね。音に関しても「あ、そっか。今これがおしゃれなんだな」って気づかされるような、小西さん独自の嗅覚(きゅうかく)みたいなものがあって。その辺もやっぱりすごいですね。

  

――逆に言うと、小西さんがやっているからこそ、それがおしゃれなんだ、と思わせるようなものもあるということでしょうか。

ふかわ 両方あると思うんですけど、やっぱりその辺の感度やセンスは揺るぎないもののような気がします。いわゆるヒットソングって、時代によって古さを感じさせるものもあると思いますが、小西さん関連のものって古くならないんです。ある種、「小西スタンダード」になるというか。

――それはなぜでしょうか?

ふかわ やっぱり「迎合していない」からじゃないかと思います。あとは、緻密(ちみつ)に計算してサウンドが構築されているんでしょうね。仮に、非常にシンプルな曲のように聴こえたとしても、その根底にはものすごい仕掛けや仕組み、計算が働いているのかもしれない。でも、それを感じさせないところもすごいと思います。

――話は変わりますが、ふかわさんはご自身の才能というものはどういうふうに考えられているんでしょうか?

ふかわ 僕はもうセンスで勝負するのはやめようと思っていて。(同業者への)差し入れとかを重視するようになりました(笑)。

  

本当に才能がある人って、みんながその人に力を貸そうと思えるんです。「仕事だからやる」っていうのとは全然違っていて、「この人だからやる」っていうのがある。センスはもちろん大事なんですけど、センスだけで世を渡り歩こうだなんて絶対ダメなんだなっていうのは思いましたね。差し入れがいいのかどうかは分からないですけど、やっぱり1人の力だけでは何もできないですからね。みんなの力を集結できる人もある種の天才だと思います。

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