キャンピングカーで行こう!

N-VANやジムニーの“車中泊オプション”とキャンピングカー、どちらを選ぶべきか

  • 文・渡部竜生
  • 2018年7月25日

昨今のキャンピングカー人気を受けてか、車中泊需要の高まりなのか。自動車メーカーから、車中泊仕様のオプションがある乗用車が続々と発売されています。

乗用車の車内で寝る車中泊と、寝泊まりすることを前提に作られたキャンピングカー。今回は改めて、その違いについて考えてみたいと思います。

  

スズキ・ジムニーに車中泊オプション登場!

先日ご紹介したホンダN-VANとともに、私が注目している車両がもうひとつあります。7月5日に発売された、新型のスズキ・ジムニーです。

この2台はいずれも軽自動車ですが、用途もキャラクターも全く別。ですが、ひとつ共通点があります。両方とも、オプションリストに車中泊向けアイテムが多数そろっていることです。

N-VANにはベッドマットやテールゲートの網戸が、ジムニーにもベッドマットやシェードなどが用意されています。

書店に専門書が並ぶほど、いま車中泊はちょっとしたブームです。自動車メーカーもそういう使われ方を無視できなくなってきた、ということかもしれません。

東日本大震災の際には、ペットを連れていたため避難所に入れず、乗用車で寝泊まりした被災者がエコノミークラス症候群になった、という痛ましい話もありました。自動車メーカーとしても、車の中で寝泊まりする可能性があるならば、より快適に、少しでも身体への負担を少なく過ごすためのツールを用意すべきという判断かもしれません。

さて、このオプション設定。実際にはどのようなものでしょうか。

「寝るだけなら、メーカーのオプションをそろえれば十分なんじゃないの?」。そう思われるかもしれません。1台1台丁寧にハンドメイドされるキャンピングカーと比べ、工場で大量生産されるメーカー純正のベッドキットなどは当然安価です。横になれる広さの平面があるかどうか、という視点で見れば、見た目上は大きな違いはないようにも見えます。しかし、キャンピングカーには、目に見えないところに、各ビルダーの様々なノウハウが詰まっている点で、やはり違いはあるのです。

では、具体的にはどこが違うのでしょうか。

ホンダN-VANの車中泊オプション装着時。これだけ見ればまるで“軽キャンピングカー”のようだ

電気関係

照明に冷暖房など、快適な車内環境に「電気」は欠かせません。キャンピングカーには居室部分の電気をまかなうためのサブバッテリーが搭載されています。エンジン始動用のバッテリーとは別系統ですから、誤ってサブバッテリーをあげて(空にして)しまっても、走行に問題はありません。また、サブバッテリーのおかげで、エンジンを止めたままでも暖房や照明が使えます。

断熱性能

使っている人の目に触れることはまったくありませんが、最も重要ともいえるのが断熱です。乗用車は、「エンジンが作動している状態=エアコンが使える」という前提で考えられていますので、ほぼ断熱はされていません。真夏や真冬にエンジンを止めると、あっという間に車内の気温は急上昇(急降下)することは、経験のある方はおわかりでしょう。今年のような猛暑では、わずかな時間でもエンジンを止めてしまうと車内の温度は危険なレベルにまで上昇してしまいます。夜も安心できません。眠っている間の熱中症は、対応が遅れがちで非常に危険です。

一方、キャンピングカーは壁面や天井に断熱処理が施されています。もちろん、どこに・どの程度の断熱処理がされているかはビルダーによって異なりますが、エアコンが止まっても車内の温度変化は緩やかです。

スズキ・ジムニーの車中泊オプション装備イメージ。さすがに1人しか寝られないが、ウィンドーシェードなどもきちんとそろって、プライベート空間が確立できる

室内装備

キャンピングカーは快適に寝泊まりするための車。なので、ぱっと見、バンそのものに思えるバンコンであっても、リアシートを展開すればベッドになったり食卓になったりします。

当然、自動車メーカーから出荷された段階でついているシートではそうはいきませんから、各ビルダーで純正シートを取り外し、ベッドに展開できるオリジナルシートを装着します。一方、自動車メーカーはシートを丸ごと交換するなどの大幅な内装変更はできません。

車中泊はあくまでオプションの考え方であって、主たる目的は「走行」ですので、居住装備は最低限。真冬のスキー旅に使う……、などは明らかに想定外ですので、例えばFFヒーターなどはオプションリストに載っていません。

「車中泊オプション」をどう考えるか

「快適な車中泊」という視点で考えれば、専門に考えられたキャンピングカーに軍配が上がるのは当たり前です。また、私がキャンピングカージャーナリストだからといって、こうした「メーカーオプション」が劣っている、というつもりもありません。

端的にいえば、

キャンピングカー=寝泊まりできる設備を持ち運ぶ車

車中泊オプション=走るための車で少しでも快適に眠れる追加装備

ということでしょう。

泊まることが主体なのか、走ることが主体なのか、という話だと思います。

もちろん、「乗用車+オプションで十分だ」という方もいらっしゃるでしょう。どちらを選択すべきは、

1年の間に車中泊する機会が何回あるか(たまのことなら、キャンピングカーを買うほどではない)

泊まる時期はいつごろか(真夏・真冬に泊まるならキャンピングカーのほうが快適で安心)

など、頻度や条件をよく考えて判断すればよいことです。

製造中のキャンピングカー(バンコン)。キャンピングカーで大切な“断熱”は、1台1台丁寧に手作業で断熱材が仕込まれていく

私自身は、メーカー純正の車中泊用オプションが増えるのは良いことだと思います。メーカーが専用に設計したものですから完成度は高く、量産できるので価格も魅力です。ものによっては同ベース車両のキャンピングカーで使えるものもありますので、“良いとこ取り”ができるのもメリットです。

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さらにキャンピングカー市場が拡大していけば、ベース車両に与える影響も大きくなっていくでしょう。キャンピングカーにしやすいベース車両や、車中泊を重視した乗用車が、今後も増えていく可能性に期待したいですね。

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PROFILE

渡部竜生(わたなべ・たつお)キャンピングカージャーナリスト

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サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)がある。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫7匹とヨメさんひとり。

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