マッキー牧元 うまいはエロい

<58>クーラーのない部屋で熱々のたい焼きと交互に味わう 食通の「かき氷をおいしく食べるコツ」(麻布十番「浪花家総本店」)

  • 文・写真 マッキー牧元
  • 2018年7月31日

爽やかな味わいの氷宇治

猛暑に欲しくなるのは、かき氷である。しかし最近のかき氷は手軽ではない。果物をふんだんに飾り、自家製果物シロップや天然氷などを使っておいしくなっているのはいいが、少々高い。店によっては、すべて二千円という設定もある。しかも人気の店は、長蛇の列である。

手っ取り早く、安く、おいしいかき氷を食べたい。そう思い立ち、麻布十番にあるたい焼きで有名な「浪花家」に向かう。

かき氷をおいしく食べるための、第一の課題は、席選びである。たい焼きを何十匹も焼いている姿を、横目に捉えながら店に入ろうとすると、「二階が喫茶室になってます」と、店員に案内される。だがここでひるんではいけない。「一階でもいいですか?」と、奥へ向かうのである。

店員は気を使い、「一階は、暑いですよ」というが、構わず一階のテーブルに座る。当然ながら、一階に客はいない。クーラーもない。ウチワの用意はある。この状況が良いのである。

「氷宇治ください」と、注文する(宇治金時や白玉あずき、イチゴやミルクでない理由は後で述べる)。シャリシャリ。氷を削る音が聞こえてくる。カタンカタン。たい焼きを作る音と混じり合う。

シャリシャリ。カタンカタン。シャリシャリ。カタンカタン。ふたつのリズムが、暑い空気の中で響きあう。そこで「たい焼きください」と、注文する。たい焼きがくる。氷宇治もくる。氷宇治を食べれば、ひんやりと冷たく甘い。そう、かき氷をおいしく食べるコツは、クーラーのない部屋で食べることにある。

明治42年創業、元祖たいやき専門店の逸品

体の表面と内側の温度差が、かき氷のおいしさを後押しする。昔ながらの手動式かき氷機で削る氷は、粒子が粗く、かむとカリッと音を立て、三口も食べると頭が痛くなってくる。それが収まるのを待って再び一口。再びキーンとなってくる。この繰り返しこそがかき氷のだいご味である。

そしていよいよ次に、たい焼きの出番である。口腔(こうくう)内や食道が冷え切ってきたところで、たい焼きをかじる。パリッと皮が弾けると、熱々のあんこが口の中へと押し出される。

熱い。熱いあんこが舌を過ぎ、のどに落ちていく。今度はかき氷を食べる、冷たい。この冷たい、熱い、冷たい、熱い、の同時進行が、何よりいい。

氷宇治はたい焼きとの相性も抜群

クーラーのない部屋で、焼きたてのたい焼きとかき氷を食べる。この楽しさはここでしか味わえない。たい焼きの相手としてはミルクやイチゴは合わないし、小豆物を頼むと味が重なってしまう。それゆえに氷宇治がベストである。ぜひお試しください。

浪花家総本店

浪花家総本店

創業は明治42年。たい焼きの名店。一日一釜、8時間かけて炊き上げた小豆を香ばしくこげた薄い皮で包む。甘さもほどよく、するりと食べ終えてしまう。天かすとキャベツだけのシンプルなソース焼きそばもおいしいので、かき氷の前に食べるのも良いだろう。

【店舗情報】
東京都港区麻布十番1-8-14
03-3583-4975
南北線「麻布十番」駅から徒歩2分
営業時間:11:00~19:00
定休日:火曜日、第3火・水は連休

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PROFILE

マッキー牧元(まっきー・まきもと)タベアルキスト&味の手帖編集顧問

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1955年東京生まれ。立教大学卒。年間幅広く、全国および世界中で600食近くを食べ歩き、数多くの雑誌、ウェブに連載、テレビ、ラジオに出演。日々食の向こう側にいる職人と生産者を見据える。著書に『東京・食のお作法』(文藝春秋)『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)。市民講座も多数。鍋奉行協会顧問でもある。

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