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ツイッターが偽フォロワーを大量に消した理由

  • 文・ライター 堀 E. 正岳
  • 2018年7月26日

ツイッターのフォロワー数に大きな変化があったことが話題になっています。
ツイッター社は7月の上旬に、全世界的に偽アカウント(他人になりすまして作成したアカウント)の削除を大規模に行うと発表し、その後、実際に数千万のアカウントが消えました。
消えたのは全フォロー関係の実に6%にあたり、たとえばバラク・オバマ元大統領のアカウントからは240万人が、ドナルド・トランプ大統領のアカウントからは34万人のフォロワーが消えたことなどが話題になっています。
ツイッター社はなぜこのタイミングで、このような偽アカウントの削除に乗り出したのでしょうか? そしてフォロワーが減ってしまって驚いている人には、どんな対策があるのでしょうか?

ツイッターから数千万のアカウントが削除された [gettyimages]

アメリカ中間選挙を見越したフェイクニュース対策

今回の施策は、ツイッター社が力を入れている偽アカウント対策の一つでした。
今年2月にはフェイクニュースを拡散していた「bot」と呼ばれる自動で投稿するアカウントを大量に削除。5月から6月にかけては実に7000万アカウントが停止の処置を受けたと報告されています。
停止されているアカウントの多くは、不要な広告やプロパガンダを広めるスパムアカウント、そしてフォロワーの数を水増しするために開設された偽アカウントです。
特に偽アカウントについては、今年1月、米フロリダ州にある企業が、実際に存在する人の画像や名前を大量に盗用して「偽アカウント」を作成し、フォロワーが欲しい企業や個人に販売するサービスを行っていることが、ニューヨーク・タイムズによってスクープされ、大きな問題となっていました。
こうしたサービスを提供する偽に作られたアカウントは多くがフォローした後は休眠状態ですが、中にはクライアントのつぶやきを機械的にリツイートするbotも存在しています。こうしたサービスを政治家、ミュージシャン、作家などが利用して、自らの影響力を誇大に見せていたわけです。

さらに、今回のツイッター社がアカウント削除を実施した大きな背景として、イギリスの選挙コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカが、アメリカ大統領選挙やEU離脱国民投票においてSNSを利用した心理戦を行ったという疑惑があります。フェイスブック社もツイッター社も、こうした選挙利用への対策を求められている事情もあります。
次にこうしたSNSを利用した選挙での誘導(妨害)工作が行われるタイミングとして、今年11月に予定されているアメリカの中間選挙が考えられます。
現在は休眠している大量の偽アカウントが、選挙期間中に急にプロパガンダを大量に投稿し始めてから対策を講じても遅すぎます。そこで、あらかじめこのタイミングでの偽アカウント対策に踏み込んだのです。
SNSの信頼性を揺るがしているスパムやフェイクニュースに対して、ついにツイッターが本気で反撃を開始したと言ってもいいでしょう。

ツイッター社は、アメリカ中間選挙を見越してフェイクニュース対策に乗り出した [gettyimages]

どんなアカウントが最もフォロワーを減らした?

今回の偽アカウント削除は、日本国内ではどのような影響があったのでしょうか?
ツイッター社は、今回の偽アカウント削除で「一般のユーザーは平均で4アカウントほどのフォロワーの減少にとどまるだろう」と説明していました。もちろんその数値は元のフォロワー数にも、ツイッターを続けていた期間にもよります。
フォロワーの多くが偽アカウントで、なんらかのサービスを使ってその数を水増していた場合は、一気に全体の数十%が消えるという例もありました。しかし多くの場合、減少幅は1~2%程度にとどまっているようです。

例えば日々新しい話題を提供しているシャープ株式会社のような人気アカウントは、いまツイッターをアクティブに利用しているユーザーが多数フォローしている傾向がありますので、1800人ほどフォロワーが減りましたが、全体の0.5%にとどまります。
今回、最もフォロワーを減らす傾向にあったのは昔からツイッターを利用していた古参の人気アカウントでした。こうしたアカウントは、ツイッターの初期にあった「おすすめユーザー」欄に表示されるケースが多く、フォローされやすかったためです。活動期間が長くなれば、フォロワーが休眠状態になったり、botにフォローされている可能性も高くなります。結果としてこうしたユーザーは元フォロワー数に対して4~5%が減少する傾向がありました。

それではこうした偽アカウント対策によって影響を受けにくいツイッターの運営方法とはどのようなものでしょうか?
そのヒントは、今回の大量偽アカウント削除後のフォロワーの推移にあります。
上で例に挙げたシャープ株式会社のアカウントの場合、一時的にフォロワーが減ったとしても毎日のつぶやきのクオリティーが高く、それにともなう日々の流入数が高いために、一週間でほぼ以前の数値に戻っています。
逆に、長期的にフォロワーが減少傾向にあったアカウントは、減り幅が大きかっただけでなく、その後も減少傾向が続いているケースが多く見られます。
つまり偽アカウント対策にどれだけ影響を受けやすいかは、そのアカウントが、アクティブなユーザーをどれだけつかんでいるか次第といえるのです。
言い方はよくありませんが、いかに有名なブランドや企業、著名人のアカウントであっても、最近botにしかフォローされていなかったならば、投稿がだれにも届いていない可能性もあるのです。

フォロワーとの本物のつながりがさらに重要に

実はこうしたスパムアカウントや偽アカウントの影響は最近日本でも問題になっていました。
機械的にフォローしてきてあやしい投資話で注意をひこうとするアカウントや、偏った政治観や陰謀論を広めるために有名アカウントのリプライ欄に粘着する大量のアカウントも見かけます。日本でも、ツイッターを安全に利用するにはそれなりのリテラシーと「ウソをウソと見抜く」能力が要求されるようになったのです。
ツイッターの今回の対策は、一般ユーザーが、無意識のうちに問題のあるアカウントをフォローしたり、その投稿の影響を受けたりすることを防ぎ、SNSの言論空間を健全化することが目的です。
どちらにしても休眠しているか、害のあるアカウントなのですから、これらが減ること自体は全体にとって良いことだと言っていいでしょう。現在のアクティブユーザーに届くつぶやきを心がけている限り、一時的な減少はすぐに取り戻せるのです。

しかし、さらに長い目で見ると、CEOのジャック・ドーシー自身が明言しているとおり、ツイッター社は今後、SNS利用の健全性をより高めるために、重要性の高い会話を優先して表示するといった対策を進めることが予告されています。
つまり、偽アカウントではない普通のアカウント同士であっても、投稿やリツイート内容の重要性と信頼性によって、それがフォロワーの画面に表示される確率は変化してくるのです。

ただ一方的に投稿するのではなく、フォロワーと深く結びついた双方向のやり取りが維持できるかどうかが、今後ツイッターを利用する上での重要なポイントになるのです。

(文・ライター 堀 E. 正岳)

ツイッターを安全に利用するためには、「ウソをウソと見抜く」能力が必要になった [gettyimages]

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