小川フミオのモーターカー

まるでサッカー選手のような運動性能 フォルクスワーゲンup! GTI試乗記

  • 文 小川フミオ
  • 2018年7月3日

全長3625mm、全幅1650mm、全高1485mm。車体色はレッド、ホワイト、ブラック。ドアはリアクォーターウィンドウのラインがキックアップしていたりスポーティな雰囲気が強め

僕がうれしく思うのは、最近、楽しいクルマが増えていることだ。電気や水素を燃料にした新しい動力への移行は避けられないと言われているが、まだガソリンエンジンの自動車を好きなひとも悲観的にならなくてもいいかもしれない。

最近の好例がフォルクスワーゲンup! GTIだ。up!(アップ)は2012年から日本でも販売されている、全長3.54mの車体に1リッター3気筒エンジンを搭載したシティカーだ。

(GTIの文字を含めて)リアビューはスタイリッシュですてきだ

もしそのup!を僕みたいな一般人とするなら、新発売されたup! GTIは、ワールドカップロシア大会で決勝トーナメントに進出したサッカー日本代表の選手たちに例えられるかもしれない。同じ人間、いやクルマでも、見事に運動性能がちがう。

そもそもGTIはフォルクスワーゲンが1975年に発表したゴルフGTIがオリジンだ。

「独アウトバーンでデカいツラが出来るのは、大型セダンや高級スポーツカーだけじゃない」という反ヒエラルキー的コンセプトが大いにウケた、歴史的モデルである。

革巻きステアリングホイールに、レッドのダッシュボードが雰囲気

歴代のゴルフや、ひとまわり小さいポロには折りに触れて高性能のGTI仕様が設定されてきた。どれもハズれなしの高性能ゆえに、“GTI”は確固たるブランドになったのだ。

2018年6月8日に日本で発売されたばかりのup! GTIは期待どおり、というか期待を上回る出来だ。とにかく走らせることが楽しい。1リッターでこんなによく走るなんて、と驚きである。

85kW(116ps)の最高出力を持つ999cc3気筒エンジンを2ドアボディに搭載している。それになんと6段マニュアル変速機の組み合わせだ。

とにかくハンドルを切ったときの操舵感がよい。車体が向きを変えるタイミングに遅れはないし、運転者の手のひらにちゃんと路面の感覚が伝わる。ダイレクト感がなによりスポーティだ。

6段ギアは握りといい操作感といいかなり高得点

カーブではしっかり踏ん張ってくれ、下り坂では英国人が使う「ダウンヒルレーサー」(非力だけれど下り坂で早いハンドリングのよいクルマ)という言葉を思い出した。安定感ばつぐんなのだ。

1リッターなのに200Nmもトルクがあるため、up! GTIは下りだけでなく上り坂でもぐいぐいと加速する。

フォルクスワーゲンのGTIというと戦前のレーシングカーを思わせるチェック柄シートがお約束だ

クラッチペダルのトラベル(踏みしろ)がありすぎて、シフトのたびに左脚を持ち上げなくてはいけない点はやや気になるけれど、クラッチをつなぐとどんな速度域でもシュポーン!と加速してゆく感覚は病みつきになりそうだ。

シフトフィールもまたよい。剛性感があるうえ、ゲートに入れるときはスムーズ。各ギアの比も接近していてエンジンが元気な2500rpmから4000rpmあたりをキープする楽しみが味わえる。

気持ち的には左のエンジン回転計を中央に大きく備えてほしい

大衆車のギアボックスでなく、運転を楽しむために作られたギアボックスだ。フォルクスワーゲンはこんなに楽しいスモールカーを作れるのだと感心する。

「スポーティな雰囲気を強調したいのであえて2ドアを選択しました」。輸入元のフォルクスワーゲングループジャパンの担当者はそう説明してくれるが、ここだけは、個人的に惜しいと思った。

4ドアは都内では使い勝手がいいし、ボディの剛性だって高い。本国でも注文生産になってしまうらしいが、今回限定発売の600台を売り切ってしまったら(売り切れ間近らしい)次回はぜひ4ドアモデルの発売を検討してもらいたい。

2ドアなので後席には前席シートのバックレストを倒してアクセスする

ちゃんと使える後席

219万円(税込)という価格も、この楽しさからすると信じられないほどお買い得だ。

マニュアル変速機をもったホットハッチ(速いハッチバック)のライバルとしては仏「ルノートゥインゴGT」(229万円)がすぐ思いあたる。

伊「アバルト595」(299.2万円)や仏「プジョー208GTi」(322万円)もあるけれど価格差が大きい。up! GTIは強力なモデルだ。

車体色がレッドだとダッシュボードとのマッチングがことさらよいと思える

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

写真

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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