変化の時代の生存戦略論

「熱狂を作らない」がコミュニティー持続の秘訣! @cosme吉松徹郎が説く「人間関係」と「モテ」

  • 尾原和啓×@cosme吉松徹郎
  • 2018年7月27日

  

会社、友人、SNS……etc. 多層的な人間関係に生きる現代人。いたるところで「共感」をベースにしたつながりが広がり、「縦」を軸にした旧来型のそれは減退傾向にあります。

この時代、恋愛に限らず、仕事であろうと、趣味の集まりであろうと、人にモテないとその人間関係の維持がままなりません。「モテ」という領域にパラダイムシフトが起きつつある今、そこにきちんと向き合うことが、人生を豊かなものへと導く重要なポイントになりつつあります。

そこで、IT評論家の尾原和啓さんが、各分野から独自の「モテ」を体現している人を招き、これからの時代に必要とされる「モテ」のあり方について語り合います。

今回のゲスト

吉松徹郎(よしまつ てつろう)

東京理科大学基礎工学部卒業。アンダーセンコンサルティング (現:アクセンチュア)を経て、1999年7月にアイスタイルを設立。代表取締役社長就任。同12月、コスメ・美容の総合サイト「@cosme」オープン。2012年、東証一部上場。現在は「Beauty×ITで世界ナンバーワン」をミッションとして事業を拡大し、アジアを中心にグローバルにビジネスを展開している。また、アイスタイル芸術スポーツ振興財団を通じ、芸術・スポーツ分野への助成支援なども行い、活動の幅を広げている。

熱は冷めるから持続しない

尾原和啓(以下、尾原) 今の時代、いたるところで様々なコミュニティーが生まれていますが、持続的なつながりを生み出すためには「モテ」が不可欠ではないかと思います。吉松さんは、コミュニティー要素の強い自社サービス「@cosme」を、スマホやSNSの台頭など時代の変化にも揺らぐことなく、会社組織とともに持続的に維持してこられました。吉松さんが、当サービスを長年持続させる秘訣(ひけつ)にこそ、次なるモテのヒントが隠されているのではないかと思います。ちなみに@cosmeはどれくらい続いているんでしたっけ?

吉松徹郎(以下、吉松) 20年です。@cosmeを作った時からずっと言っているのは、持続的なコミュニティーを作ることが大事だと。そのために重要なのは、「熱狂しない」ことなんです。

@cosmeのサイトイメージ(画像提供:株式会社アイスタイル)

尾原 昨今のビジネス書だと、コミュニティーを活性化していくにはむしろ「(参加者を)熱狂させよう」という風潮ですよね。

吉松 それは間違っていると思いますね。熱したら冷めるし、人の気持ちは続かない。これはリアルでもネットでも同じです。特にネットは自分がしゃべっていることが残るので、かえってリアルなコミュニティーで会話しているときのような熱を再現できない。また、リーダー的存在に依存したコミュニティーは、一度熱を作るとそれを持続させることがすごく難しくなる。だから、いかに熱を使わないかが重要です。

じゃあ熱を使わないけど人が集うコミュニティーって何か。重要なことは2つあって、1つはテーマ設定。自分が好きなものや、見ているだけで幸せなもの。もう1つは距離感。だから@cosmeを作った時は、適度な距離感を保つ関係性を重視したコミュニティー設計を徹底しました。

尾原 でも、「熱狂を作らない」のも「適度な距離を保つ」のも、それはそれで大変では? コツはなんですか。

吉松 長続きする夫婦の秘訣と一緒です。“好き”だけで結婚しちゃうと、好きじゃなくなった時に「アンタ何でいるの」ってなるんだけど、嫌いなところがない人と結婚すると、「別に嫌いな理由がないから長くいられる」となるかもしれない。それに近いのかな。

尾原 お見合いってそういう仕組みですよね。嫌いなところを検出して、特にNG要素が見当たらないなら会ってみよう、という。

吉松 それは大事なキーワードだと思っていて。例えば前に献本してもらった『モチベーション革命』(幻冬舎)の時も、「好きなことをやりましょう」って書いていたでしょう。

でも僕としては、「好きなことが見つからない人の方が圧倒的に多いよね」というのが実感としてあって、「好きなことのない自分を好きになれない」「何のために生きているんだっけ」「それ以前に生活していくことの方が大事でしょ?」という気持ちがベースにある。

尾原 それなら「日常の中でちょっと好きになれるものをうまく見つけて、増幅すればいい」と思うんだけど、それじゃダメだと?

吉松 うーん、それはいつかたどり着けたら幸せという理想みたいなものであって、別にみんなはじめから、「おみそ汁を飲むときのような、小さな幸せ」が好きで、「これを紡いでいけば幸せになれる」って思ってるわけじゃない。どちらかというと、幸せになりたいんだけど、どうしたらいいかのリアリティーを持てない人が多いわけで。

尾原 特に模範になる人もいないですしね。

吉松 それくらい、自分の好きなものがわからなくて、不安な人が多いのが現実だと思うんです。そうなると結局、彼らに対して、安心を感じさせてくれるのが新しい「モテ」につながるんじゃないか。必要とされている感とか、愛されている感とか。それを与えられることが、これからの「モテ」につながるのでは、と思うんです。

尾原 それも、より具体的に、組織の中で「社員が大事です」じゃなくて、「Aさんが必要です」って言うことが重要ですよね。

吉松 そう。で、愛を感じるのは何か。それは僕からすると、自分の“資産”を相手に投資しているかどうかしかなくて。要は、時間やお金、労力をちゃんと使ってくれるかどうか。例えば自分が電話したら絶対出てくれるとか、家に帰ったらいてくれるとか、またはプレゼントをしてくれるとか。

尾原 それも、無条件に。

吉松 そう。例えば地元に帰れば、都会にいたときに比べてコミュニケーションの量が減る分、1人当たりに分けられる資産が増える。だから「都会であくせく働くより、地元で仲間と魚釣りしている方が幸せです」っていう若者がいたとして、それは資産を振り分ける先が100人じゃなくて10人になるから濃くなるから幸せを感じられるんじゃないか、と思うわけです。

尾原 よくわかります。女性の友達で、ある日「私もう友達増やすのやめようと思うの」と言う人がいて、「えー何で」って聞いたら、「これ以上増やしたら1人あたりへの愛が減るから」って。そういう感覚ですね。

吉松 そうそう、だからいわゆる地方の“マイルドヤンキー”じゃないけど、小さなコミュニティーが幸せ、という結論しかないなって。

Photo: tsuyoshi_kinjyo / Getty Images

モノからコトではなく「モノから愛」消費へ

吉松 最近、出会い系アプリを見ていて面白いなと思うのが、みんな、愛する相手を見つけたいんじゃなくて、愛を感じさせてくれる人にどう見つけてもらうかを考えている。自分から見つけにいくのではなく、誰かに見つけてもらうためにはどうするか。つまり受け身なんです。そのためには自分を表現してくれるワードで検索されなきゃいけないから、アイデンティティーにタグを張っていると思う。

尾原 わかります。みんな”タグ迷子”になってる。

吉松 ここでいうタグは、昔ならモノでしたよね。「ポルシェ乗ってまーす」とか「港区住んでまーす」とか。そんな風に、モノを持っていれば見つけられやすかった。ところが今はモノじゃなくなって、「フォロワー数が多い」みたいに、みんなネットの中で自分を見つけてもらうためのタグを増やしていく。で、やればやるほど見つけてもらえるかと思ったら、逆にコミュニケーション量ばかりが膨れ上がって、結果的には疲れる、みたいな話になってしまう。

尾原 そうなると逆に、「タグとか関係なくお前自身が好きなんだよ」と言ってくれること自体が、一番の安心、愛につながるのかもしれない。

吉松 だからもういっそ地元に戻るとか、ネットを卒業する方が、幸せになれるかもしれない。見つけてもらうためのタグづくりのために生きても、結局また「見つけてもらうためのルール」すら変わってしまうわけだから。

あと、ここ数年よく「これからはモノ消費じゃなくてコト消費だ」って聞くけど、今はもう「モノからコトへ」じゃなく、みんな、「モノから愛」だと思いますね。

尾原 「コト」をすっ飛ばして、モノから愛だと。

吉松 なんか「モノからコト消費」って言っている時点で、上から目線だなって思います。消費をさせている時点で。モノもコトも消費じゃない、今はみんな、タグが欲しいのだから。

だからこそ新しい愛、新しいモテって、「安心」なんだと思う。例えば上京している人たちだって、「県人会」みたいな小さなコミュニティーを求めるわけです。好きなものを仕事にしていくということが安心感を与えてくれるんだったら、それはその人の幸せだけど、そうじゃないなら小さいコミュニティーの中で安心感を得ていく。

尾原 今は変化と不安の時代だから、持続的で絶対的な安心感をどこに持つかを、みんな考えてる。逆にいえば、その安心感を与えられることがこれからの「モテ」につながる、ということですね。吉松さん、ありがとうございました。

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PROFILE

尾原和啓(おばら・かずひろ)

IT評論家/Catalyst(紡ぎ屋) シンクル事業長、執筆・IT批評家、Professional Connector、経産省 対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー。 京都大大学院で人工知能論を研究。マッキンゼー、Google、iモード、楽天執行役員、2回のリクルートなどで事業立ち上げ・投資を歴任。13職目を経て、バリ島をベースに人・事業を紡いでいる。ボランティアでTED日本オーディション、Burning Man Japanに従事するなど、西海岸文化事情にも詳しい。著書に「ザ・プラットフォーム」(NHK出版新書)「ITビジネスの原理」(NHK出版)。近著に「モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書」(幻冬舎)。Twitter:@kazobara

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