今日からランナー

フルマラソンの完走目標時間、どう決める? 知っておきたいペースの計算方法二つ

  • 文・山口一臣
  • 2018年6月29日

Photo:m-gucci / Getty Images

一部の新聞がほんの小さく報じただけなので見逃した人も多いと思われるが、先週末の日曜日(6月24日)、ランニング界にとってとても大きな出来事があった。北海道で行われたサロマ湖100kmウルトラマラソンでなんと20年ぶりに世界新記録が生まれたのだ。

これまでマラソン男子100kmの世界記録は1998年に同じ大会で日本の砂田貴裕さんが出した6時間13分33秒だった。昨年の優勝者が6時間14分18秒まで迫ったが破られなかった。それを今年、風見尚選手が6時間09分14秒で優勝し、記録を4分19秒更新した。キロあたり3分42秒というハイペースだ。フルマラソンでもキロ5分半がやっとの私からすると、超人としか思えない。

ちなみにこの20年間ワールドレコードを保持した砂田さんは練習会や合宿などで大変お世話になった私の師匠のひとりでもある。100kmの世界記録を日本人の砂田さんが持っていたということが、多くの日本人ランナーのウルトラ挑戦への動機づけになっていたことは間違いない。

風見選手も砂田さんを目標にしていたことだろう。新王者の誕生に砂田さんはFacebookで「やっと肩の荷がおりました」「これからの100kmの注目と、さらに記録を狙える若い選手が出てくるように期待しましょう!」と祝福のメッセージを送っていた。

さて、ウルトラの話はまた別の機会に書くとして、今回のテーマはフルマラソンの完走目標時間(目標タイム)とペースの計算方法である。

この連載でも私はよく「次のレースの目標タイムは3時間○分○秒だから、ペースはキロ5分○秒だ」といった書き方をしている。いまでこそ当たり前のように言っているが、初心者のころは先輩ランナーがこういう数字をスラスラ口にしているのが不思議で仕方なかった。

当時は「とにかく完走」が目標なのでペース設定もくそもなかった。ゴールしたときに、「ああ、今回は○時間○分だったんだ」と振り返る程度である。それがやがて完走目標タイムを決め、そのためのペースを計算して、あれこれ作戦を考えながら走れるようになると、マラソンの面白さも倍増した。では、どうすればそれができるようになるのだろうか。

熟練度で異なる! 「正確な走力」を把握する方法

まず、ペースの計算方法は単純だ。目標時間(分)を42.195で割ればいい。例えば5時間が目標だとすると、300分÷42.195≒7.10 だからキロあたり約7分06秒ペースということになる。4時間(240分)で計算するとキロ約5分41秒になるから、一般にサブ4(フルマラソン4時間切り)のペースはキロ5分40秒と言われている。これはスタートからフィニッシュまで同じペース(イーブンペース)で走ることを前提とした数字だ。これを基準に、後半はどうしてもペースが落ちるから前半で貯金をつくろうとか、その逆に前半抑えて後半で挽回しようといった計画が立てられる。では、計算式の元になるそもそもの完走目標タイムはどうやって決めればいいのか。

Photo:arismart / Getty Images

もちろん“目標”だからある程度、高めに設定するという考え方もある。だが、マラソンという競技は実力以上の結果が出ることは絶対にないと考えた方がいい。練習時より本番の方がアドレナリンが噴出していつもよりパフォーマンスが上がるという話はよく聞くし、私自身も経験からそれは信じられる。しかし、それも“ある程度”といった話だ。4時間台後半のランナーがいきなりサブ4(4時間切り)をすることはないし、ようやくサブ4のランナーが急に3時間30分を切ることはない。つまり、目標タイムの設定で重要なのは、普段の練習から自分自身の「正確な走力」をどうやって把握するかということなのだ。これにはいくつかの方法がある。

私が走り始めのころにバイブルとしていたのが、以前も紹介したがランニング指導者として知られる内山雅博さんが監修した『ゼロから始めるフルマラソンの本』(エイ出版社)だ。ここに「内山式」と呼ばれる独自の計算方法が載っている。まず、5kmのタイムを計測してそれを10.5倍するというものだ。

5kmを測るときは、自分にとって快調な速度、息のきれないペースが目安だ。10.5倍というのは要するにフルマラソン+約10km相当になる。後半のペースダウンやトイレなどでのタイムロスを考慮して、こうした式がつくられている。初心者にとって、これは非常にわかりやすくていいと思う。私もずいぶんこの方法を使って目標タイムを計算したものだ。

しかし、やがて中上級者になるとこれではもの足りなくなる。タイムを意識しだすとまずトイレには寄らないし、給水でのタイムロスも極力なくそうと努力するようになるからだ。

そこで最近、私や私のランニング仲間がもっぱら使っているのが「ダニエル式」という計算式だ。これはアメリカの元オリンピック選手で著名なランニング指導者であり研究者でもあるジャック・ダニエルズ氏が考案したマラソンタイムの予想式だ。5km、10km、あるいはハーフマラソンでの自己ベストタイムからその人の最大酸素摂取量を割り出し、それに基づいてフルマラソンの予想タイムを計算するというものだ。

人が運動をするには心肺を使って筋肉に酸素を送らなければならない。最大酸素摂取量というのは単位時間(1分間)あたりに体内に摂り込める酸素の最大値のことで、長距離ランナーにとってはこれが大きければ大きいほど走力があるということになる。まあ、そんな難しい理屈はさておき、ネットで「ダニエル式」と検索すると、自己ベストの数字を入力するだけでフルマラソンの予想タイムを計算してくれるサイトがいくつか出てくる。私がいつも使っているのは以下のふたつだ。とくに下のサイトはダニエル式以外の方式も紹介しているのでいろいろ便利だ。

ダニエルズ式ランニング用計算ツールの紹介(サイト名:Steel City Runner)

マラソン/タイム予測ツール(サイト名:時計を忘れて走りに行こう)

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ただ漫然と完走を目指すのではなく、こうしたツールを積極的に使うことで、知的ゲームとしてのマラソンの新たな魅力を知ることができるはずだ。ぜひ、試してみてほしい。

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PROFILE

山口一臣(やまぐち・かずおみ)

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1961年東京生まれ。ゴルフダイジェスト社を経て89年に朝日新聞社入社。週刊誌歴3誌27年。2005年11月から11年3月まで『週刊朝日』編集長。この間、テレビやラジオのコメンテーターなども務める。16年11月30日に朝日新聞社を退社。株式会社POWER NEWSを設立し、代表取締役。2010年のJALホノルルマラソン以来、フルマラソン20回完走! 自己ベストは3時間41分19秒(ネット)。

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