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コンバースもナイキもカスタム スニーカーに新たな命「RECOUTURE」広瀬瞬さん

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  • 2018年7月23日

「RECOUTURE」広瀬瞬さん(32歳)

高級革靴の世界では“一生モノ”という概念が存在するものの、スニーカーに関してそうした考え方を持ち込むことは難しい。基本的に「履きつぶす」というのが一般的だが、こうしたスニーカーの「消費されるもの」という弱点を解消し、新たな価値を生み出している人物がいる。

東京・国分寺の靴修理店「RECOUTURE」の店主・広瀬瞬さん(32)だ。
今、彼が手掛けるカスタムスニーカーが国内外で注目を集めている。
たとえばこちらのスニーカーを見てほしい。

コンバースの定番「チャックテイラー」のアッパー下部をレザーで覆い、ビブラムソールを縫い付けたカスタムスニーカー(写真奥。手前はカスタム前のもの)

ブーツなどに使用される頑強なソールを貼り付け、劣化しやすい場所をレザーで覆うなど長年履ける靴に仕上げている。見た目のかっこよさ、美しさもさることながら特筆すべきは使用しているレザーの素材。日本でもっとも高い評価を集める「栃木レザー」や、あのルイ・ヴィトンが使っているフランス産の高品質ヌメ革を採用しているのだ。こちらのリメイク料金は2万5000円〜と少々値は張るが、その質実剛健かつエレガントなスタイルに心奪われるファンは数多い。

インスタのおかげで決意

ゆっくりと丁寧にミシンの針を進めていく。精度の高い縫製も人気の秘密だ

広瀬さんは、現在32歳。高校卒業後、大学に通いながら、靴修理チェーンでのアルバイトを始め、フランチャイズ店の経営を経て、26歳の時に靴修理店「国分寺シューズ」をオープンした。そうして普通の靴修理職人としてのキャリアをスタートさせた広瀬さんであったが、学生時代からファッションに強い興味があったそう。

「ファッションは好きでしたね。中でもミリタリーアイテムを、ちょっとアレンジして品良く見せるマルタン・マルジェラの服が好みでした。で、自分もそういったことができないかなと考えた時に、修理のきかないスニーカーを修理出来る形にしたらおもしろいものができるんじゃないかと思ったんです」(広瀬さん)

今から2年前、広瀬さんははじめてカスタムスニーカーを制作することになる。ナイキ「コルテッツ」に、レッドウィング用のソールを装着した世界にただひとつだけの靴。思いつきで作ったものの、「自分でも履きたいと思える納得の一足が出来上がった」と広瀬さんは振り返る。

初カスタムとなったレッドウィング用のソールを装着したナイキ「コルテッツ」を手にする広瀬瞬さん

ただ作ってはみたものの、当時は売り物になるとは思っていなかったと広瀬さん。たしかに自分の好みであるが、こんなものを出しても売れないだろう。時には「こんなことをして意味があるのか」とさえ思ったこともあったとか。
しかし、インスタグラムに一枚の画像を投稿したことが大きな転機となる。

「インスタにカスタムしたコルテッツの画像をアップしてみたら、すぐに良い反応が返ってきたんです。その時に、『僕の感覚は間違ってなかったんだ』と思えたというか、自信になりました。しかもそれだけじゃなくて、どんどん注文が入ってきたんですね。さらにカスタムのヒントになるコメントを多数いただいたことも僕にはありがたかった。そうしたダイレクトな反応がなければ、きっとスニーカーのカスタムは続けていなかったし、今の僕もなかったと思います」(広瀬さん)

店内ではカスタムスニーカーの展示販売も

昨年は有名セレクトショップや大手デパートにおいて展示受注会を行うなど、一般のスニーカーファンだけでなく、ファッション業界からもラブコールを受けている広瀬さん。今年4月には、経営する靴修理店の名前を「RECOUTURE(リクチュール)」に変え、新たなスタートを切った。店名は「元へ/再び」などを意味する「re」、そしてフランス語で「仕立て/縫製」を意味する「couture」を掛け合わせた造語だ。

SNSの影響もあり、今や国分寺の店には日本はもとより、海外からも客がやってくるほどになった。「こんなことになるとは思ってもみませんでしたよ」とはにかみつつ語る広瀬さんだが、今後はオリジナルスニーカーを手掛けるなど新展開も視野に入れている。
最後に『あなたにとってつくること』について聞いてみた。

「難しい質問ですねえ(笑)。例えば、1年前にやった修理やカスタムもその時点のベストではあるんですが、やっぱり納得いかないところがあるんです。今ならもう少し出来ることがあるんじゃないかって、いつでもそんな風に思う。だから……自分が今までに積み重ねてきた知識や経験の全てを反映するもの、ですかね」(広瀬さん)

広瀬さんは、本来なら短い時間で使い捨てられてしまうという悲しい宿命を背負ったスニーカーに新たな命を吹き込み、美しく経年変化する一足へとリデザインする。その姿は「どれだけ新しいか」「どれだけたくさん持っているか」が重要視されがちなスニーカーの世界に立ち向かう、ちょっとしたアクティビストのようにも見えた。

「都心から来てくださるお客さんのために渋谷への出店も検討中なんです」と話す広瀬瞬さん

広瀬さんが手がけたカスタムスニーカーなど写真特集はこちら

「クリエーター」「職人」「作家」「開発者」、呼び名は違えど世の中に“新しいなにか”を作り出す人たちがいる——それが、つくりびと。&Mでは様々な業界で活躍するつくりびとに注目。彼らが生み出した“新しいなにか”を紹介しつつ、そのクリエーティブの原点に迫る。

RECOUTURE
住所:東京都国分寺市本町2-2-1 EAST201-2
営業時間:11:00〜20:00
公式インスタグラム:https://www.instagram.com/recouture__/
オンラインショップ:https://recouture.thebase.in/

取材・文/吉田大
撮影/藤島亮

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