小川フミオのモーターカー

絵本に出てきそうな平和で良いクルマ フォルクスワーゲン1500(タイプ3)

  • 世界の名車<第218回>
  • 2018年7月9日

1966年に追加されたファストバック

「子どもが絵に描きやすいクルマは商業的にも成功する」という説がある。

まさに絵本に出てきそうなスタイルを持っていたのが、このフォルクスワーゲン(VW)・タイプ3だ。

いつまでもビートル(とバン)だけでは先細りになるとの懸念から開発されたモデルである。1961年に「フォルクスワーゲン1500」として発売された。

1600セダンの全長は4340ミリ、全幅1640ミリ、全高1470ミリと扱いやすいサイズ

車名もシンプル(すぎる)なので、通称は「タイプ3」。ビートルがタイプ1で、バンがタイプ2。それに連なるモデルというVW社内での呼び名をファンも使った。

車台はビートルのものを流用。「プラットフォームシャシー」と呼ばれる、要するに板の上にサスペンションとエンジンを取り付け、そこにボディーをかぶせるという形式だった。

エンジンも空冷水平対向4気筒をリアに搭載。当初は1500ccで、だんだん出力を上げていき、65年には1600ccエンジンが採用された。

ステーションワゴンはバリアントと呼ばれた

特徴のひとつはボディーのバリエーションの豊富さだ。2ドアセダン、2ドアファストバック、2ドアステーションワゴン、それにカブリオレまで用意されていた。

米国が主な市場だったので、あちらのライフスタイルに合わせて多様性が重要だという判断ゆえだろう。

エンジンがリアに載せられているとは思えないほどスタイリングは“ふつう”。このクルマのデザイナーはそうとう頑張ったのだろう。

いわゆるアクの強いスタイリングを作るのはむしろ簡単で(売れないかもしないが)、このように、どこかで強い個性を打ち出すわけでもなく、それでいてきれいな形にまとめるのは、なかなか大変だ。

1500の時代からカルマン製ボディーを持った4人乗りのカブリオレが作られていた

73年まで、タイプ4と呼ばれたモノコックシャシーのより本格的なセダンと並行して作られた。日本にも輸入されており、いまでも路上であのバタバタヒューヒューという独特のエンジン音とともに走っているのに出くわすことがある。

トータルでの生産台数は180万台。タイプ4の35万台に比べるとはるかに多いが、VWとしてはこれを成功とは呼べないらしい。子どもにはウケても、オトナにはイマイチだったということか。

いまも魅力的に見えるシンプルで力強いダッシュボードの造型感覚

ドイツには当時、フォード・エスコートとかオペル・カデットとか、出来の良いライバルがあったし、諸外国からもさまざまなモデルが入ってきていた。そこで基本設計は戦前のクルマが互角に戦うのは大変だったろう。

でもこのクルマはとにかく平和な顔つきをしている。威圧感ゼロ。ぼくはこういうの、大好きです。

ぶ厚いパッドが入った幌がカブリオレの特徴

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画像提供=Volkswagen Group

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

写真

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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