インタビュー

「どこまで演じなくてはいけないの?」若者のカルチャーアイコン・BIMの揺れる思い

  • 文/ライター 宮崎敬太、写真/江森康之
  • 2018年8月1日

  

新しい時代を作る20代ミュージシャンは何を考え、どんなことを伝えたいのか? この特集では彼らのリアルな言葉から「譲れない価値観」をひもといていく。

4回目はヒップホップグループ「THE OTOGIBANASHI’S」(OTGS)に所属するBIMだ。

OTGSは2012年、デビュー作『Pool』をYouTubeで発表。ハイクオリティなサウンドと徹底的に作り込まれた世界観が話題を呼び、すぐにファン層を拡大する。PUNPEE、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)らも早くから彼らに注目し、SNSで紹介していた。

【動画】YouTube「THE OTOGIBANASHI'S "Pool"」

そのOTGSのメンバーが、さらに注目を集めた出来事がある。それは、彼らの制作スタッフを中心にクリエーティブチーム「Creative Drug Store」(CDS)を結成したこと。彼らは音楽、映像、アート、ファッションなどジャンルを超えて創作活動を展開し、イベントを定期開催する。さらにハイセンスなオリジナルグッズも話題になり、ファンがイベント開演前から行列を作るようになった。

この両チームの中心人物であり、現在カルチャーアイコンとして若者に支持されるBIMに迫った。

どこまで「BIM」を演じなくてはいけないの?

  

BIM(ビム)/1993年生まれ、神奈川県出身。THE OTOGIBANASHI'S、CreativeDrugStoreの中心人物として活動するラッパー、ビートメイカー。17年より本格的にソロ活動を開始し、18年7月、初のソロアルバム『The Beam』を発表。

――BIMさんはOTGSとしての活動を中心に、他の創作分野でも自分の世界をどんどん拡大していますね。特にさまざまなクリエーターが所属するCDSは音楽業界以外の世界でも注目されています。そもそもCDSはどんな経緯で結成されたんですか?

BIM CDSの初期メンバーはOTGSにさまざまな形で関わってくれた人たちで、メンバーと同じくらい大事な存在でした。なのに「OTGSのメンバーではない」という理由でクラブに入れてもらえないことがあったんですよ。だったら、彼らも一緒になれる集団を作ろうと結成したのがCDSの始まりです。

最初はみんなでただ集まって、音楽や映像を作ってるだけで楽しかった。ずっと文化祭の準備をしてる感覚というか。当然、好きなことを突き詰めたい気持ちもあって、みんなで一緒に暮らして、作品づくりに集中した時期もありました。

【動画】YouTube「BIM - Bonita」

――自分たちがさまざまなメディアに取り上げられることについてはどう思いますか?

BIM 雑誌や広告に出ると、いろんな人からあれこれ言われるようになって。もちろん自分が楽しいと思うこと、カッコいいと思うことをやっているんだけど、あっちの人が「カッコいい」と言えば、こっちの人は「そんなのダサいよ」と言ってくる。そういうことが何度かあって、何が正しいかわからなくなったし、周囲が求める「BIM」をどこまで演じなくてはいけないのかな、という思いもあった。

でもメディアに出ることで感じる違和感を、あまり他人に、特に同世代には相談できませんでした。聞きようによっては嫌みというか、自慢っぽかったり、調子に乗っていたりするようにも思われてしまうから。

そんな時にkZm(ヒップホップ・クルー「YENTOWN」のラッパー)と出会いました。kZmはCDSのメンバー以外では初めての同い年でした。しかも立場が似ていた。彼は当時YENTOWNやKillaで、俺はOTGSやCDSで。だからkZmにいろんなことを相談したことでだいぶ楽になりましたね。kZmのアルバム「DIMENSION」に入っている「DREAM CHASER feat. BIM」ではその相談しているときの後日談を歌っているんですよ。

【動画】YouTube「kZm - Dream Chaser feat. BIM (Prod. Chaki Zulu)」

――BIMさんは交友関係が広く、人当たりの良いキャラクターという印象がありますが、今のお話はそうしたパブリックイメージとは異なる気がします。

BIM 俺、特に交友関係は広くないですよ。ちょっと前もkZmに「思ったより(心の)壁が厚いね」って言われたし(笑)。

――CDSをまとめるなどリーダーシップは強いイメージがあります。

BIM それも全然ないです。CDSを作った時、Heiyuu(CDS所属のフィルムメーカー)に映像制作を勧めたりはしたけど、リーダー的な動きは本当にそれだけ。Heiyuuは高校時代に所属していたアメフト部で仲良くなった友達で、当時は本当に無口で筋トレだけが趣味の超内気なナヨナヨ人間でした(笑)。でもすごくウマが合った。

CDSを始めた当時、「自分は何もできない」と悩んでいた彼に、「じゃあカメラでもやってみたら?」と軽く勧めてみたんです。俺はHeiyuuの感性をものすごく信用しています。今はお互いに影響を与え合う関係ですね。映像は基本的にHeiyuuがやってるし。俺が言うのもなんだけど、人間的にもすごく成長したと思う。

俺は普通がいいと思う

  

――BIMさん自身はいま現在どんなことを目指しているんですか?

BIM ずっと目標にしてきたソロアルバム「Beam」を完成させたばかりなので、先のイメージはまだないですね。ソロを作ったことは本当に大きかった。俺、今まで自分をさらけ出すことができなかったんですよ。さらけ出すことで生まれるヘイトを無視できなかった。やっぱり嫌われたくないし、文句言われるのはいまだに怖い。でも今回のアルバムは、誰からも嫌われたくない俺という人間を、客観的に表現しました。自分と向き合ってみたら、改善すべき部分とこのままでいい部分の両方が見えてきた。明確な答えが出たわけじゃないけど、その両面がちょっとクリアになったというか。でも正直なところ、自分がどんなことを目指しているのか、まだ見つかってないかもしれない。

――迷いながら目指すべき方向性を探している。

こんなことを言うのはナンセンスかもしれないけど、いまのヒップホップでは、ぶっといゴールドのチェーンを首から下げることだけが成功じゃないのかもって思ったりします。戦隊モノでいえば自分をアカレンジャーだと思ったことはないし、そもそもアカレンジャーになりたいとも思ってなくて。むしろショッカーみたいなやつ、世の中にはそういうポジションの人もたくさんいると思う。脇役が気になるタイプが気になる人たちにとってカッコいいと思えるような存在でいたいと今は思っています。

  

――ご自身もそういうポジションの人だと?

BIM 俺の実家に「出番のないベンチ」という絵が飾ってあります。背の小ちゃい男の子たちが何人か野球場の補欠ベンチに座ってる絵。どっちかと言えば俺はそっち側の人間だと思っています。

――BIMさんはあまり自己評価が高くない?

BIM もちろん自分のやってることにある程度自信はあります。でも常に完璧という状態はあり得ないと思ってて。何かを作っても、ちょっとするとすぐに改善点が見えてくる。でも、別にそれでいいと思う。

以前TENGAの社長がテレビのインタビューで「自分の男性器が平均的な日本人のサイズだったからTENGAは売れたんだ」と話していたんです。その話がすごく好きで。普通の感覚のままいろんなことに挑戦する人がいたっていい。もちろん常に成長していきたい。だけど普通のままがいいと思っています。

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#01 オカモトレイジ

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